ワインってどんな酒? Vol.06 「テロワールって何? ~ブドウ産地の自然条件~」

ワインの知識

ワインってどんな酒? Vol.06 「テロワールって何? ~ブドウ産地の自然条件~」

「テロワール」という言葉、聞いたことありませんか? 筆者は個人的に、日本人にとってワインをとっつきにくく感じさせる言葉のひとつだと思っています。

今回は、その敷居を少しでも下げることに努めます!

 

ひと言でいうと、テロワール(Terroir)とは「ブドウ産地の自然条件」のこと。“土、土地”を意味するフランス語の“terre”から派生した用語なんですね。

 

テロワール(Terroir)とは「ブドウ産地の自然条件」

 

では、その産地の自然条件とは、どういったもので構成されているのか?

主要なものは4つあり、「気温」「日照時間」「降水量」「土壌」です。それぞれ適した数量、環境も併記していきますが、あくまで一般・平均的なものであり、品種によって求める自然条件は異なります。

 

それぞれ下記から見ていきましょう!

 

1. 気温 :年間平均 10~20℃

気温 ~年間平均 10~20℃~

 

ブドウの樹は、気温が10℃程度になると活動を始めます。しかし、逆に高すぎるのも生育によくありません。

キャッチコピーにもある通り、一般的には年間平均気温が10~20℃である地域が適しています

また、この気温条件をクリアするための要因となるのが「標高」。近い場所であっても、標高が100m高くなると、気温は約0.6℃下がります

 

加えて、季節のサイクルもあるほうがベターです。つまり、日本のように暑い時季と寒い時季がちゃんとある、ということ。そのため、北半球では北緯30~50度、南半球でも南緯30~50度に、ほとんどの産地が集中しているんですよ。

2. 日照時間 :生育には1,000~1,500時間必要

日照時間 ~生育には1,000~1,500時間必要~

 

ブドウの樹は、11~3月までは休眠期。4月から枝に芽をつけ、9~10月に収穫されます。

つまり4月頃からの生育期間中に、1,000~1,500時間の日照を要するということです。

この日照時間を確保するための工夫が、「斜面」に畑を設けるということ。北向きよりも、南向きの斜面のほうが日当たりがよいので、好まれることが多いんです。

また、果実が熟す期間には、一日のうちの気温差が大きいほうが良好に成熟するとされています。

3. 降水量 :年間で500~900mm

降水量 ~年間で500~900mm~

 

初夏~秋にかけての降水量は少ないほうがよく、年間降水量は 500~900mmの範囲が適量です。

降水量の世界平均は900mmくらい。ちなみに、日本全体の平均は1,700mm前後です。お察しの通り、日本はやっぱり雨の多い国なんですね・・・。

4. 土壌 :ほどよく痩せた、砂利・礫質土壌

土壌 ~ほどよく痩せた、砂利・礫質土壌~

 

一般的には、砂利・礫質〔れきしつ〕土壌が適していると言われています。つまり、土の粒が比較的大きい土壌ということ。そのほうが水はけがよく、樹が地中深くまで根を張れるんです。

加えて肥沃な土壌よりも、ほどよく痩せた土壌が好まれます。窒素やリン、カリウムなどミネラル成分をはじめとする養分が、ただ充実していればいいというわけではないんですね。

これはなぜかというと、そのほうがブドウの樹自体の生育が抑制されます。果実に養分がいきやすく、各所に負荷をかけることで植物が本来持つ生命力が引き出されるというわけ。

まずは「寒暖」で産地を把握してみて

まずは「寒暖」で産地を把握してみて

 

以上のように見てきましたが、4つのなかで、ブドウの品種選びや味わいに特に大きな変化が表われるのが、気温です。

一般的に、ブドウは熟すほどに甘みや果実味が増し、酸味が少なくなっていきます。つまり、寒いと実が熟しにくいので酸味は強く、シャープな印象が出やすい。反対に暖かいと、甘くて果実味が強くなる傾向があるんですよ。

 

なのでワインの産地を覚える際には、まずは地域ごとの寒暖に注目するとよいでしょう。チリやアメリカ・カリフォルニア州、南アフリカなどはいかにも温暖な地域ですよね。逆に、緯度が高い、つまり赤道から離れるほど気温は冷涼になっていきます。

日本やニュージーランドなどは、比較的冷涼な地域に入ります。ワインを産地で特徴づけるには、地理の知識がかなり役に立ってくるんですよ。

産地の「赤道からの距離」を足がかりに

産地の「赤道からの距離」を足がかりに

 

ヨーロッパ各地に関しては、地域が縦に長かったりブドウ品種に工夫が凝らされていて、地域の寒暖だけで特徴が分けられません。しかし例外は多々あれど、「赤道からの距離」をきっかけの指標として使ってみるのは有効でしょう。

たとえば、暑い地域のはずなのにすごくライトで酸味がシャープなワインが出てきたら、産地の寒暖にとらわれない何か別の趣向が凝らされている、と推測できます。

次回は、「自然派ワイン」について

「自然派ワイン」って何?

 

ワインの産地を覚えるのは、ブドウ品種の特徴をとらえること以上に骨が折れます。

産地ごとの特徴はひとまず後回しにして、「テロワール」という言葉を大づかみに理解できれば、よく聞く「ワインは農産物である」という格言の意味がより身に染みるはずです。

ワインは本当に自然の恵みなんだと思うと、よりいっそう美味しく感じられるかもしれません。一歩ずつ、ワインとの距離を縮めていきましょう!

 

自然派ワイン

 

さて次回は、「自然派ワイン」について解説。少し前にはビオワイン、最近だとナチュールワイン、などと呼ばれることも多いです。どこかで聞いたことはありませんか?

先ほど“自然の恵み”と言いましたが、自然派ワインは、テロワールを最もよく表現する造り方と言われることもあるんですよ。

 
ワインってどんな酒?

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