8年の眠りから覚めた老舗の1杯…。長野県「山三酒造」が醸す4銘柄の魅力とは?

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8年の眠りから覚めた老舗の1杯…。長野県「山三酒造」が醸す4銘柄の魅力とは?

広大な自然と豊かな水源を持つ長野県。ここでは、全国屈指の酒どころである新潟県にも引けを取らない、上質な日本酒が製造されています。そんな長野県で、約8年の休業を経て、2023年より復活した酒蔵があることをご存じでしょうか。

その名も「山三酒造」。2015年から休眠状態であった酒蔵ですが、もともとは150年以上の歴史を持った老舗とされていました。本記事では、8年の眠りから覚めた山三酒造に注目して、酒造りのこだわりや新たに誕生した4つの銘柄について紹介します。

 

山三酒造とは?

山三酒造とは?

 

山三酒造は、日本酒の蔵元として1867年に信州上田で誕生しました。2015年以来、休業状態にありましたが、2023年2月から日本酒の醸造を再開しました。

地元に深く根付き、原材料であるお米や水にこだわり、伝統と新しいアイデアを融合させた、魅力的な日本酒の製造に挑戦しています。

酒蔵の歴史

山三酒造は1867年に、信州上田で設立された酒蔵です。150年以上の歴史を持つ酒蔵ですが、2015年から自家醸造を一時中断していました。しかし休業から8年が経った2023年、同酒蔵は再び、酒造りを開始しました。

酒造りのこだわり

山三酒造における酒造りのこだわりを「水」「米」「製造過程」の3つに焦点を当てて解説します。

まずは「水」へのこだわりから説明します。言うまでもなく日本酒は、美しい水を使うほど上質な仕上がりになります。山三酒造で醸すお酒には、獨鈷山の雪解け水を使用。自然のフィルターを通して磨かれた雪解け水を使うことで、お米の香りと豊かな風味を感じられる日本酒に仕上がります。繊細で雑味のないスッキリとした味わいは、この水が支えているといっても過言ではありません。

次に「米」。山三酒造は長野県東御市の八重原地区に位置する酒蔵です。このエリアは日照時間が長く、地力の強い粘土質の土壌を持ちます。また標高700メートルの日較差があることもポイントです。山三酒造は、米の生産に適した地形を活用して、酒造好適米を栽培しています。

最後に「製造過程」のこだわりについて解説します。前述したように、山三酒造では地元長野県八重原の米を使用しています。小仕込みの吟醸酒を製造しており、全量一切加水しません(原酒)。お酒を味わうため、品質を重視し、原料から水質までを丁寧に管理することにこだわっています。

長野県ってどんなところ?

長野県ってどんなところ?

 

長野県は、日本酒の製造数において全国2位を誇ります。新潟に次ぐ「酒どころ」として知られるエリアです。長野県が日本酒造りにおいて、理想的な土地である理由は、良好な自然環境と豊かな資源によるものです。豊かな資源としてまず挙げられるのが「水」です。水の品質こそが日本酒の品質に大きな影響を与えることは、日本酒ファンの間では周知のことでしょう。

長野県は高い山々に囲まれ、これらの山々で積もる雪がゆっくりと土地に浸透します。そして滑らかな地下水に変わっていきます。自然の恩恵によって供給される優れた水が、長野県で醸される日本酒の味わいを支えているのです。

 

長野県のお酒について、もっとよく知りたいという方は、以下の記事もご覧ください。

大自然の富を活かした長野県の日本酒とは。おすすめ銘柄5選!

山三酒造が醸す4銘柄を一気に紹介

8年の休眠期間を経て、酒造りが再開した山三酒造。2023年より、同酒蔵から誕生したお酒は、以下の4種類です。

本章では、4つすべてを試飲した筆者の感想をお伝えしようと思います。

山三 紫翠(しすい)

山三 紫翠(しすい)

 

山三酒造が醸す銘柄として、もっとも新しいお酒が、山三シリーズの「紫翠」です(2023年10月時点)。限定1,000本弱とたいへん希少な「紫翠」は、山田錦を39%まで磨き上げた1本です。香り高く、豊かな甘みがどこまでも広がります。

栓を開けるとポンッと弾ける、1本です。さっそく飲んでみると、確かなガス感がありつつ、ややとろみが感じられるため、口当たりはどこかまろやかです。全体を通してかなりフルーティーであることから、筆者は女性にこそおすすめしたい日本酒だと感じました。ガス感と相まって、まるでスパークリングワインを飲んでいるような感覚を楽しめます。

今回試飲した4種の中で、もっとも豊かな甘みを感じた1杯でしたが、キレが良く爽やかな余韻が残ります。クリアですっきりとした後味でありながらも、飲み応えは申し分ありません。

山三 山霞(やまかすみ)

山三 山霞(やまかすみ)

 

山恵錦を使用した「山霞(やまかすみ)」は、うすにごりの日本酒です。紫翠と比較すると、香りはやや控えめ。全体を通して、バランス型のお酒という印象でした。

ガス感はあるものの、こちらも主張は強くありません。食事とのバランスを考える「食中酒」としては、筆者が4種の中でもっともおすすめしたい1本です。

山三 初雪(はつゆき)

山三 初雪(はつゆき)

 

「初雪」もまた、うすにごりの日本酒です。山霞と同程度のガス感があることや、サラサラとした口当たりが印象的でした。

4種の中では比較的、強めの酸味が感じられることも「初雪」の特徴でしょう。シンシンと降り積もる雪や透き通った冬の空気を、味覚から思い出させる味わいです。しかし清涼感のある風味の中にも、柔らかな甘みがあります。精米歩合60%とは思えない爽やかさと、米の甘みが共存した1杯でした。

真田六文銭 初陣(さなだろくもんせん ういじん)

真田六文銭 初陣(さなだろくもんせん ういじん)

 

山三酒造が復活して、一番初めに作られたのが「真田六文銭 初陣」です。「7号酵母」を用いた、こちらの純米酒は、どこまでも穏やかな酒質。よく熟した梨を思わせる香りや、瑞々しい酸味が特徴です。

この酸味がお酒全体の風味を引き締めており、甘さの中に爽快感を実現しています。ただし、時間の経過とともにこの酸味は薄れ、代わりに甘さが顔を出します。その変化を、ゆっくりと味わうのもまた楽しい1本です。

山三酒造のお酒はどこで購入できる?

山三酒造が醸す4つの銘柄は、いずれも県外では容易に入手できるお酒ではありません。大量生産をしないため、流通数が限られていることが要因です。

現時点では、長野県の特約店を中心に販売しています。東京都では、小山商店をはじめとした一部の酒屋ならば入手可能です。また、北海道や栃木県の一部酒屋でも販売しているため、気になった方はぜひ購入してみてください。

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