ワインってどんな酒? Vol.03 「ワインのテイスティング 前編 ~香り・味わいの整理法~」
ワインの知識
ワインは、「感じるままに味わう」のが意外と難しいと筆者は思っています。理由は、情報量が多すぎて頭が混乱してしまうことがあるから。
でも、味わうための指標や拠りどころとなる知識・感覚を身につければ、ワインとの距離がぐっと近くなるはずです。
というわけで今回はまず、香りと味わいの整理法をレクチャー。具体的なテイスティング実践方法を、次回にまとめます。
特に香りのパートは、こちらの製造工程に目を通していただくとわかりやすくなると思います。
コンテンツ
香り ~由来するものにより3つに分類~
ワインの香りは、キャラクターを示す重要な情報をたくさん抱えています。ここではその香りを、ワインを形作る「何に由来するものなのか」に焦点を当て3つにまとめた分類法をご紹介します。
しかし、必ずいずれかに分類されるわけではありません。ふたつ以上の分類にまたがる場合や、どこに属すとも言いがたい香りも存在します。あくまで、複雑で多彩な香りを整理するためのツールとして、役立ててみてくださいね。
香りの表現は本当に数が多いです。具体例は、イメージしやすく、ひとまず押さえておくと香りが解釈しやすくなるものをピックアップしました。
それともう一つだけ。飲む前に嗅ぐ香りを「アロマ」、飲んだ後に口中から鼻腔に上がってくる香りを「フレーバー」と呼び分けます。両方いっしょだと思ってた! という方は意外と多いんじゃないでしょうか?
第一アロマ(原料のブドウ由来)
ブドウに由来するもので、自然界にそのまま存在するものの香りが挙げられます。まずは、柑橘類やベリー、リンゴやライチ、トロピカルフルーツなどの「果実」。ブドウも果物なのに、ワインにするといろんなフルーツを思わせる香りが際立つのが不思議ですよね。
そのほか、バラやスミレといった「花」。そして、刈り取った草や木を感じさせる「草木」の香りもブドウ由来だとひとまず認識しておきましょう。
第二アロマ(発酵由来)
これは第一アロマよりもイメージしにくいかもしれません。まずはパンやビスケットなど、「酵母」のものを覚えてください。チーズやバターなど、「発酵乳製品」の香りもイメージしやすいでしょう。杏仁豆腐のような香りがすることも。
そのほか、おもに日本酒で「吟醸香〔ぎんじょうか〕」と呼ばれる、バナナやリンゴを思わせる香りを、第二アロマとして整理することもあります。
第三アロマ(熟成由来)
酸化や、木樽熟成により加わった香り、瓶内熟成などによって生じたアロマがここに分けられます。
酸化や樽熟成に起因して、コーヒーやチョコレート、アーモンドなどナッツ類、バニラ、ロースト香、クローブやナツメグなどのスパイス、といった香りが生じます。
また、赤ワインが熟成するとイチジクやプルーン、紅茶、なめし革、土、たばこのような香りになることも。白ワインだと、ドライリンゴやバナナ、蜂蜜、シナモン、ショウガ、干し草――のように表現されます。
味わい ~知覚されやすい順番がある~
さて、次は味わいです。つまり、舌で味覚、フレーバーをキャッチする鼻腔で嗅覚を、触感(食感)・質感を触覚を働かせて感じ取ることになります。
ワインを口に含んだあと、前半・中盤・後半で、優位になる味わいとそれを感じるポイントが変わってくるので、順を追って説明しますね。
ワインは口に入れてからも、刻々と味わいが変化します。下記の順番は、それらが知覚されやすい順にもなっているので、参考にしてみてください。
前半(口当たり)
舌の前方、先のあたりに意識を向けます。
- アタック
- 口に含んだときの第一印象。味の強弱や、口の中に味がどう広がっていくか。
- 甘み
- 熟したブドウの果実味や、木樽の成分も甘みに反映されます。発酵で酵母が食べ切らなかった残糖分も、甘みの要因です。
中盤(口中)
酸味などは、ワインを口の中で転がしていると自然と立ち上がってくるので、嗅覚・触覚に意識を向けるとよいでしょう。
- 酸味
- ブドウに由来することが多く、ワインの個性をまとめるのに非常に重要な要素。酸味の多い・少ないに加え、シャープだったり逆に柔らかく感じたりと、質感にも注意を向けましょう。こうした酸味のニュアンスが、味わいのフレッシュ感やバランス、余韻にも影響してきます。
- アルコール
- 高いアルコール度数の酒を飲むとはっきりと感じる、アルコール感のこと。ワインではそれほど強くは知覚されませんが、刺激性や、味わいのボリューム感に大きく関わります。
- ボディ
- ミディアムボディ、フルボディなどと表現されます。おもに甘み・酸味・アルコールのバランスを、人の体型で表現したもの。酸味や渋みが優位だとボディは軽く、甘みやアルコールが勝つと重く感じられます。
- テクスチャー
- ボディは味覚のバランス、テクスチャーは、直接触覚でとらえる質感です。“食感”と言い換えたほうがわかりやすいでしょうか。ワインは液体とはいえ、さらっと流れるようなものばかりではなく、果実を噛んだようにジューシーだったり、もったりとした厚みが感じられることもあるんです。
後半(余韻)
喉に近い、口の奥のほうを意識します。特に苦みは、舌の奥でより敏感に感じ取ることができます。飲み込んだあとの余韻まで、じっくりと楽しみましょう。
- フレーバー
- ワインを口に含んだあとに漂う香り。「風味」とも言います。
- 苦み
- おもにブドウの品種や熟度に由来。旨みや塩味をともなって感じられることも。
- 渋み
- ワイン中のタンニンなどに起因。口の中の粘膜がキュッと引き締まるような感覚から、「収斂味〔しゅうれんみ〕」と呼ばれることも。辛さと同じで、味覚ではなく触覚で知覚されます。酸味と同様に、強弱と質を感じ取ることが大切。
- 余韻
- こちらはワインを飲み下したあとに、口の中に残る風味。質的なものだけでなく長さ、つまり余韻の持続性にも注目します。
次回は「テイスティング実践法」!
今回は情報量が多いですが、香りが3つに大別できること、味わいの種類と順番を何となくつかんでもらえればそれでOK。
次回はこれらをしっかりと感じ取る方法をレクチャーします!
ワインってどんな酒?
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