日本酒ってどんな酒? Vol.10 「冷酒、ひや、燗~温度で味が変わる!~」

日本酒の知識

日本酒ってどんな酒? Vol.10 「冷酒、ひや、燗~温度で味が変わる!~」

日本酒を飲む温度、こだわってますか? 特に家飲みの場合には「同じ酒を、温度帯を変えて飲んでみる」ことで違った味わいが楽しめるのでおすすめです。

この記事では、温度の違いで味わいがどのように変わるのか? という具体的な変化をメインに解説します。

そのほか、電子レンジで簡単にできる熱燗作りのコツ、ご家庭での日本酒の保存法もご紹介しますよ。

 

温度によってどう変わるのか?

ひや=常温です

温度によってどう変わるのか?

 

まずは紛らわしいポイントをひとつクリアしておきましょう。日本酒は本当に、日本語だからと油断してると間違って覚えてしまう表現が多いですよね。

「ひやは常温、冷酒は冷やしたお酒」。おんなじ意味じゃないので注意!

冷蔵庫のなかった時代には、日本酒は温めて飲むか、そのまま常温で飲むかのおもに二択だったので、温度の低いまま味わうことを“ひや”と言ったんですね。

冷やすor温めると?

では、温度を上下させるとおもにどんな変化が起こるのか? それぞれの特徴を、アルコール感、香りなど項目ごとに対比させながら、箇条書きにしました。

 

冷やすと?
  • 揮発性が低くなるのでアルコール感を感じにくくなる。
  • 苦みや酸味が強くなり、味わいが全体的にシャープになる。
  • 香りは立ちにくくなるが、雑味が減りフレッシュな印象に。
  • 甘み、旨みは感じにくくなり、軽やかなニュアンスが出やすい。
温めると?
  • 揮発性が高くなり、アルコール感を強く感じる。熱燗以上になると、舌にピリッと辛みを感じることも。
  • 酸味や苦みはまろやかに。
  • 香りがふくよかに立ち、芳醇な印象に。
  • 甘み、旨みのボリューム感が増し、米本来の味わいが際立つ。

 

総括しておきましょう。「冷やすと、シャープでフレッシュな印象に」「温めると、まろやかで芳醇な印象に」。ひとまずこう覚えてもらえればOKです。

「吟醸酒→冷酒、普通酒→お燗」が一般的

「吟醸酒→冷酒、普通酒→お燗」が一般的

 

ここまでご説明してきた温度による変化をふまえて、「吟醸酒は冷酒向き」「普通酒は燗も美味」と言われています。

いちおう補足しておくと、普通酒とは、吟醸酒や純米酒といった「特定名称酒の規定から外れた、気軽に買えて飲める常飲酒」という意味合いです。“パック酒”などがその代表と言えるでしょう。

吟醸酒は冷たい状態で飲むと、フルーティーさや爽やかな飲み口といった魅力が最大限発揮されることが多いです。

いっぽう普通酒は、温度を上げたほうが、アルコール感も立ちますがそれ以上に米の旨みがぐっと濃くなるんです。

 

日本酒のあてに「おでん」

 

しかし、大切なのは“上記の一般論が全ての酒に当てはまるわけではない”ということ。

まずは蔵元や飲食店のおすすめの温度で味わってみて、そこから温度を少し上下させてみるのも、日本酒の楽しみ方のひとつなんですね。

特に、常温よりも高い温度で豊かな変化を見せるというのは、ほかの酒にはない多様性です。5℃違うだけで、全然違う表情を見せてくれることもあるんですよ。

温度帯による呼び方が10種類もある!

これはほとんど雑学になりますが、温度帯の呼称を簡単な表にしてみました。なんとも日本的な風情を感じる呼び方も多いんですよ。

 

温度 開栓前
55℃以上 飛び切り燗
約50℃ 熱燗
約45℃ 上燗〔じょうかん〕
約40℃ ぬる燗
約35℃ 人肌燗
約30℃ 日向燗〔ひなたかん〕
約20℃ 常温
約15℃ 涼冷え〔すずびえ〕
約10℃ 花冷え
約5℃ 雪冷え

 

飲食店では「グラス」と頼めば常温以下で、「燗で」と頼めば燗のおすすめの温度帯で出してくれるのが基本です。

料理やそのときの気分に合わせて、自分が意図した温度で飲みたいなら、冷酒、常温、ぬる燗、飛び切り燗、あたりの言い方を知っておくと役に立つと思いますよ。

電子レンジで熱燗を作るときのコツ

電子レンジで熱燗を作るときのコツ

 

ご家庭で日本酒を温めるときには、鍋に湯を沸かして徳利ごと湯煎するのがベスト。でも、時間も手間もかかってしまう方法なので、ここではより手軽に燗酒が作れる、「電子レンジで温める方法」をご紹介します!

電子レンジで温める手順

下記に、手順を1から順に並べてみました。コツは、「全体を均一に温めること」。徳利が電子レンジ対応のものであるかどうかは、事前に確認しておきましょう。

 

  1. 徳利の八分目まで日本酒を注ぐ。入れすぎると吹きこぼれるので注意。
  2. 口にラップをかけて、電子レンジへ。設定は、「500Wで20秒」。
  3. 20秒ごとに取り出して、温度を見る。マドラーのような細い棒か、徳利自体を回し振って軽くかき混ぜる。これで酒の温度が均一になる。
  4. ③を3回ほど繰り返す。時間と回数は、好みの温度により加減する。

家庭での日本酒の保存法・賞味期限

家庭での日本酒の保存法・賞味期限

 

最後に、日本酒を買って家でも飲みたいけど、実際どのくらい保つの? という疑問にお答えします。四合瓶でも、少人数だとひと晩で飲み切るのはしんどいですからね。

ご存じの方も多いかもしれませんが、まず前提として、日本酒には賞味期限の表示がないんですね。瓶詰めした月を指す、製造年月しか書いてないんです。

これには、アルコール度数が一定以上の飲料には賞味期限の表示義務がないなどの理由があります。しかし、身体に害はなくとも酒の味は日々確実に変わっていきます。

日本酒の賞味期限

賞味期限は、酒造りの工程の「火入れ」との関連が深いです。下記の記事をお読みいただいていない方は、目を通していただくと種類ごとの違いがはっきりわかると思いますよ。

 

日本酒ってどんな酒? Vol.09 「造りによる違い その③ ~火入れ・貯蔵出荷~」

 

酒種ごとに開栓前の保存法と期限、開けた後の賞味期限を、下記の図にまとめました。「蔵元が思い描いた味を維持できる期間」として、全体的に期限は短めに設定しています。特に生酒系は、冷蔵庫で保存すれば半年~9ヵ月は大丈夫、という説もあります。

 

酒種 開栓前 開栓後
火入れ 冷暗所で
約1年
冷暗所で
約2~3ヶ月
生貯蔵酒 冷蔵庫で
約2~3ヶ月
冷蔵庫で
約1週間
生詰め酒 冷蔵庫で
約1~1.5ヶ月
冷蔵庫で
約1週間
本生 冷蔵庫で
約1ヶ月
冷蔵庫で
約1週間

日本酒の保存方法

日本酒の保存方法

 

下記三項目のうち、2.と3.はおもに火入れ酒について、「冷暗所ってどういうこと?」という疑問への回答です。生酒系は、1のポイントにだけ気を配ってもらえれば大丈夫です。

1. 瓶を振動させないように

振動が劣化の要因に。冷蔵庫内であっても、できればドアポケットや引き出しを避けましょう。加えて、立てて保管しておけるのが理想。

2. 紫外線の届かない場所で保管

まずは直射日光の当たる場所に置かない。瓶全体を新聞紙でくるむか、化粧箱などが付いている酒ならそれに入れておくのがベストです。

3. 温度変化の激しい場所も避けて

これも、日光の当たらない場所であることが先決。床下収納などがあればなおよいです。

次回は「おつまみ・料理との合わせ方」!

今回はこれまで。次回は、いわゆる「日本酒のペアリング」の基本的な考え方を解説します。料理やおつまみとベストマッチしたときの、日本酒の味わいはひとしおですよ!
 

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