日本酒ってどんな酒? Vol.01 「日本酒の原料 ~米と水に、麹&酵母を加えて糖化・発酵!~」
日本酒の知識
日本でよく目にする酒について、お酒をこれから飲もうと思っている初心者にもわかりやすいよう解説していく本連載。今回からは、いよいよ「日本酒編」がスタートです!
これぞ世界に誇るメイド・イン・ジャパンの酒ですが、とりあえず米からできていることはわかっていても、それ以外の原料についてはあまり知らないまま飲んでいる、という方も多いのではないでしょうか?
そんなわけでまずは、この連載の定番になりつつありますが、「日本酒って何からできてるの?」という疑問に答えていこうと思います。
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日本酒=米をアルコール発酵させた醸造酒
日本酒をひと言で定義するなら、上記のようになります。
発酵とは微生物の生命活動。つまり動物の呼吸や、植物の光合成と置き換えるのが最もわかりやすいでしょう。その際に、糖を取り込んでアルコールを発生させるものを“アルコール発酵”と呼んでいます。呼吸をするとき、酸素を取り込んで二酸化炭素を吐き出すのと、同じようなイメージ。
ちなみにこの微生物の生命活動が、人間にとって有益なら発酵、害をなすものなら「腐敗」。要は、人が勝手に決めているだけなんですね。
そして、同じく醸造酒として代表的なものが、“ビール”と“ワイン”です。
1. 米(酒造好適米)
さあ、ここからは早速、日本酒の原料を一つ一つ確認していきましょう。
一つ目はなんと言っても米! とはいえ、いつも炊いて食べている食用米を、品種改良しているんです。
日本酒に用いられる米は、「酒造好適米」として栽培されています。そのうち、一番有名なのは“酒米の王様”とも賞される“山田錦”。酒米の全生産量の約4割を占め、長い間ダントツでトップを走り続けています。そのほかは、五百万石、美山錦〔みやまにしき〕、雄町〔おまち〕などが代表格とされています。
九州から北海道まで、酒造好適米は全国で生産されていて、その種類は100種以上にものぼるんですよ。
食用米と何が違うの?
では、その違いはどういったところなのか。違いはおもに5つ、簡単な補足とともに見てみましょう。日本酒造りがスムーズになり、味を良くするためには、米だけでもこれだけの要素があるんですね。
- ① 米粒が大きい
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「日本酒は米を磨く(削る)」というのは聞いたことがあるかもしれません。多い場合には表面を7割も削り取ってしまうので、単純に、粒が大きいほうが米が割れにくいんです。食用米と比べると、ひと回りほども大きいんですよ。
- ② タンパク質、脂質が少ない
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食用米においてはこの、タンパク質と脂質が、旨みに結びついています。でも日本酒造りにおいては、これらが多すぎるとむしろ雑味になってしまうんですね。
- ③ 吸水率が高い
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つまり、水に溶けやすいということ。「日本酒は米が水に溶けたもの」とイメージするとわかりやすいと思います。
- ④ 心白が大きい
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米の中心部のこと。デンプン質が集中していて、大きいほうが後述する「糖化」がよりスムーズに進みます。
- ⑤ 外側が硬く、内側が柔らかい
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外硬内軟〔がいこうないなん〕と言われる性質。酒造りにおいて、さまざまな利点になります。
2. 水 ~ミネラルの量が仕上がりに影響~
そして忘れてはならないのが、水。日本は海外に比べ水がきれいとよく言われますが、そのなかでもさらに厳しい基準をクリアした、有害物質が含まれていない美しい水だけが原料となります。自家の井戸から汲み上げた水など、蔵ごとにこだわりの水があるんです。
リン酸、カリウム、マグネシウムといったミネラルの含有量が、味わいの骨格を左右します。ミネラルが多い硬水なら、しっかりとした辛口に。逆にミネラルが少ない軟水の場合は、甘みを感じる柔らかい味になる傾向があるんですよ。ミネラル豊富なほど良い、というわけではないんですね。
3.麹菌&酵母 ~糖化と発酵の立役者~
米と水、ここまでは理解しやすいと思います。お酒のことを知るにあたって、身近に感じにくく、実際にその様子を見る機会も少ない「発酵」は、ひとつの壁になりうる要素です。できる限り簡潔にまとめましたので、あともう少し、お付き合いくださいね。
「糖化」に不可欠な「麹菌〔こうじきん〕」
はい、出ました「麹菌」。味噌や醤油、納豆など、本邦でマルチな活躍を見せているので、その存在を知らない人はほぼいないでしょう。
そもそも麹菌とはカビの一種で、学名は「コウジカビ」。とはいえ何かを腐らせるわけではなく、さまざまな食品には、この麹菌が分泌する「酵素」を利用しているんですね。
酵素はすべての動植物のなかに存在するタンパク質の一種。いろんな働きがありますが、ここでは「物質の分解を仲立ちする」という役割だけおさえておけばOKです。
で、この麹菌を蒸し米に振りかけたものが、日本酒造りにおける「麹」なんです。そして、この麹をさらに蒸し米に加えることで、麹菌が出す酵素が働いて、米のデンプン質を糖に分解する「糖化」が起こるんです。
デンプン質のままでは酵母が食べてくれないので、糖に変える必要があるというわけ。
発酵は、酵母が糖を食べることで起こる
糖化によって生まれた米由来の糖を、酵母が“食べる”ことで、アルコールを排出する。簡単にまとめると、これが日本酒のアルコール発酵です。また、糖化・発酵のあいだにも、味わいを左右する香味成分が着々と生まれています。
製法はもちろんのこと、麹や酵母の種類によっても、仕上がりが全然変わってくるんですよ。
次回は「製造工程」!
原料についてはここまで。次回からは、これらをどのように用いて日本酒を造るのか、に迫っていきます。
日本酒にかんしては、原料と製造工程の基本をしっかりおさえておくと、よく見かける“吟醸”“山廃”などキーワードの意味や、酒種の分類が格段につかみやすくなります。そしてそれは、自分好みの味に出会うための一番の近道だと思います。
少々込み入った内容もあるかもしれませんが、日本酒への理解が着実に深まるよう努めます!
なおこの連載は、過去にビールとウイスキーも取り扱ってきました。こちらもご興味があれば、ぜひとも読んでみてくださいね。
日本酒ってどんな酒?
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