ワインってどんな酒? Vol.09 「イタリアワイン ~食事に合わせやすいワインが多数~」
ワインの知識
前回のフランスに引き続き、今回はイタリアのワインを概説。国内全土でワイン造りが行なわれ、伝統ある「土着品種」が膨大に存在する、というのが一番の特徴でしょう。
食文化とともに発展してきた経緯から、「総じて酸味が強い」こともポイントです。
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ブドウ栽培に理想的な「ワインの大地」
北側にアルプス山脈がそびえ、残りの三方を地中海に囲まれたイタリア。気候は全体的に温暖で、四季がはっきりとして日照に恵まれ、ブドウの生育期にはほとんど雨が降らないなど、ブドウ栽培に理想的な自然条件が揃っています。
古代ギリシャ人はこの土地を「エノトリア・テルス」(=ワインの大地)と讃えたほど、古くからワイン造りが盛んだったんですよ。
なお、ブドウ栽培の自然条件・テロワールについては、過去記事で解説しておりますので、よろしければご一読を。
20ある州全てで、食文化に合わせた多彩なワインが造られてきました。
大まかな傾向としては、北部は酸味がしっかりとしながら繊細さを感じるワイン、いっぽう南部はストレートで力強いワインが多いと言えます。
イタリアワインは「酸味が強い」
イタリアのワインの味わいには、ひとつの大きな特色があります。ちらっと前述しましたが、総じて酸味がしっかりしているものが多いんです。
これは食事とのペアリングを考えてのこと。ワインの酸味が、トマトやバルサミコ酢といった、酸味のある食材やソースと非常によくマッチするんですね。塩を利かせた料理の、塩気をワインの酸味が中和してくれるという効果もあります。
イタリアワインをイタリア料理とともに楽しむときには、この点に着目してみると、ペアリングの魅力を鮮やかに感じることができるでしょう。
土着品種は2,000種以上!?
そして忘れてはいけないのが、何と言っても「土着品種の多さ」です。土着品種とは、「その土地に古くから根付いて栽培されており、世界的には広まっていない品種」のこと。イタリア国内だけで、その数は推定で2,000種にのぼると言われています。
片っ端から覚えようとすると、気が遠くなってしまいそうですね・・・。
もちろん全部覚える必要はありません。ひとまずイタリアワインを代表する土着品種を、産地とともに下記でご紹介していきます。
なお立地としては、ピエモンテ州、ヴェネト州が北部、トスカーナ州は中部、シチリア州が南部にあたります。
ピエモンテ ~“ワインの王”を生む品種「ネッピオーロ」~
イタリア語で“山の麓(ふもと)”という名前の通り、長大なアルプス山脈の麓に広がる州。“イタリアワインの王”と讃えられる赤ワイン「バローロ」の産地としてよく知られています。
その弟分と呼ばれる「バルバレスコ」も、ともに「ネッピオーロ」というブドウ品種で造られます。タンニンが強く、長期熟成に向く品種で、伝統的な大樽で熟成されます。力強い渋みと酸味がありながら、深遠な気品を感じる味わいです。
近年では、早飲みタイプで香り高いバローロなども登場しています。
ヴェネト ~普段飲みから最高級品まで幅広く~
ワイン生産量はイタリア国内トップ。世界遺産の町・ヴェネツィアが州都に指定されています。南東部がアドリア海に面しており、イカ墨パスタやリゾットをはじめ、魚介を使った料理に定評があります。
そうした食文化もあり、ワインで最も著名なのは白ワインの「ソアヴェ」。「ガルガネガ」というブドウ品種を70%以上採用し、柑橘系を思わせるフレッシュな果実味と、ミネラルも感じられます。普段飲みにぴったりの辛口に仕上げられることが多いんですよ。
スパークリングワインの「プロセッコ」、陰干ししたブドウを発酵させる最高級赤ワイン「アマローネ」にも注目です。
トスカーナ ~赤のテーブルワインといえば「キャンティ」~
フィレンツェを州都に擁する州。丘陵や山岳地帯が9割以上を占め、気候も地域によって異なります。
最も有名なワインは赤の「キャンティ」で、「サンジョヴェーゼ」というブドウ品種から造られます。チェリーを思わせる香りでしっかりと酸味があり、幅広い食事に合わせやすいのが特長です。
また、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロなど、フランスを代表する“ボルドー品種”をイタリアの土着品種にブレンドするなど、ワイン法や伝統にとらわれない「スーパー・タスカン(=トスカーナ)」にも名品が揃います。
シチリア ~火山性土壌が育むフレッシュ&ミネラル豊かな味~
イタリアの最南端に位置し、地中海に浮かぶシチリア島。島とはいえ、日本の四国の約1.4倍の面積があり、そのため地域により多彩な自然条件に恵まれています。
気候はおもに夏暑く、冬も暖かい地中海気候。今も活発に活動する、エトナ火山の裾野で栽培されるブドウを使った「エトナ」が赤白ワインともに有名です。
いずれもみずみずしく、ミネラルに富んだ味わいで、赤は「ネレッロ・マスカレーゼ」と「ネレッロ・カップッチョ」という品種を主体に、白は「カッリカンテ」をベースに造られます。
次回は「ドイツ」のワイン!
今回は、イタリアの代表的な品種・産地をひとまずご紹介しました。でも、これらを一つ一つ覚えることよりも大切なのは、聞いたこともないような土着品種を使ったワインが出てきても、構えることなく、気ままに楽しむことだと思います。
今回紹介した内容がなんとなく頭の片隅にあれば、それを起点にして、「こんなイタリアワインもあるんだ!」と、新しい味覚との出会いにいっそう喜びが湧くはず。
知識を増やすことは、知識に当てはめて自分の感覚の答え合わせをするためではなく、自分の感じ方を拡げる材料を増やすためです。
言い換えると、感性の“自由度”をより高めるため。ワインとアクセスできるきっかけがひとつでも多くなることを願い、産地編を進めてまいります。
そんなわけで次回は「ドイツ」。ご期待ください!
ワインってどんな酒?
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