ビールってどんな酒? Vol.10 「ビア・テイスティング ~味わい方について~」

ビールの知識

ビールってどんな酒? Vol.10 「ビア・テイスティング ~味わい方について~」

この連載も、10回目を迎えました。

今回はビア・テイスティング。どのようにすればビールをより深く味わえるのか、その方法をご紹介します。日本では特に「喉で飲む」、つまり喉目がけて一気に流し込むようにグビグビ飲むイメージが強いですが、まずここから離れることが、ビールの新しい魅力を発見する第一歩だと思います。

 

テイスティングの準備二カ条

それではさっそく、具体的な方法を解説していきましょう! でもその前に少しだけ、家飲みでしっかりとテイスティングを楽しむためのポイントを二つおさえておきます。

一.グラスは「飲み口がすぼまった」ものがおすすめ

グラスは「飲み口がすぼまった」ものがおすすめ

 

写真のようなチューリップ型のグラスがあれば理想。シャンパングラスや、ワイングラスも代用可能です。飲み口が上にいくにつれ開いているよりは、底や中央に比べてちょっと狭くなった形状のものをできるだけ選びましょう。香気が凝縮されて上がってくるので、匂いを感じやすくなります。

二.適温は「冷たすぎない」くらい

エールビールの飲み頃は8~13℃。冷蔵庫で良く冷やしてから出し、室温で3~4分ほど放置してからグラスに注ぐ、というのをだいたいの目安に、銘柄や季節により加減してもらうとよいでしょう。ちなみにラガーの適温は6~8℃。いずれにしても、「キンッキンに冷えてる」という状態は、ビールの香り・味わいが最も花開く温度ではないんです。まあ、とにかく冷えたビールを流し込みたい、ということもありますけどね。

エール、ラガーってそもそも何? という方は、ぜひこちらの記事も読んでみてください。

 

ビールってどんな酒? vol.03 「ビアスタイルって何?」

テイスティングの実践4ステップ

テイスティングの実践4ステップ

①見る

そう、見るんです。ジョッキに注がれた生ビールに慣れ親しんでいる人は、外観をまじまじと確かめる、なんてしたことないんじゃないでしょうか。日本のラガーはほとんど同じビジュアルですしね。

でも、見た目から推測できる情報は案外多いんです。第一に色合いですが、いつものラガーを黄金色だとすると、それより薄い黄金色ならすっきりして飲みやすそうだな、とか。逆に色が濃くなって茶褐色だとエール系のしっかりとした味わいなのかな、などなど。いろいろなビアスタイルを飲んでいくうちに、外観からもどんどん想像は膨らむものです。

そして第二に泡の立ち方。シュワシュワーッと泡が盛り上がるものだけでなく、ピチピチと表面に波立つようだったり、薄い膜が広がるようでほとんど発泡しないビールだってあるんです。泡立ちを見ると、発泡による刺激の強さがかなり精確にわかるんですよ。

②匂いをかぐ

匂いをかぐ

 

次はグラスに鼻を近づけて匂いを楽しむ。これも、ほとんどやったことがない人は多いんじゃないでしょうか。これもラガー系より、エール系のほうがはっきりと感じることができます。

たとえばIPAは、グレープフルーツやオレンジのような柑橘系のアロマが特徴的なものが多いですし、白ビールのヴァイツェンは、バナナのような香りと表現されます。なかでも、桃やさくらんぼなど副原料にさまざまな果物を用いたフルーツビールは、特に匂いが際立って感じられるはずです。

③口のなかで味わう

口のなかで味わう

 

さあ、いよいよ飲みます! ここでのポイントは、「すぐに飲み下さない」こと。行程を4つに分けて順番にご説明しましょう。

A.発泡と質感(ボディ)を感じる

ビールが口のなかに入るとまず感じられるのは、炭酸の刺激、つまり発泡性であることが多いです。次いで、舌の上にまったりと広がったり、逆にすっきりとするような清涼感があったりという、いわゆる「ボディ(厚み)」が感じられるでしょう。つまり、「触覚」からの情報にもぜひ気を配ってみてください。

B.舌の上で転がしてみる

口のなかに含んだままで2~3秒ほど、舌を少し上下に動かしてみてください。ビールを2、3度、ゆっくり噛みしめるようなイメージでもよいでしょう。そうすることで、甘みや苦みをより味わうことができます。

同時に鼻から息をゆっくりと抜くと、②で匂ったときとはまた印象が違う香りが楽しめるはず。これを、香りのなかでも「風味」や「フレーバー」と分けて呼んでいるというわけ。鼻に近づけて上がってくるのは、「香気・芳香」や「アロマ」と呼ばれています。

C.「喉ごし」を感じる

「喉ごし」を感じる

 

そして飲み下します。このときには、喉の上のほう(喉ちんこのあたり)に当てる感覚で飲み込むと、風味の余韻をしっかりと拾うことができるでしょう。

D.「余韻」も堪能して

どんどんグラスを口に運ぶではなく、飲み下したあと、口のなかに残ったフレーバーや、甘み、苦みなどの余韻にも感覚を向けてみてください。スッと引いていくキレのよいものから、じんわりと徐々に引いていくものまで、ここにも銘柄の個性が表れます。

「意外性」もビールの楽しさ

「意外性」もビールの楽しさ

①や②で立てた予想が、実際に飲んでみると“裏切られること”も、ビールの楽しさのひとつなのかな、と個人的には思っています。

これまで何度か書いてきたように、ビアスタイルはほとんど作り手の自己申告なので、そのスタイル名からは想像もつかなかったような味わいに出会うこともままあるのです。

ビールの色については、実は麦芽の焙煎度合いで決まる部分が大きいので、例えばものすごくクリアな味わいの黒ビール、などもありえます。あとは、ラベルや名前は派手なのに思ったよりやさしい味、というのもわりとよく出会います。

自分自身の感じ方が一番!

自分自身の感じ方が一番!

 

いかがでしたか? テイスティングというと、「夕暮れ時の小麦畑で収穫をする風景が~」など、比喩や描写を目一杯使って表現しないといけない、みたいなイメージがあった方もいらっしゃるかもしれません。

でも、そんなに難しく考える必要はまったくなくて、これまでよりも味や香りに注意深くなることで、新しい楽しみが拓けることが、テイスティングなんです。だから、他人と優劣を比べるものではなくて、自分の世界を拡げ充実させていくものなんですね。ラベルやメニューに書かれている説明と自分の感じ方がたとえ違っても、それもまた先述の“意外性”として楽しめばいいのです。

とにかくビールの良いところは「自由である」こと! 次回からはいよいよ「ビールってどんな酒?」第一部の最終章、「クラフトビールとは」に入ります。どんなところで買える・飲めるのか、という情報もセットでお届けしますので、もうしばしお付き合いのほど、よろしくお願いします!
 

ビールってどんな酒?

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