日本酒ってどんな酒? Vol.12 「日本酒銘柄・酒造ガイド入門編 その① ~東北地方の銘柄10選~」
日本酒の知識
日本酒の入門知識をお届けしている本連載。さあ、やってまいりました銘柄・酒造ガイド!
今回は入門ガイドということで、米作りに適した土地柄で酒造りが盛んな「東北地方」、「灘の男酒、伏見の女酒」と言われ、古くから日本酒文化をリードしてきた「近畿地方」、それ以外を「関東・東海・中国地方など」と、大きく3回に分けてご紹介します!
セレクトについては「有名どころ」に絞りつつ、できるだけ多様性を感じてもらえるよう選びました。
コンテンツ
日本酒に「地域性」はあるの?
銘柄カタログに入る前に、そもそもの話をひとつしておきましょう。
「地酒」という言葉が示す通り、かねてから日本酒には地域ごとの特色がある、とされてきました。先述の「灘の男酒~~」のように、硬水・軟水による違いや地場産の米を使うことによる地域性はもちろんあります。
ただ日本酒は、麹菌や酵母の影響もありますし、何より「並行複発酵」をはじめとした特殊な工程を多く踏むので、造り手の技術による面が比較的大きいんですね。その技術力は、近年ますます飛躍的に向上しています。
酒造同士の交流もさかんなので、昔よりは地域による差異は感じにくくなった、と言えるでしょう。むしろ、酒造ごとの違いに目を向けたほうがいいかもしれません。
とはいえ一点だけ。「寒い地域には辛口が、暖かい地域には甘口が多い」と、本当に大ざっぱな傾向として知っておいて損はないと思います。
例外は非常にたくさんあるので、あくまで知識として頭の端に置いておいて、これからはじまるガイドをご覧いただくのがよいでしょう。
東北地方の代表的な銘柄10選
前置きが少々長くなりました。ここからは東北地方を代表する10銘柄を、銘柄の五十音順で並べています。
酒造を代表する一本は、一部プレミアはさておき価格面も考慮して選定。特定名称と日本酒度(甘辛の指標)、アルコール度数を記載しています。
なお新潟県は中部地方ですが、地域分けの便宜上、今回のカテゴリーに割り振りました。
新政 No.6 X-type(新政酒造/山形)
【特定名称:純米大吟醸/日本酒度:非公開/度数:13%】
その名の通り、協会6号酵母のルーツ。発酵力豊かな酵母によって、発酵に適さないと言われてきた寒冷な東北や信越地方を、一気に酒処へと押し上げた立役者です。
なかでも最上級品の「X-type」は、清らかながら力強い、6号酵母の魅力が存分に味わえる一本です。プレミアが付いていることも少なくないので、ほかのタイプでもチャンスがあればぜひ!
久保田 千寿(朝日酒造/新潟)
【特定名称:吟醸/日本酒度:+5/度数:15%】
1830年創業。創業地の地下水脈から汲み上げる軟水を仕込み水に、派手さよりも、調和と品格を重視した酒造りが特徴です。「千寿」「萬寿」というめでたい名称とその格調高さから、祝い酒としても全国的に有名。
淡麗かつ、米のやわらかな甘みを感じる味わいが、さまざまな食事のシーンに華を添えてくれますよ。
越乃寒梅 吟醸 特撰(石本酒造/新潟)
【特定名称:吟醸/日本酒度:+8/度数:16%】
1970年代の“地酒ブーム”の際、当時甘口が流行するなか、「キレのある飲み口の良い」淡麗辛口でシーンを牽引。「吟醸 特撰」は品のある吟醸香と、旨みが広がる後口で、食前から食後まで飽きずに楽しめるでしょう。
ぬる燗からオンザロックまで、適した温度帯の幅も広いので、自宅に一本買っていろんな温度を試すのにもおすすめですよ。
十四代 特別本醸造 本丸(高木酒造/山形)
【特定名称:特別本醸造/日本酒度:+2/度数:15%】
プレミア日本酒の代表格として、名前を見聞きしたことのある方は多いのではないでしょうか?精米歩合55%まで磨いて造られる特別本醸造は、ライトな飲み口ながら、本醸造酒とは思えないふくよかな甘みと旨みが特徴です。
このほかのラインナップも豊富なので、少々値は張るかもしれませんが見かけたらトライしてみるのが吉。
楯野川 純米大吟醸 清流(楯の川酒造/山形)
【特定名称:純米大吟醸/日本酒度:-2/度数:14%】
生産する全てが純米大吟醸酒。日本初の精米歩合“1%”を実現した「光明〔こうみょう〕」を筆頭に、米を磨き抜いた酒に定評があります。最もベーシックな「清流」は、山形県産米の出羽燦々を50%まで精米。
ソフトな口当たりと華やかなフルーティーさという、純米大吟醸のお手本とも言える味わいです。アルコール度数も低めなのでビギナーにもおすすめ。
田酒 特別純米酒(西田酒造店/青森)
【特定名称:特別純米/日本酒度:±0/度数:15.5%】
そのほとんどが限定醸造。数少ない特約店のみ販売を許されているため、十四代と並び、プレミア日本酒と呼ばれています。銘柄名には「日本の“田んぼ”から採れるものだけを使う」というメッセージが込められており、醸造アルコールを入れない純米系のみのラインナップ。
特別純米酒は、香りは穏やかながら米の広がりが豊かなので、ぬる燗や熱燗にしても。
伯楽星 純米吟醸(新澤醸造店/宮城)
【特定名称:純米吟醸/日本酒度:+4/度数:15%】
糖度を低めに設定し、気がつくと杯を重ねている「究極の食中酒」がコンセプト。純米吟醸は、フレッシュな酸味とキレ、かすかな若渋感が料理を引き立てます。
また、当時入社三年目22歳の女性を杜氏に抜擢したり、1%未満の精米率を実現するダイヤモンドロール精米機を導入するなど、先進的な姿勢も印象的です。
八海山 特別本醸造(八海醸造/新潟)
【特定名称:特別本醸造/日本酒度:+4/度数:15.5%】
「雷電様の清水」と言祝がれる、霊峰・八海山の伏流水を仕込み水に使用。全ての酒が、米にしっかりと磨きをかけ長期低温発酵を行なう「吟醸造り」で醸されている点にも、手間ひまかけた酒造りがうかがえます。
特別本醸造ながら精米歩合55%と高精米で、淡麗辛口に仕上げられた一本は、幅広い温度帯で楽しめ、燗にすると麹が優しく匂いたちます。
飛露喜 特別純米 生詰(廣木酒造本店/福島)
【特定名称:特別純米/日本酒度:+2/度数:16.3%】
鮮烈さと透明感を併せ持つ、「無濾過生原酒」の先駆け的存在。「地酒ファンの登竜門」とも言われ、多くの支持を集めています。
無濾過生原酒もそうですが、蔵のフラッグシップである「特別純米」もまた、フルーティーでありながら甘み・酸味などのバランスが秀逸です。「喜びの露が飛ぶ」という酒銘にも納得できることでしょう。
雪の茅舎 秘伝山廃 山廃純米吟醸(齋彌酒造店/秋田)
【特定名称:純米吟醸/日本酒度:±0/度数:16%】
濾過、加水、櫂入れをしない「三無い造り」がモットー。「お酒は人ではなく、微生物が醸す」という考えのもと、薬剤を使った蔵内殺菌を行なわず、日本酒蔵初のオーガニック認定を受けました。そうした理念で醸される山廃酛の酒は、山廃特有の重さを感じさせない仕上がり。
旨みと酸味のバランスと広がりに、爽やかさすら漂います。
次回は「近畿地方」!
東北地方+新潟県は以上。お次は近畿エリアに進みましょう!
日本酒ってどんな酒?
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