ウイスキーってどんな酒? Vol.02「原材料と熟成について」

ウイスキーの知識

ウイスキーってどんな酒? Vol.02「原材料と熟成について」

前回は、「ウイスキーは蒸留酒である」という、基本のさらに手前のお話をしました。この「蒸留酒」とは何なのかをちゃんと理解しておかないと、ウイスキーはただアルコール度数が高く刺激の強い酒に思えてしまうかもしれないからです。

採用されている工程や原材料がどんなもので、なぜそれである必要があるのか。意図や理由がわかると、なにげなく飲んでいたお酒の味わいが、ぐっと深みを増すものだと思います。

第二回は「ウイスキーの原材料について」。原材料は、「穀物・酵母・水」の三つが基本です。さらにウイスキーに欠かせない「熟成」についても簡単に解説しますよ。

 

穀物の種類で二つに大別

モルトだけか、それ以外を混ぜるのか

モルトだけか、それ以外を混ぜるか

 

ウイスキーを簡単に定義すると、「主にモルト(麦芽)などの穀物を糖化、発酵させたのちに蒸留する。それを木樽で貯蔵熟成した酒」であるというところまで、前回はお話ししました。

まずはこの“穀物”なのですが、「モルト(麦芽)」だけで造られるウイスキーを、「モルトウイスキー」と呼びます。穀物はそのほか、トウモロコシやライ麦、小麦などが使われることがあり、これらとモルト(麦芽)を混ぜて造るウイスキーを、「グレーンウイスキー」と言います。モルト(麦芽)だけで造るのか、そのほかの穀物を混ぜるのか。これで、ウイスキーの大きな区分がまず決まるんです。

「モルト」が、ウイスキー用語の第一歩

「モルト」が、ウイスキー用語の第一歩

 

ところで、先ほどから“モルト(麦芽)”という表記を繰り返していますが、そもそもモルト(麦芽)とは、「収穫した麦を水に浸すなどして発芽させたもの」を指します。このモルト(麦芽)、どこかで見たような気がしませんか? ――そう、ビールですね。

ビールでは“麦芽”と“モルト”という表記の両方が使われますが、ウイスキーにおいては“モルト”という呼称を用いることが圧倒的に多いです。「モルトとは麦を発芽させた、つまり麦芽のことである」。これが、ウイスキーの専門用語に慣れる第一歩だと思います。ウイスキーには、麦芽のなかでももっぱら「大麦麦芽」が採用されます。

「酵母」の“発酵”がアルコールを生み出す

「酵母」の“発酵”がアルコールを生み出す

 

次に必要不可欠なのが、「酵母」。カビやキノコと同じ菌類に属する微生物です。これが、モルト(麦芽)の糖を食べてアルコールと炭酸ガスを生成することを、「発酵」と呼びます。酵母にはさまざまな種類があり、ウイスキーの味わいのベースとなる穀物との相性によっても、風味などに違いが出るんですよ。

「水」のミネラル分が酵母の栄養になる

「水」のミネラル分が酵母の栄養になる

 

蒸留をして純度の高いアルコールを取り出すとはいえ、水は何でもいいわけではもちろんありません。酵母は、モルト(麦芽)と水を合わせ抽出した「麦汁」に投入されることで発酵を起こします。その際、特に天然水にバランスよく含まれた“ミネラル分”が、酵母の栄養となるのです。

「カスク(木樽)」での「熟成」が鍵

カスク(木樽)も重要ワード

カスク(木樽)も重要ワード

 

最後にもう一つ。原材料ではありませんが、ウイスキーをウイスキーたらしめている「熟成」に欠かせないカスク(木樽)についても少しだけ解説しておきましょう。カスク(木樽)という言葉も、“シングルカスク”“カスクストレングス”といったような形で頻繁に登場するので、覚えておくといいワードです。

蒸留したての蒸留液(ニューポット)は無色透明で、荒々しく尖った味わいの酒。樽に詰めて熟成させることではじめて、お馴染みの琥珀色で色で、風味豊かな酒に仕上がるのです。ウイスキーの銘柄には“山崎10年”のように年数が付いていることが多いですが、これがカスク(木樽)のなかでの熟成期間になるわけです。この熟成の工程が、味わい全体の実に5割から7割を決定するとも言われているんですよ。

ちなみに熟成期間は、長ければ長いほど良いというわけでもありません。銘柄や熟成させる場所にもよりますが、一般的には10~20年でピークを迎えると言われ、25~30年を超えると劣化が始まります

樽の種類はさまざま

樽の種類はさまざま

 

ひと口に木製の樽、と言ってもその種類はさまざま。ここにもひとつ落とし穴があって、実は樽に使われる材木は、全て「オーク材」なんですね。オークの木は、日本では“ナラの木”とも呼ばれる広葉樹です。もちろん、ホワイトオーク、ヨーロピアンオークというように、オーク材自体の種類が、味わいにも影響します

「何に使われていたのか」が重要

「何に使われていたのか」が重要

 

もう一つ、味わいを左右する大きな要因があって、それはどういった材質かではなく、「どのような酒を熟成・保管したあとの樽なのか」ということ。つまりウイスキーの熟成には、「中古の樽」を使うことも多いんです。

新品の樽を使うと材木の特徴をストレートに移し取ることができ、実際アメリカのバーボンウイスキーは、新樽を採用しなければいけないという決まりがあります。一方、ほかの酒が入っていた樽を使うと、木の香りがマイルドになるだけでなく、元々入っていたお酒の風味や甘みなどもプラスされて、より複雑な味わいが生まれるんです。

 

酒精強化ワインである“シェリー酒”

 

たとえば、アルコール度数を強めた酒精強化ワインである“シェリー酒”の熟成に使用した「シェリー樽」は伝統的かつ人気の高い樽です。バーボンウイスキーを熟成した樽をほかの種類に転用したり、ワインやビールを入れていた樽を使うことだってあるんですよ。しかも、酒の種類だけでなく銘柄によっても違った影響が出るので、木樽の種類は世界中で100を超えると言われています。

ウイスキーの飲み方は「9種類」もある!

ウイスキーって一体何なのか? という基礎中の基礎の解説はいったんここまで。ほかにも”ピート”や“ブレンド”など味わいにかかわる要素はありますが、「モルトをはじめ穀物がベースになり、カスクでの熟成が味わいの大枠を決める」という認識でひとまずは良いでしょう。

 

ウイスキーの飲み方は「9種類」もある!

 

初心者の方は、ハイボールしか飲んだことない方もおそらく多いと思うので、とにかくまずは飲んでみましょう!ウイスキーがある程度揃っているバーなどで、気になったものをオーダーするのももちろんありですが、まずはリーズナブルな銘柄を一本買ってみるのはどうでしょうか?

次回は、初心者におすすめしたいはじめの一本の選び方と、「飲み方9種類」を解説します。そう、ウイスキーの飲み方って、9種類もあるんですよ!

 
ウイスキーってどんな酒?

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