ウイスキーってどんな酒? Vol.04 「ウイスキーの種類~モルト、グレーンetc.~」

ウイスキーの知識

ウイスキーってどんな酒? Vol.04 「ウイスキーの種類~モルト、グレーンetc.~」

今回はウイスキーの「種類」について。前回は「飲み方」によってウイスキーの幅広い楽しみ方を紹介しましたが、いよいよ、ウイスキーそのものの分類に迫っていきますよー!

 

モルトか、それ以外か

まずは過去記事(vol.2)のおさらいから。

ウイスキーの簡単な定義は、「主にモルト(麦芽)などの穀物を糖化、発酵させたのちに蒸留する。それを木樽で貯蔵熟成した酒」でした。そして、モルトだけを使用するウイスキーを「モルトウイスキー」と呼びます。いっぽう、トウモロコシやライ麦、小麦などの穀物をモルトに混ぜて造られるものを、「グレーンウイスキー」(grain 英語で穀物)と総称しています。

これが、ウイスキーの第一の分類法です。原材料については下記の記事にまとめているので、より詳しくはこちらをご覧くださいませ。

ウイスキーってどんな酒? Vol.02「原材料と熟成について」

単式蒸留か、連続式蒸留か

そして前回は話をわかりやすくするために、あえて省いていた要素があります。「蒸留に用いる機器の違い」です。

手間はかかるが個性豊かに

手間はかかるが個性豊かに

 

モルトウイスキーは、厳密には「モルトだけを原料に、“単式蒸留器”で蒸留したウイスキー」を指します。単式蒸留器は“ポットスチル”とも呼ばれ、写真のように、大きな壺もしくはやかんのような形をしています。ここにモルトを発酵させたあとのウォッシュ(もろみ)を入れて蒸留していくわけです。

しかし一度に抽出できるアルコールが限られているため、1回蒸留した液を、さらにもう1~2回蒸留することでアルコール度数を高めます。手間がかかり、大量生産には向きませんが、そのぶんアルコール以外の成分も含みこみながら蒸留が行なえるので、個性を表現しやすいという利点があります。

大量生産向きで安価に

大量生産向きで安価に

 

いっぽうグレーンウイスキーは、「モルトとそれ以外の穀物を原料に、“連続式蒸留機”で蒸留したウイスキー」のことを指します。連続式蒸留機は塔のような形をしており、その名の通り、連続して大量のウォッシュ(もろみ)を投入して蒸留することができます。短時間で多くのアルコールを抽出できるため、大量生産に向いた方式と言えるのです。

ただその反面、アルコール以外の成分が入り込みにくくなるので、クリアな味わいになりますが、蒸留工程では個性が表現しにくいという特徴を持っています。

ちなみに、原料にモルトだけを使っていても、連続蒸留機で蒸留を行なえばグレーンウイスキーと呼ばれることになります。

味わいを決定づける「ブレンド」

さらに、ウイスキーの味わいが決まる工程として欠かせないのが、蒸留からカスク(木樽)での熟成を経たあとに行なわれる「ブレンド」。ここでどのような混ぜ方をするのかによっても、ウイスキーの分類が分かれるのです。

“シングル”の意味にだまされない!

“シングル”の意味にだまされない!

 

「シングルモルト」という言葉を聞いたことはありませんか? ウイスキーでは頻出のワードなのですが、この“シングル”の意味、ちゃんと理解できていますか? モルトだけを使っているから、とか、ひとつの樽から瓶詰めされているから、など、意外と誤解を生みやすい表現だと筆者は思います。

この“シングル”って、実は「ひとつの蒸留所」という意味なんです。つまり、シングルモルトとは、「“ひとつの蒸留所”で造られた、“複数のモルト原酒”をブレンドして瓶詰めされたウイスキー」のことなんですね。ウイスキーは、蒸留のあとカスク(木樽)に移されて一般的に何年もの熟成を経るわけですが、その際にひと樽ごとの個体差が出やすいんです。

樽も木製ですからそれぞれ微妙に異なりますし、同じ蒸留所内の、少し違う場所に置くだけで味わいが変わるとも言われています。だから、同じ蒸留所内であっても、いくつもの樽から原酒を少しずつブレンドして瓶詰めすることで、銘柄の品質をブレないように確立しているんですよ。

ブレンデッド=複数の蒸留所

ブレンデッド=複数の蒸留所

 

周辺のいろんな用語が入りやすくなるので、上記のことはぜひとも知っておいてほしい大事なポイントです。原料にモルト以外の穀物を混ぜる、グレーンウイスキーも同様。「ひとつの蒸留所で造られた、複数のグレーン原酒をブレンドして瓶詰めしたもの」は、「シングルグレーン」と呼ばれます。

さらに付け加えると、複数の蒸留所のモルト原酒をブレンドしたものは「ブレンデッドモルト」。ジャパニーズウイスキーなどに多い「ブレンデッドウイスキー」とは、「複数の蒸留所のモルト原酒とグレーン原酒を、ブレンドして瓶詰めしたもの」ということになっています。

「シングルカスク」も存在する!

「シングルカスク」も存在する!

 

ここまで来ればもうひと息。がんばって!

先ほど、ひとつの蒸留所の複数の原酒をブレンドすると言いました。では、ひとつのカスク(木樽)のみから瓶詰めするウイスキーはないのか?――あるんです。これはまた別個に、「シングルカスク」と呼ばれています。ウイスキーは元々、複数のカスクの原酒をブレンドすることを前提にしているので、ひとつの樽だけを瓶詰めしたシングルカスクは、そのぶん稀少で高価なものになります。でも、ウイスキーはひと樽ごとに唯一無二の味になる、ということをダイレクトに感じることができますよ。

「ダブルカスク」というものも存在していて、これは二つの樽から瓶詰めしたもの。アメリカンオークとヨーロピアンオーク、というように樽そのものの種類を変えることで、味わいをより複雑で奥深くすることもあります。三つの樽から瓶詰めするなら、「トリプルカスク」です。

「カスクストレングス」と「カスクフィニッシュ」

“カスク”という言葉がつくウイスキーの分類について、あと二つだけ。

 

「カスクストレングス」と「カスクフィニッシュ」

カスクストレングス

実はウイスキーは樽から瓶詰めされる際、水を加えるのが一般的。しかしカスクストレングスには、この加水の工程がありません。喩えはアレですが、めんつゆの原液そのまま、みたいな感じですね。だからそのぶんアルコール度数も高いのですが、芳醇で濃厚な味わいがよりいっそう楽しめます。

ストレートの状態から少量ずつ水を足して、好みの濃さに調節する飲み方にも適しているんですよ。

カスクフィニッシュ

熟成した原酒を、別の樽に移して短期間熟成させます。たとえばワイン樽やビール樽に移して追加熟成することで、さらに風味などをプラスして奥深く変化させる、というわけ。

「年数」=熟成の最低年数

「年数」=熟成の最低年数

 

最後に、年数について。「山崎10年」とか、「ザ マッカラン12年」など、ウイスキーには年数が付いている銘柄も多いですよね? これは単に、10年間熟成しました、という意味ではなくて、「複数ブレンドした原酒のなかで、最も若い原酒の熟成年数」が記載されています。

年数の付いていない銘柄は「ノンエイジ」と呼ばれますが、これは何も、全く熟成させていないわけではありません。非常に短い熟成期間のものから、長い熟成を経たものまで、幅広い原酒をブレンドしているため、年数を表記していないのです。比較的安価で、ブレンダーの技術によりバランス良く仕上げられているものが多いので、初心者はノンエイジからトライしてみるのがいいかもしれません。

次回は「製造工程」をざくっと解説!

今回はここまで。情報量が多く、お疲れの方もいらっしゃるかもしれませんが、「ウイスキーは、樽で熟成された複数の原酒をブレンドして瓶詰めされる」ということだけでもぜひ覚えておいてくださいね。次回はいよいよ、「ウイスキーの製造工程」に移っていきます。ここまで続けて読んでいただいていれば、ぐっと理解しやすくなると思います。おそれずに進みましょう!

 
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