ワインってどんな酒? Vol.11 「スペインワイン ~スパークリングとシェリーにも注目~」
ワインの知識
スペインと言えば情熱の国。温暖な気候のなかで育まれた重くて濃いワインが多い、とお思いの方もいらっしゃるかもしれません。
しかし実際は、しっかりと熟成させたまろやかなワインを、比較的安価で味わうことができるのが魅力なんですよ。
ワインの生産量は、イタリア、フランスに次いで世界第三位です。
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気候は、暑いだけじゃない
ヨーロッパ南西部に位置するスペイン。日照時間が長く、雨があまり降らない地域が多くはありますが、実はヨーロッパ内でスイスに次いで山脈が多い国でもあるんです。
そのため、北部は雨が多くて夏は涼しく、冬も暖かい海洋性気候、首都マドリードがある中央部は夏暑く冬は寒い大陸性気候など、地域によって多様な自然条件に恵まれているんですよ。
イタリアと同様に、ブドウの土着品種が豊富です。
代表的なワインは3つ
自然条件が多彩なので、実際はワインのバリエーションもあるのですが、まずおさえておきたいのは3つ。
まず最も主流なのが、「テンプラニーリョ」というブドウ品種を使った赤ワイン。次に、シャンパーニュと同じ方式を採用するスパークリングワインの「カヴァ」です。
こちらはマカベオ、チャレッロ、パレリャーダという、スペイン国内の固有品種である3種の白ブドウをメインに造られています。
そして、忘れてはならないのが「シェリー酒」。日本では別カテゴリのように扱われることが多いのですが、シェリーもれっきとしたワインの一種なんですよ。
シェリー酒=酒精強化ワイン
シェリー酒を一度も解説したことがなかったので、ここで簡単にまとめておきましょう。
シェリーは白ブドウから造られる、「酒精強化ワイン」の一種。これは何かというと、醸造過程でアルコールを添加して、アルコール度数を高めたワインのことを指します。
ポルトガルで造られる“ポート” “マディラ”と合わせて、“三大酒精強化ワイン”と呼ばれているんですよ。
その特徴はまず、15~22%と、総じてアルコール度数が高いこと。赤白ワインの目安は12%前後です。
食前や食後に嗜まれることも多く、そのままストレートで飲むほか、カクテルに使ったり、デザートとしてアイスクリームにかけて味わう方法もあるんですよ。
味わいは大きく分けて、辛口、天然甘口、両者をブレンドした甘口、の3分類。繊細でフレッシュ感のあるものから濃密で甘いものまで幅広く、一概には言えませんが、通常のワインとは異なる“香り”が最も印象的でしょうか。
お店で見かけたら、おすすめの飲み方を尋ねつつぜひ一度試してみてください。
熟成規定による格付け
しばし脱線しましたが、一般的な赤白ワインに話を戻します。
スペインは、ワインの様々な要素のなかでも“熟成”に重きを置いている側面があります。産地による格付けのほか、熟成規定による区分があるのはスペインならではです。
ここでは、それらを簡単にご紹介しましょう。
赤、白&ロゼとそれぞれ最低熟成期間を記していますが、これは瓶内発酵と樽発酵を合わせた長さです。加えて、熟成による味わいの大まかな違いもまとめました。
上から、熟成期間の長い順に並べてあります。
- グラン・レセルバ
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- 赤:60ヵ月(そのうち樽で18ヵ月)
- 白&ロゼ:48ヵ月(そのうち樽で6ヵ月)
- 最高級品。独特のボリューム感がありながら、角が取れてまろやか。
- レセルバ
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- 赤:36ヵ月(そのうち樽で12ヵ月)
- 白&ロゼ:24ヵ月(そのうち樽で6ヵ月)
- 総じてリーズナブルな価格にもかかわらず、しっかりとコクが感じられるものが多い。
- クリアンサ
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- 赤:24ヵ月(そのうち樽で6ヵ月)
- 白&ロゼ:18ヵ月(そのうち樽で6ヵ月)
- フレッシュ感のなかにほどよいコクがあり、比較的飲みやすい。
3つの産地紹介
最後に、ここまで紹介してきた主要なワインの産地を、それぞれご紹介しておきましょう。
リオハ ~穏やかな風土が育てる「テンプラニーリョ」~
スペインの中心地・首都マドリードの北北東に広がる産地。夏の暑さが厳しくなく、四季を通して穏やかな気候のなか育まれる、黒ブドウ品種「テンプラニーリョ」で知られています。
この品種で造られた赤ワインは、程よい酸味と柔らかな渋みがあり、果実味とコクもしっかり感じさせてくれる、飲み応えのあるものが多い傾向にあります。
ぺネデス ~安価でも満足度の高いスパークリングワイン~
北東部に位置する、スパークリングワイン「カヴァ」の主要産地。カヴァとは“洞窟(Cave)”が語源で、ワインを熟成するセラーを意味します。
瓶内二次発酵などが特徴のシャンパーニュ方式で造られますが、酸味が穏やかで比較的飲みやすく、そのコストパフォーマンスの高さが世界的に好評を博しています。
へレス ~シェリー酒の伝統ある産地~
スペインの南部・アンダルシア州に含まれる、シェリー酒の中心的産地。大西洋に面し夏と冬の寒暖差が激しく、石灰質の白い土壌のもと、シェリーに使われる白ブドウ品種は生育します。
シェリー酒の味わいは本当に多様で、日本では、バルやダイニングだけでなくバーで出会う機会も多いでしょう。
次回は「新世界(ニューワールド)」!
今や一般的な飲食店スタイルとして定着した「バル」も、元々はスペインの居酒屋やカジュアルレストランを意味する言葉。
スペインのワインは、高格付けのボトルもフランスなどに比べると安価で取り引きされています。ハイグレードなワインの味わいを気軽に体験したいなら、まずスペインワインを選んでみるのもいいかもしれません。
次回は、アメリカやチリなど新進気鋭の「新世界(ニューワールド)」の中の、主要な国々をまとめて解説します!
ワインってどんな酒?
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