ウイスキーってどんな酒? Vol.14 「Bar Main Malt(バー・メインモルト)のマスターに、ウイスキーの愉しみ方を聞きました!」
ウイスキーの知識
今回は、ウイスキーバーのマスターに、初心者がウイスキーをより深く愉しんでいくためにはどうすればいいかを聞いてきました! 後半は、日本のウイスキーの現況についても伺っています。
教えていただいたのは、約2,000本という圧倒的なウイスキーコレクションで「西の聖地」とも呼ばれる、神戸の「Bar Main Malt」のマスター・後藤昌史さんです!
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飲み方を合わせて、いろいろ試す
「ウイスキーは、肩肘張って飲むもんじゃない」と後藤さん。ストレートじゃないとウイスキーに失礼、みたいなのはただの押しつけ。強要するのと、教えるのは違う、と言います。
つまり、飲み方をコロコロ変えてしまっては、自分の中で基準がなかなか定まらないということ。
はじめの一、二杯目はいつもの飲み方で新しいボトルにチャレンジして、その後はバーテンダーと相談したりしながら、自由に楽しむというのが初心者におすすめとのことです。
印象に残った一本は写真に撮っておく
では一杯目のボトルは、具体的にどのように決めれば良いのでしょうか?
とりあえず飲み方だけ伝えてもらえればOKです。特にご要望がないのに、高価なウイスキーをセレクトしたりはしないので。
もう少し具体的には、美味しかったボトルを憶えたり写真に撮っておいて、それと似たor違った味わいで、というオーダーも良いでしょう。
あんまりぐだぐだと言語化せずに、まず一杯目をラフに頼んでもらって、それを絡めてお話しさせてもらいながら、二杯目以降をセレクトするのが、お互いに一番やりやすいんじゃないでしょうか。
初心者におすすめのウイスキー
店のラインナップの中から、初心者におすすめのボトルを二本セレクトしていただきました!
ソーダで割ると、炭酸とともにスモーキーさがプチプチと際立ちます。スモーキーな香りに、スコッチの“今”が感じられそう。ドライな甘みも印象的。
伝統的なオロロソシェリー樽で熟成をかけたスコッチ。優雅な風味が余韻まで続きます。旨みがしっかりしているので、ロックもおすすめ。
BARでの最低限のマナーは?
ここまでは、BARだけでなく酒販店やイベントでも使えそうなテクニック・考え方でしたね。
さてここからは、初心者にとってはどうしても敷居が高くなりがちな、BARでのマナーについても聞いていきます。
先ほども言いましたが、基本的には自由にお酒を楽しむ場。マナーは、最低限でいいと思います。
まずは、店内で寝ない、てことですかね(笑)。けっこう多いんですよ。あとは、オーダーしたものはできるだけ残さずに帰ってもらえれば、それでいいかと。大きすぎる声で話したり騒いだりしないように、ていうのも一応。ただ黙々と飲む必要もないんですけどね。
あ、最後にひとつ。“手の届く範囲のボトルを勝手に触らない”っていうのはけっこうだいじかもしれません。自分の家に招いた友人が、本棚の本とか勝手に読んだり、冷蔵庫開けだしたらイヤじゃないですか。それとおんなじです。ひと言尋ねてさえもらえれば、ダメ、って言うことはまあないですよ。
ハーフなら「二杯以上」のオーダーを
ハーフオーダー(半量を半額で提供してもらうこと)について。
ハーフオーダーは、ボトルによって承れないものもありますが、基本的にはOK。ただ、ハーフ一杯でお会計される方にはワンショット分の料金をいただいているので、はじめに“何杯か飲み比べたい”とお伝えいただいたほうがスムーズですね。
値段を尋ねにくい雰囲気なら予算を伝えて
また、ワンショットの値段を聞くのはどうでしょうか?
たしかに銀座や北新地などにある、お金を落としにいくのが目的のような店なら野暮かもしれません。でも、普通の街場のBARで値段を聞くのは、まったく問題ないと私は思っています。
うちでは、どんどん尋ねてもらってかまいませんよ。ただ、これは店によってわりと意見の分かれるところかもしれません。
初めての店でどうしても値段が気になるなら、一杯目をオーダーするときにだいたいの予算と杯数を伝えておくのもよいでしょう。
日本人の丁寧さが、銘酒を生んだ
日本のウイスキーの現況についてもお伺いしました。ここからはその模様をお届け。
日本のウイスキーについては、正直、値段が高くなりすぎたという印象は拭えません。特に海外では、いまだに高騰し続けている。でも少なくとも国内では、ジャパニーズというブランドだけで売れる時代は、もうあんまり長くないと私は考えています。
でも、良いものはもちろんある、と後藤さん。日本のウイスキーが、そこまで評価された理由は何なのでしょうか?
「やはり、日本人の丁寧さが、しかと表現されたクリエイションだったからでしょう。ブレンドの技術はよく言われることですが、酵母の使い分けだったり、時間と費用をかけるべきところに惜しまず注いできたのも奏功したんじゃないですかね。
目指してきたスコッチとの、品質の逆転
さかのぼると1920年代から、本格スコッチを目指してコツコツと研鑽を積んできた。その情熱が、80年代に花開くんですね。スコッチに匹敵するようなクオリティまで来た。
いっぽう本場スコットランドでは、ちょうどこの頃に粗悪品が横行したんです。日本とは真逆で、時短・ローコストでどんどん乱造した。つまり、ここでクオリティの逆転が起きたんです。
日本のウイスキーが急激に評価を伸ばしたのには、こうした背景もあったんですね。
一杯のウイスキーに込められたストーリーを、バーテンダーから聞きながら味わえるのもBARならではではないでしょうか?
日本のウイスキー おすすめの一本
最後に、そんな国産ウイスキーからおすすめをひとつ。
「2018年から製造を始めた新進の蒸留所ですが、バランスの取れた良品が多い」と後藤さん。ノンピートながら、樽の木の香りが、熟成の浅い原酒にキレイ乗っています。
下記のお店紹介も、ぜひともご一読くださいませ。
Bar Main Malt(バー・メインモルト) ~2,000本のコレクションを眺めつつ、グラスを傾ける至福~
お話を伺ったのはこの方!
国鉄勤務ののち、神戸三ノ宮の「BAR 崑崙〔こんろん〕」で5年間研鑽を重ねる。
1993年にBar Main Maltを開店。1995年の阪神淡路大震災でボトルを全て失うも、そこから着実にスコッチ、アイリッシュを軸に収集を続け、現在ではウイスキーコレクションは2,000本に至る。2023年7月でちょうどオープン30周年。
THE WHISKY HOOP〔ザ ウイスキー フープ〕主幹事。
ウイスキーってどんな酒?
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ロックでもソーダ割りでも好きな飲み方で、ラクに自分のペースで飲んで、明日からもがんばろう、って思える。それでいいんです。
いろんなウイスキーとの出会いを楽しみたいなら、『飲み方を揃える』ことをお勧めします。これまでに好んで飲まれてきたのがロックならロック、ソーダ割りならソーダ割りで、いろいろと比べてみてください。ウイスキーは、割り方によって味わいが大きく異なるので。
たとえばストレートで花の蜜のような甘みを感じたものが、ソーダ割りにすると桃や梨のようなフルーティーな香りだけ残ってすっきりと飲めたり。