日本酒ってどんな酒? Vol.04 「日本酒の“辛口”って何? ~日本酒度、酸度、アミノ酸度~」

日本酒の知識

日本酒ってどんな酒? Vol.04 「日本酒の“辛口”って何? ~日本酒度、酸度、アミノ酸度~」

今回は、「日本酒の味わいの指標」について解説します。ラベル裏やメニュー表に書かれた「日本酒度」、「酸度」、「アミノ酸度」という3つの数値が登場しますよ。

これらの指標が活用できると、実際に飲まなくても味の大まかな見当を付けることができます。よく目にする“辛口・甘口”に加え、“淡麗・濃醇〔のうじゅん〕”という味わいの傾向分類が、具体的にどういったニュアンスを指すのかについてもまとめました。

 

日本酒度=甘辛度

甘いのか、「甘くない」のか

日本酒度=甘辛度

 

まずは、日本酒の「辛口とは、比較的甘みが少ないことである」と理解してください。カレーのように、辛く感じるから辛口と表現されるわけじゃないんですね。

では、甘みが少ないことでどういった味わいが立ち上がってくるのか? 酸味や渋み、苦み、アルコール刺激などの印象が強く、甘いという感じが弱い。ひとまずはこのくらいの認識でいいと思います。

ひとつ重要なのは、「辛口=すっきり。ではない」ということ。誤解されることが多いポイントなので、ここはおさえておきましょう。

日本酒度は「糖分の量」で決まる!

日本酒度は「糖分の量」で決まる!

 

では、日本酒度の高低は、何によって決まるのか? それは、「水を±0で基準にしたときの、日本酒の比重」。

ざっくり言うと、水より軽い日本酒はプラスで、逆に重ければマイナスで表記されます。「軽い=プラス・重い=マイナス」なので注意してください。本来の意味とは異なりますが、“軽ければ浮く、重いと沈む”と覚えてもいいかもしれません。

で、この日本酒度の決め手になるのが、酒に含まれる糖分の量です。糖分が多ければ重くなりマイナス、少ないと軽くなりプラスになります。糖分は酵母が食べるエサで、発酵に使われるのでした。発酵が進むほどアルコールがたくさん生成されるので、日本酒度の高い酒はアルコール度数も高い傾向にあります

酸度=濃淡度

酸度=濃淡度

 

次は酸度です。これは、「乳酸とコハク酸をメインとする、酒に含まれる“有機酸の量”」。この有機酸は旨み成分でもあるので、多い(=酸度が高い)と旨み豊かでコクがあり、逆に少ない(=酸度が低い)と、さっぱりと爽快感を感じます。ちなみに酸度の平均値は1.3程度。

日本酒度と酸度は合わせて考えて

ここでひとつ、とても大切な話をします。それは、「日本酒度と酸度は相関関係にある」ということ。どちらかひとつではなく、両方の関係性によって、味わいの傾向が見出されるんですね。下記に、日本酒度と酸度の関係を図式化したので、参考にしてみてください。数値はあくまで目安です。

 

日本酒度・酸度 相関図

 

それぞれ味わいの傾向は、下記のように整理できます。

濃醇・甘口
有機酸と糖分がともに多い。旨み豊かでまろやか。
濃醇・辛口
有機酸は多く糖分が少ない。旨み豊かながらキレがよい。
淡麗・甘口
有機酸が少なく糖分は多い。さっぱりとした印象だがまろやかさもある。
淡麗・辛口
有機酸と糖分がともに少ない。さっぱりとしてキレもよい。

「キレ」とは?

「キレ」とは?

 

これも、突き詰めて考えてみるとよくわからん、という方は少なくないでしょう。「キレ」は“切れ”のことで、何が切れるのかというと「余韻」です。酒を飲み下したあと、口中に残ったり鼻から抜けていくのが余韻。つまり「あとに残る味わい」ということですね。

そして、この余韻の切れ方が美しい・心地よいことが、「キレがよい」と表現されます。余韻が切れるのが早いことが、必ずしもキレのよさではないのです。だから、逆に余韻がとても長く続くものはキレが悪い、というわけでもありません。余韻が長いことが美点となる味わいもありますし、そういうときにはキレという物差しがそもそも使われなくなって、代わりに「まろやか」などの表現が用いられます。

アミノ酸度=複雑さ

アミノ酸度=複雑さ

アミノ酸は肉、魚、乳製品などに豊富。

 

こちらはその名の通り、含まれるアミノ酸の量を表した数値です。平均値は1.0~2.0の間。アミノ酸とは、タンパク質を構成するなど生命のもとになる栄養成分、くらいの認識でよいでしょう。

アミノ酸度が高いほど複雑な味わいになります。しかし、高すぎると雑味が多いと感じられてしまうんです。

そして複雑味は、ここまでご説明してきた甘辛度、濃淡にも影響してきます。イメージとしては、日本酒度と酸度の相関関係があって、さらに別個に、アミノ酸度という物差しが存在する。こう考えておくのが整理しやすいと思います。数値にとらわれすぎずに、「数値に注目して酒を飲み比べる」というアプローチ法があるということだけでも理解してもらえれば、それで十分です。

次回は「純米、吟醸、本醸造」について

次回は「純米、吟醸、本醸造」について

 

いかがでしたか? いちおうひと通りご説明してみたものの、味わいの表現についてはどうしても抽象的になってしまう部分があります。こればっかりは、やはり実際に味わってみて、“まろやか”“さっぱり”“キレ”などを個々人の感覚としてつかんでもらうしかありません。

その手がかりとして、今回の指標たちをぜひ役立ててみてください。ただやみくもに場数を踏むよりも、好みの味の整理がぐっとしやすくなると思いますよ?

ここまでくれば、日本酒の分類についてもかなり理解しやすくなっているはず。次回はまず、「純米、吟醸、本醸造」など。いわゆる「特定名称酒」の区分を見ていきましょう!
 

日本酒ってどんな酒?

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