ワインってどんな酒? Vol.13 「日本ワイン~繊細でフレッシュ、和食に合わせても~」

ワインの知識

ワインってどんな酒? Vol.13 「日本ワイン~繊細でフレッシュ、和食に合わせても~」

ワインの主要国を解説してきた産地編も、今回でラスト。最後を飾るのは、わが国日本です!

近年発展が目ざましく、その「繊細かつフレッシュ」な味わいに世界からも熱い視線が注がれています。

 

「米不足」がワインづくりのきっかけ?

「米不足」がワインづくりのきっかけ?

 

日本で本格的にワインの醸造がはじまったのは、明治初期の1874年。明治殖産興業の一環として山梨県甲府でスタートしました。当時は米不足で、米から造る酒の代わりを探していたという経緯もあるそうです。

実は150年近くの歴史がある日本のワイン造りですが、「没個性で味わいも薄い」というイメージから脱却できたのは、ここ30年ほどと言えるでしょう。

北海道から九州まで、2023年現在ワイナリー数は約400場にものぼります。

逆境が生んだオリジナリティ

逆境が生んだオリジナリティ

 

日本ワインの魅力をひと言で言えば、「繊細でフレッシュな味わい」ということになるでしょう。産地までの距離が近いので、こうした美質を損なわずに楽しめるというのは、国産ワインならではと言えそうです。

日本はもともと、ワイン用のブドウ栽培に適さないテロワールと言われてきました。

ワイン用ブドウが好む自然条件は一般的に、「冷涼で乾燥した気候で、降水量も比較的少ない」とされています。少し想像してみると、日本のほとんどの地域とほぼ真逆ですよね。しかしだからこそ、栽培方法や品種改良などの工夫をこらし、いまの発展があるのです。

 

日の丸

 

まさに逆境に立ち向かう、日本人らしい精神が息づいているのが、日本ワインなんですね。

そのブランド価値を守るため、2018年には「ワインのラベルの表示ルール」が施行。日本ワインと表示するには、「国産ブドウのみを原料として、日本国内で製造された果実酒」であることが法整備されました。

二大固有品種をご紹介

二大固有品種をご紹介

※写真はイメージ

 

ではここで、そんな独自の発展を遂げてきた日本の固有品種を見てみましょう。

甲州~柑橘の香りと軽やかさ~

日本ワインを代表する白ブドウ品種。グレープフルーツやレモンといった柑橘の香りや穏やかな酸味と、ナチュラルな甘みが特徴です。比較的軽やかに仕上げられることが多く、和食とも幅広いペアリングが可能。樽熟成や、澱を取り除かずそのまま熟成させる「シュル―・リー製法」など多彩な造り方によって、複雑味も備えた銘柄も登場しています。

マスカット・ベーリーA~渋み少なく酸味も穏やか~

日本で独自に交配された黒ブドウ品種。東北から九州まで、日本各地の広範囲で栽培されています。さくらんぼやベリーを思わせる香りと、豊かな果実味を持っています。渋みが少なく、酸味も穏やかに仕上げられる傾向があるので、赤ワインに苦手意識がある方でもトライしやすいと思いますよ。

代表的な産地4つ

最後は産地。上述した固有品種に留まらず、産地ごとの多様性を感じてもらえれば幸いです。

山梨県 ~日本ワインのルーツであり大定番~

山梨県 ~日本ワインのルーツであり大定番~

 

国内生産量第一位。日本ワインはじまりの地であり、今もトップを走り続けるのが山梨県です。

江戸時代の“甲州街道”、2005年に市町村合併により誕生した“甲州市”など、地名をそのまま冠した白ブドウ品種「甲州」が最も著名です。もう一つの日本固有品種である「マスカット・ぺーリーA」も、やはり山梨産が定番と言えるでしょう。

長野県 ~メルローをはじめ欧州品種に注目~

長野県 ~メルローをはじめ欧州品種に注目~

 

生産量では山梨に迫る勢い。降水量が比較的少なく、昼夜の寒暖差が大きいなど、ブドウ栽培に適した気候条件が揃っています。

まずおさえておきたいのは、塩尻市が一大産地となっている黒ブドウ品種「メルロー」。しっかりとした果実味のなかに、スパイシーなニュアンスも感じられます。そのほかカベルネ・ソーヴィニヨンや、白ブドウのシャルドネといったヨーロッパ系品種のワインを選んでも、本国とはひと味違った個性を見せてくれますよ。

北海道 ~寒冷地ならではの独自品種も~

北海道 ~寒冷地ならではの独自品種も~

 

生産量は第三位。温暖化の影響もあり、ワイナリーが近年いっそう増加傾向に。山梨、長野、北海道の三道県で、日本ワイン総生産量の約7割が造られています。

ヨーロッパ系品種をはじめ幅広いブドウが栽培されていますが、冷涼な気候を活かし、「ケルナー」などドイツ系の白ブドウ品種の生産が盛んです。また、日本ワインらしからぬ濃厚さを持つ「山幸〔やまさち〕」や、逆に軽快さが魅力の「清舞〔きよまい〕」という、ふたつの北海道独自品種の赤ワインにも注目が集まっています。

山形 ~個性あふれるワイナリーが多数~

山形 ~個性が光るワイナリーをチェック~

 

国内第四位の生産量もさることながら、県そのものというよりも独自の取り組みをしているワイナリーがフォーカスされることが多い産地です。

1944年創業の歴史ある「朝日町ワイン」は、日本ワインコンクールでの受賞歴も豊富で、毎年秋分の日には「朝日町ワインまつり」が催されるなど町の名産として愛されています。ブドウだけでなく、さくらんぼや桃、ラ・フランスなどのフルーツワインも手がける「高畠ワイナリー」ブドウ栽培から出荷までを自社で一手に行なう「ドメイヌ・タケダシリーズ」などで根強いファンをつかんでいる「タケダワイナリー」など、現地で直接体験してみるのもよさそうです。

次回は「マリアージュ」について

いかがでしたか? 日本ワインはナチュラルで軽めな傾向があるだけでなく、総じてどこか日本人の味覚にマッチする印象があります。ワインにあまり馴染みがない方でも、“飲みやすい”と感じられると思いますよ。

また、「郷土料理にその土地の酒を合わせる」というのは酒のペアリングの定番ですが、それは日本ワインも同様。赤白問わず、和食に合わせやすいものも多いので、ぜひ試してみてください。

そんなわけで次回は、「ワインと食のマリアージュ」について解説していきましょう!

 
ワインってどんな酒?

ワインってどんな酒? Vol.13 「日本ワイン~繊細でフレッシュ、和食に合わせても~」

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