日本酒ってどんな酒? Vol.05 「特定名称酒とは? ~純米、吟醸、本醸造~」

日本酒の知識

日本酒ってどんな酒? Vol.05 「特定名称酒とは? ~純米、吟醸、本醸造~」

今回から、いよいよ「日本酒の分類について」解説していきます! まずはこれだけでもおさえておきたい、「特定名称酒」について。

「前飲んだのと同じ銘柄のはずなのに、味が全然違う・・・」ってなったこと、ありませんか? そんな世の苦い経験をひとつでも減らすべく、できるだけわかりやすくまとめましたので、ぜひ最後までご覧ください!

「商品名がなぜややこしいのか?」その解読法もお教えしますよ。

 

「日本酒」「清酒」の違い

日本酒と清酒は、「純国産」かどうか

日本酒と清酒は、「純国産」かどうか

 

大きな区分から、小さな区分へと移行していきます。それにはまず、「清酒って、日本酒を言い換えただけじゃないの?」という疑問をクリアにしておきましょう。実は、清酒という大きなくくりのなかに、日本酒があるというのが正解。

酒税法上の細かい定義はここでは割愛して、ずばり結論を言いましょう。日本酒とは、「原料に日本産米を使い、日本国内で醸造したもの」だけが名乗ることを許されているんですね。

「特定名称酒」か「普通酒」か

「特定名称酒」か「普通酒」か

 

次の違いはここ。特定名称酒の特徴については後述するとして、ひとまず、「特定名称酒の規定から外れるものが普通酒(レギュラー酒)」と覚えておきましょう。“規定から外れる”とは、たとえば、規定以上の醸造アルコールの使用や、添加物の使用などを指します。

米の精米歩合、醸造アルコール、吟醸造り

さて、ここからが本題。特定名称酒は8種類にも分かれるので、まずは下記の図を見ていただきましょう。そのうえで、説明を加えていきます。

図表は、上から精米歩合が低い(=米を多く削る)ものから順に並べました。精米歩合の欄に「特別な製造方法」とあるものは、特殊な工程が入ったり、原料の米に違いがあるなどさまざまですが、ここでは詳しく言及しません。

図表:特定名称酒

精米歩合

精米歩合

 

まずは、「表面からどれだけ米を削っているか」で名称が分けられます。多く削っているほど、雑味が取れてすっきりとした味わいになる傾向があります。また、精米歩合が低いほうが造れる酒の量が少なくなるので、稀少性が高く、一般的には価格帯も高く設定されます。

醸造アルコール

醸造アルコール

 

次に、醸造アルコールを添加しているかどうかで区分けがなされます。アルコールを添加している、ということに、悪いイメージを持つ方がいらっしゃるかもしれません。でも醸造アルコールの原料は糖蜜やトウモロコシなどで、身体に悪いものが入っているわけではありませんよ。

しかも、醸造アルコールは味を劣化させる菌を防いだり、香り高くすっきりとした酒に仕上げる効能もあるんですね。味わいのバランスを良くするために、あえて添加されているという認識でよいでしょう。特定名称酒に使われる醸造アルコールの量は、白米総重量の10%までと決められています。

吟醸造り

吟醸造り

 

簡単にまとめると、「多く削った(磨いた)米を、長期低温発酵させることで、吟醸香〔ぎんじょうか〕を引き出す造り方」のことです。吟醸香の特色については後述。

特定名称酒 3タイプの特徴

図表では、タイプごとに色分けを行ないました。純米大吟醸酒と純米吟醸酒の2つは、色分けの便宜上で純米酒系に割り振りましたが、純米酒系と吟醸酒系の両方の特徴を併せ持っています。

純米酒系
醸造アルコール不使用。米本来の、深い味わいとふくよかな香り
吟醸酒系
醸造アルコール使用。メロンやバナナを連想させる、フルーティーで華やかな「吟醸香」が一番の特色。
本醸造酒系
醸造アルコール使用。吟醸酒よりも淡麗で、香りも抑えたシンプルな味わい

特定名称酒 そのほかの規定

特定名称酒 そのほかの規定

 

特定名称酒を名乗るためには、ほかに下記のような規定があります。ここは、主要なものの箇条書きにとどめます。

  • 原料は、米、米麹、水、醸造アルコールのみ。
  • 原料の米のうち、麹米の使用割合が15%以上。
  • 米の品質が一定水準以上(農産物検査法で3等以上)であること。

「銘柄」と「商品名」について

最後に、このトピックスも取り上げておきましょう。日本酒特有の、「銘柄と商品名のややこしさ」について。

銘柄は、「八海山」「久保田」など、ラベルに一番大きく書かれてあることが多いです。それぞれのメーカーの、言わば「企業内ブランド」の名前と言えます。

例を一つ挙げましょう。「お~いお茶」は、飲料メーカー伊藤園が出しているお茶です。お~いお茶という銘柄で、「濃い茶」や「ほうじ茶」など、さまざまな商品ラインナップがあるわけです。

日本酒は、ここに特定名称と、造りなどによる特徴も一緒くたに表記されるため、わかりにくいんですね。まず、「銘柄=商品名。ではない」というところをおさえておきましょう。

 

参考商品は、「尾畑酒造 真野鶴・緑紋 純吟中取り無ろ過生原酒」

 

このポイントを踏まえて見てみると、「八海山」という八海醸造が造る同じ銘柄でも、“八海山 特別本醸造”と“八海山 純米大吟醸 雪室貯蔵三年”は全然違う日本酒なわけです。

「久保田」のように、純米大吟醸といった特定名称だけでなく、“千寿” “万寿” “翠寿〔すいじゅ〕”など、おもに銘柄に付随した独自の名付けを行なっている酒造もあります

では、今回の参考商品を読み解いてみましょう。“尾畑酒造=メーカー名”、“真野鶴=銘柄名”、“緑紋=銘柄に付随する独自の品名”、“純吟以下~=造りなどによる特徴”――こんな感じ。おわかりいただけましたでしょうか。

次回は「原料による分類!」

「特定名称酒」については以上! ひとまず、下記の3つだけでも覚えて帰っていただければ。

  1. 米を多く削っているほうが酒のランクが高い。
  2. 純米酒系は米本来の味わい。
  3. 吟醸酒系は特有のフルーティーな吟醸香。

 

続きまして次回は、米や酵母など、原料による分類をまとめていきます!

 
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