ウイスキーってどんな酒? Vol.12 「ジャパニーズウイスキー その② ~日本の蒸留所紹介~」
ウイスキーの知識
今回は、ジャパニーズウイスキーの蒸留所紹介。前回の記事をまだご覧いただいていない方は、ぜひ合わせて読んでみてくださいね。
ウイスキーってどんな酒? Vol.11 「ジャパニーズウイスキー その① ~スコッチをさらに繊細かつ複雑に~」
ここでは便宜上、「ジャパニーズウイスキー」としてひとまとめにしてありますが、前回解説した通り、“ジャパニーズウイスキー”はあくまで粗悪品と混同されることを避けるための自主基準なので、この基準に収まらない名酒も数多くあります。
それらも、一緒にご紹介していくことを補足しておきます。
1. サントリー
日本のウイスキーの草分けにして、トップシェアを走り続ける最大手。下記でご紹介していきますが、“一度は見聞きしたことがある”というウイスキーは、サントリー製のものが多いのではないでしょうか。2014年には、「ジムビーム」でお馴染みのアメリカンウイスキー最大手の「ビーム社」を買収し、売上高が世界第三位となりました。
- サントリー 山崎
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多種多様な熟成樽、ポットスチル(単式蒸留器)、酵母を備えており、その潤沢な設備は世界有数と言われるほど。
「シングルモルト山崎(ノンエイジ)」は、クセが少なく飲みやすいのに、風味が複雑で、ボディ感もリッチ――まさに、「ジャパニーズの理想形」と賞されるのもうなずける味わいです。
- サントリー 白州
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甲斐駒ヶ岳のふもとに立地。広大な森と南アルプスの良水など自然に恵まれていることから、「森の蒸留所」とも呼ばれています。
清々しく軽快な味わいに、かすかにピートが香るシングルモルトは、白州ならではと言えるでしょう。お店ではソーダ割りがよく推されていますが、もちろんロックでもOK。
- サントリー 響
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蒸留所の名前ではありませんが、山崎と白州をキーモルト(=ブレンドの核)にしたブレンデッドウイスキー。
花やフルーツ、クリームといった複雑な香りと味わいが、穏やかに重なるさまは「芳醇」という言葉を体現しているかのよう。ジャパニーズブレンデッドの入門編としてぜひ。ストレートやロック、ソーダ割りをはじめ、お湯割りにするのもオツです。
- サントリー 知多
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サントリーのブレンデッドを支える、グレーンウイスキー蒸留所。2015年にはシングルグレーン「知多」を発表しました。
3タイプの原酒を、多彩な樽で熟成させ個性を持たせてから、ヴァッティングする手の込んだ逸品です。爽やかでピュアな味わいを、ぜひ“風香るハイボール”で味わってみてください。
2. ニッカウヰスキー
“マッサン”こと竹鶴政孝が、サントリーの前身である「寿屋〔ことぶきや〕」から独立して開業。サントリーに次ぐ、日本のウイスキーと言えばここ!という大企業です。余市蒸留所の石炭直火蒸留をはじめ伝統的な手法を守りながら、スコッチを色濃く踏襲したスタイルが特徴。2001年からは、アサヒビールの100%子会社になっています。
- ニッカウヰスキー 余市
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スコットランドに似た、冷涼で湿潤な気候。世界的にも稀少な石炭直火蒸留が、コクのあるフレーバーを生み出します。
バーボン樽、シェリー樽、新樽を巧みに使い分けた熟成とブレンドも、まさに職人のなせる技。ピートとスパイスが香るリッチな飲み口は、シングルモルト入門としてもおすすめです。
- ニッカウヰスキー 宮城峡
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伝統的な「カフェ式連続式蒸留機」を持つ稀有な存在。原料由来の成分を残しやすいこの連続式蒸留機を用いて、モルト100%で造った「ニッカ カフェモルト」は世界的にも珍しい逸品です。
フラッグシップの「シングルモルト宮城峡」は、力強い余市に比べると、軽やかかつスイート。ちなみに、余市と宮城峡の原酒を混ぜたブレンデッドモルトが、「竹鶴」です。
3. その他の企業・蒸留所
日本のウイスキーの二大企業は上記の2社ですが、そのほかにも世界的に注目される蒸留所はたくさんあります。ここではその一部をご紹介。
- キリンシーグラム 富士
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現在はキリンホールディングスが所有。元々はカナダ&アメリカのシーグラム社、スコットランドのシーバスブラザーズ社の3社合同出資で立ち上げられた蒸留所で、海外のノウハウや技術が今も息づいています。
富士山の伏流水を使い仕上げられる「富士」は、澄んだ味わいの奥に広がる、スイートな樽香が持ち味です。看板銘柄がシングルグレーンウイスキーなのも、珍しいポイント。
- ベンチャーウイスキー イチローズモルト
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「イチローズモルト」の名を世界に轟かせる。2004年創業ながら、今や日本のクラフトウイスキーの代名詞的存在です。
稀少なミズナラ材を使ったオリジナルの樽や、世界唯一と言われるミズナラ材の発酵槽など、独創的な取り組みが光ります。
定番の「リーフラベルシリーズ」のほか、限定品やコラボ商品を合わせると、銘柄数は100種類にのぼるのだとか。プレミア価格が付いているものもあるので、まずはブレンデッドウイスキーのホワイトラベルから試してみてはいかがでしょう?
- 長濱浪漫ビール アマハガン
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蒸留所は日本最小規模ながら、海外から買い付ける原酒をベースに自社の原酒を合わせたブレンデッドシリーズ「アマハガン」が人気を博しています。
“国産”へのこだわりが強いジャパニーズウイスキーの自主基準に入らなくても、良質な銘柄があるということを体現しているシリーズと言えるでしょう。
麦芽由来のまろやかさにフルーティーな味わいなどが複雑に絡む、ブレンドの妙をぜひとも体感して。
次回は、「ウイスキーを楽しむちょっとしたコツ」!
実際に飲んだことがある銘柄でも、その背景を知れば味わいがいっそう深くなるのではないでしょうか? とにかく、飲んだことがない銘柄にどんどんチャレンジしてみることが、好みの味に出会い、世界を拡げる一番の近道だと思います。
そういうわけで次回は、少しでも多くの銘柄を楽しむためのコツや、敷居が高いと思われがちなBARでウイスキーを楽しむために、初心者が知っておくと役立つことをまとめます!
ウイスキーってどんな酒?
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