ワインってどんな酒? Vol.07 「自然派ワインって何? ~化学物質に頼らず自然の力を引き出す~」

ワインの知識

ワインってどんな酒? Vol.07 「自然派ワインって何? ~化学物質に頼らず自然の力を引き出す~」

前回テロワールについてふれた流れで、今回は「自然派ワイン」について解説。

名前はよく見聞きするけど実際どんなものなの? という疑問にお答えする内容となっております。

 

自然派ワインに世界的な定義はない

まず自然派ワインとは、フランス語の「ヴァン・ナチュール」、ヴァン=ワイン・ナチュール=自然の、という言葉の和訳から生まれた呼び名です。

呼び名、とここで言ったのは、実は自然派ワインには、明確な定義がないんですね。たとえばソムリエ協会など世界的な団体が定めた、グローバルな基準は特にないということ。

後述するように、独自の認証を持っている団体はヨーロッパを中心とした各地に存在します。

自然本来のパワーを信頼する

自然本来のパワーを信頼する

 

では、どういったワインを自然派と呼んで区別しているのか。それは呼び名の通り、できる限り自然に近い農法でブドウを育て、ワインを造っているということが認められるかどうか、がポイントとなります。

たとえば化学合成農薬・肥料を使わない、酸化防止剤を極力使わない、など。これは次の章から見ていきましょう。

自然の力を最大限に活かした農法

自然の力を最大限に活かした農法

 

まずはブドウ造りについて。上記のキャッチコピーを説明するのに一番わかりやすいのは、化学合成農薬や化学肥料を一切使わない「有機農法」

いわゆるオーガニック農法で、フランス語ではビオロジック農法と呼ばれます。または、自然環境が保全できる範囲で、必要な場合のみ化学物質を使用する「減農薬農法」。サステナブル(保全)農法、フランス語ではリュット・レゾネと言います。

月の満ち欠けに合わせてブドウを育成?!

月の満ち欠けに合わせてブドウを育成?!

 

ひときわ特徴的なのは、「バイオダイナミックス農法(ビオディナミ農法)」でしょう。

これは、有機農法をさらに厳格にした形。月をはじめとした天体の運行に合わせてブドウ育成のスケジュールを組む「種まきカレンダー」や、牛の骨に牛糞を詰めた「プレパラート」を地中に埋めて肥料にするなど、独自のロジックで構築された農法です。

ブドウ育成のほかにも、天然酵母による発酵や、実や果皮だけでなく房もいっしょに破砕するなど、ワイン造りにも細かい決まりを持っています。

人の介入を最小限にしたワイン造り

人の介入を最小限にしたワイン造り

 

次に、自然派のワイン造りについてご説明しましょう。ここでも基本となるのは、化学物質を極力使わないこと。加えて、人の手による介入も最小限にするということです。ここでは、代表的な3つの特徴を取り上げます。

1. 酸化防止剤をできる限り控える

一つ目は、亜硫酸に代表される「酸化防止剤」を可能な限り使わないということ。使用量に上限がある場合がほとんどで、まったく使ってはいけないというわけではありません。造り手によってその運用法は異なります。

酸化防止剤は、ワイン劣化の二大要因となる「酸化」と「腐敗」の両方を防いでくれる添加物です。補足しておくと、酸化とはワインが酸素に触れることで、腐敗は雑菌の繁殖によって起こります。

 

鉄が「錆びる」のも酸化。

鉄が「錆びる」のも酸化。

 

酸化防止剤はワインを良い状態に保つうえで非常に優れものなのですが、多量に用いるとリスクもあるんです。

この添加物特有の硫黄のような臭いが、ワインのアロマに干渉してしまったり、頭痛の原因になるという説も。ただ、亜硫酸はブドウ発酵の際に副産物として生まれる自然物でもあります。自然派ではないワインにおいても度を越した摂取量でない限り、身体に害はないとされています。

2. 天然酵母による発酵

これも絶対の条件ではありませんが、人工培養した酵母ではなく、野生の天然酵母を採用することが多くなっています。

3. 濾過を行なわない

ワイン造りでは瓶詰めの前に、「濾過」が行なわれます。これは不純物を取り除いて雑味を抑え透明度を上げ、雑菌の繁殖も抑える働きがあります。

しかし、この濾過によってワインが本来持っている旨みや風味の複雑さも抑えられてしまう傾向があるので、あえて濾過を行なわない、自然な状態で出荷される場合が多いんです。

味わいの特徴 ~素朴で、繊細かつ複雑~

味わいの特徴 ~素朴で、繊細かつ複雑~

 

さて、このようにして生まれた自然派ワインは、一般的なワインと比べて具体的にどのような香り・味わいの違いを持つでしょうか?

特有の「ビオ臭」がある

酸化防止剤の抑制や無濾過など、自然派ワインの製法によって生じることが多いとされています。

硫黄系や、漬け物の“たくあん”のような香りと表現されることも。必ずしも不快な臭いではなく、むしろこの特徴こそが魅力だと言う人もいるんです。

近年では、このビオ臭がほとんどしない自然派ワインも存在。

穏やかかつ、複雑な味わい

自然の恵みが身体に染み渡るような、優しい味わいになる傾向。いっぽうで酸味や雑味などの野趣を感じるものもあります。

保管や扱いに注意が必要

一般的なワインよりもデリケート。抜栓後の劣化だけでなく、外部の環境に影響されやすいので保管場所にも配慮が必要です。

「認証マーク」を目印に探すのもアリ

「認証マーク」を目印に探すのもアリ

 

最後に、自然派ワインかどうかをどのように見分ければよいのか? に少しだけふれておきます。

特によく見かけると思われる認証機関のマークのみピックアップしましたが、実際に飲食店で飲みたい、ショップで買いたいときには、”自然派“”ナチュール“などと表記のあるものを選ぶか、スタッフに尋ねるのがスムーズでしょう。

 

EURO LEAF(ユーロリーフ)
EU全体の、オーガニック認証機関。
ECOCERT(エコサート)
フランスで設立された、国際有機認証機関。
有機JASマーク
日本の農林水産省が有機食品を認証するマーク。
Demeter(デメター
ドイツ発祥の、ビオディナミ農法の認証機関。

次回からは「産地」編!

次回からは「産地」編!

 

いかがでしたか? 大切なのは、自然派だけが身体に良くて、一般的なワインは身体に悪い、というわけではないということ。

多種多様なワインの味わいのあくまで一好みとして、自然派ワインをセレクトするのを筆者はおすすめします。

 

さて次回からは産地編。少しでも知っていると、やはりワインを味わう世界がぐっと拡がります。できるだけコンパクトかつ、わかりやすくまとめていきますので、何卒お付き合いくださいませ。

 
ワインってどんな酒?

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