日本酒ってどんな酒? Vol.02「日本酒造り 前編:精米~醪造り」

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日本酒ってどんな酒? Vol.02「日本酒造り 前編:精米~醪造り」

今回からは日本酒造りを、前後編に分けて解説します! 工程自体は実はさほど複雑ではありません。しかし、工程がひとつ違うだけで、同じ蔵の銘柄でも異なる商品として瓶詰めされることが多いんです。それを逐一補足しつつ、まずはひと通りご覧いただきます。

要は、製造の流れのなかで日本酒の種類が分岐していくさまを、なんとなくで良いのでつかんでいただきたいんですね。

 

「並行複発酵」について

「並行複発酵」について

 

製造工程に入る前に、まずはこれだけ説明させてください。

日本酒は米を発酵させた醸造酒ですが、発酵方法に大きな特徴があります。米のデンプン質を酵母のエサである糖に変える「糖化」と、そこで生み出される糖を酵母が食べて起こる「発酵」が、ひとつのタンクのなかで同時に行なわれるんですね。

イメージとしては、酵母が食べたいぶんだけの糖を、少しずつ供給していく、という感じ。これによって、糖分が少なく、アルコール度数は高く仕上がるんです。

これを「並行複発酵」と言います。この発酵方法を採る酒は、世界中でもとても珍しいんですよ。

 

酒蔵イメージ

 

それでは下記から、日本酒造りが始まります。前編では、搾って原酒にする前の、ベースを造る段階まで見ていきます。

玄米を削り、蒸し米にする(1~3)。「麹〔こうじ〕」と「酒母〔しゅぼ〕」を分けて造り、それらを蒸し米に合わせて「醪〔もろみ〕」を仕込む(4~6)。

ここまでの工程が、日本酒造りで最も重要だと言われることが多いんですよ。

1. 精米

精米

 

玄米を削り、白米にします。米の外側に多いタンパク質や脂質は、日本酒においては雑味の一種なんですね。あえて雑味を残して複雑な味わいにするのか、すっきりとクリアに仕上げるのかによって、外側からおおよそ3~7割ほどを削り取ります

ちなみにふだん食べているお米は、ほぼ玄米の茶色い殻を取る程度で、0.5割ほどしか削っていません。

2. 洗米・浸漬〔しんせき〕

洗米・浸漬〔しんせき〕

 

まず精米で表面に残った糠〔ぬか〕などのかすを洗い落とします。そのあとで、米に水を吸わせていきます

特に精米歩合が低い(=たくさん削った)米は水を吸うスピードも速いため、浸漬時間は秒単位で管理されているんですよ。

3. 蒸し

蒸し

 

白米から、蒸し米にします。水と混ぜて火入れする、いわゆる“炊く”のではなく「蒸す」ことで、麹作りや仕込みの工程などでさまざまな利点があるんです。蒸し米は、一回の酒造りのなかで8つもの別々の工程のなかで、分けて用いられます。

4. 製麹〔せいぎく〕

製麹〔せいぎく〕

 

蒸し米に麹菌の“菌糸”を繁殖させ、麹を作ります。菌が糸状に根を張っていく、とイメージするとよいでしょう。

この菌糸の繁殖具合を「破精〔はぜ〕」と呼んでいます。この破精には大きく2タイプあって、どんな酒を目指すかによって使い分けられているんですよ。

A. 総破精型

その名の通り、表面、内部ともにしっかりと繁殖させます。麹菌のパワーをいかんなく発揮させることができるので、力強く、濃密な酒に向いています。

B. 突き破精型

表面はまだらに見えるが、内部にはちゃんと根を張っている、という型。こちらはおもに淡麗タイプの、透明感のある吟醸酒に使用されます。

製麹は、単に蒸し米に麹菌を振りかけて完成、ではありません。35℃前後に保たれた専用の部屋で、蒸し米の温度や水分量が均一になるよう、もみほぐし、混ぜ合わせたりを繰り返しながら、48時間余りをかけて仕上げられます。

5. 酒母〔しゅぼ〕造り

酒母〔しゅぼ〕造り

 

麹、蒸し米、水をベースに、発酵を担当する酵母を培養します。ここで採用される酵母にもたくさんの種類があり、それぞれに適性が異なりますが、詳細はここでは割愛。

酒母は専用タンクに材料を投入し、酵母、乳酸菌を加え、混ぜ合わせて作られます。乳酸菌は、雑菌の繁殖を防ぐなど、酵母培養の環境を整える働きをします。

また、この酒母(酛〔もと〕と呼ばれることも)にも、大きく2タイプあるんですよ。

A. 生酛系〔きもとけい〕酒母

上記の三つのベースだけを使い、空気中に漂う天然の乳酸菌を取り込んで造られます。この際、麹・蒸し米・水を、櫂〔かい〕という船を漕ぐオールのような棒ですりつぶしながら混ぜる「山卸し」を行なうのが「生酛〔きもと〕」

この山卸しを廃止(=省略)するのが、「山廃酛〔やまはいもと〕」と、ここでも区分がなされているんですよ。いずれにせよ手間とコストがかかる作り方ですが、濃厚かつ芳醇な酒を生み出すのに活用されています。

B. 速醸系〔そくじょうけい

〕酒母

いっぽう、こちらは人工的に造られた乳酸菌を添加します。時間も価格コストも少なくて済み、品質を保ちやすいのが特長。乳酸菌による副産物が少ないため、淡麗な味わいになる傾向があります。

一般流通する日本酒の約90%に、速醸系酒母が採用されていると言われています。

6. 醪〔もろみ〕造り

醪〔もろみ〕造り

 

米の糖化と発酵を同時に行なう、「並行複発酵」の工程。「仕込み」とも呼ばれます。酒母を土台にし、麹、蒸し米、水の三つを投入して醪〔もろみ〕を完成させます。

ここで、上記の三つを酒母に一気に投入するのではなく、日を改めながら少しずつ加えていくことを「三段仕込み」と言います。江戸時代から続く、伝統的かつ一般的な手法なんですよ。

この方法を採ることで、醪のなかで菌が薄まることなく、まんべんなく糖化と発酵が進むんです。

麹、酒母、醪の違いが理解できれば

麹、酒母、醪の違いが理解できれば…

 

今回はここまで。上記の違いが、日本酒造りをややこしく見せている要因のひとつなので、まずはこれだけでもつかんでいただければ上出来です。次回は、醪を搾って原酒にするところから、ラストの瓶詰めまで一気に見ていきましょう!
 

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