サラリーマンと醸造家を両立!家族と看板を未来に繋ぐ。 ~静岡県 池田屋麦酒~

酒造・メーカー紹介

サラリーマンと醸造家を両立!家族と看板を未来に繋ぐ。 ~静岡県 池田屋麦酒~

牧之原台地に広がる壮大な茶畑の景色に圧倒されながらも、相良サンビーチまで足を伸ばせばマリンスポーツを楽しめるのが静岡県牧之原市。海沿いを走る国道150号線から内陸側に入った商店街沿いに佇むのが明治4年から小売酒店を営んできた池田屋酒店です。

古くからこの場所で、家族と共に酒屋経営を行ってきた長い歴史があります。高齢のご両親が営む酒店の存続や家業を継ぐことへの抵抗感に悩みながらも、ご主人と二人三脚でビール造りを始めた代表取締社長役兼醸造長の月居麻水さんにお話を伺いました。

 

代表取締役社長 兼 醸造長:月居麻水さん

代表取締役社長 兼 醸造長:月居麻水さん

 

歴史を重んじる家業と自分の人生の狭間

池田屋麦酒外観

 

月居代表

私と妹がお嫁に出てしまい、10年前くらいからもう酒屋を閉めようかと。そう考えた時にもう少し何かできないかなと漠然とした思いがあって。これまでは、婿を取って酒屋を継ぐことと育てられてきたんです。

自営業のお子さんあるあるなんですけど嫌なんですよ、家を継ぐのって。レールを決められている感やちょっとした反抗心。就職先が決まっている安心感もあるけれど、やらなきゃならないという変な使命感がありました。

夫婦共通の趣味が道をひらく!

夫婦共通の趣味が道をひらく!

 

大学卒業後、製薬会社の正社員を経て、現在銀行で派遣社員として働く月居代表。様々な思いを抱えながらも、ご主人との共通の趣味が新しい可能性を生み出すきっかけとなります。

 

月居代表

夫と2人の趣味がお酒の工場巡りなんです。ウイスキーが多かったのですが、お酒全般的に足を運びました。AOI BREWINGやBarid Breweryへ行った時に、小さい機械がいっぱいあって、もしかしたら店の中でできるのではないか!と安易に思いました笑

省スペースのブルワリーを目指す

工房内

 

その後、改装した酒屋で半分は売り場と角打ち、半分のスペースをクラフトビール造りに使わせてもらう承諾を得たとのこと。まさに一瞬の閃きで、小さなブルワリーを始めようと免許の申請から工房作りまで試行錯誤を繰り返します。

 

月居代表

このスペースでクラフトビールを造れるかというのを5、6年くらい調べたかな。免許制なので国税庁に申請するんですが、うまくいかなくって時間が掛かって。そんな時、たまたま東京に小さいブルワリーとビールの造り方を教えてくださる羽田麦酒さんにお世話になったんです。

2019年に会社を設立。設備を準備して2020年6月からビールを造り始めました。歴史があるお店なので、ここを何とか続けられる方法を考えた時に、買ってきて売るというスタイルから造って売るというスタイルにしていけたらと思ったんです。

家族のバランスを保つサラリーマンと醸造家の合わせ技

仕込み中

 

就職や結婚を機に地元を離れた生活を送ることで気持ちの整理をつけながら、改めて店仕舞いを考える高齢のご両親の身を案じた月居代表。サラリーマンとして銀行勤めと並行しつつ、ビール造りができないかと模索します。

 

月居代表

羽田さんが週末だけ造ればいいじゃないとプランを考えてくれました。週末はここに来て、平日は銀行で仕事をする。それでやってみようかと。どっぷりここに浸からず、段階的に家を継ぐっていう風に冷静に継ぐことを考えることができたかなという気がします。

大切な夫婦の時間を穏やかに‥

大切な夫婦の時間を穏やかに‥

 

ご主人も平日SEの仕事をしながらビール造りを手伝う醸造家。生活も仕事も、夫婦で長い時間を共有するためのコツをお伺いしました。

 

月居代表

うちは多分、割と会社っぽい。仕事の会話は線引きができていて、元々喧嘩しないんです。意見の食い違いはありますが、意見を言い合って妥協点を考える。頭にキタ時はちょっと黙ります笑。時間をかけて解決しますね。夫婦の会話は仕事の話が大半を占めます。

平日とか週末とかもほぼ仕事の話をしているので、まとめて旅行に行くようにしています。多少、仕事の話が無くなる。でも、結局そこに行って、そこのクラフトビールを飲むんですよ笑。一応場所を変えて、仕事じゃない環境に行くっていうのが大事かなと。

飲み進めたくなるようなビール造り

店内モニター

 

ずっと一緒に働いてきたご両親の姿を尊敬しながら、素敵な距離感を保っている月居ご夫妻。ふたりで目指すビールの形や味わいについてお聞きします。

尖ったのものは造らない。晩酌に向くとか、日常生活の中に入ってもらいたい。特別な日にも飲んでもらいたいけれど、特別じゃない日にも飲んでもらえるポジションにいたいですね。苦味控えめとか渋みも抑えてなど意識して造っています。

牧之原えーるとしての役割

アメコミ風ポスター

 

副原料を使うときは地元のものや地域のものなどを使うようにしているとのこと。また、定番ラインアップの牧之原えーる命名の由来は、牧之原で造るエールビールという意味。牧之原の大地が育む大井川水系の水を使うことにプライドをかけていらっしゃいます。

 

月居代表

コロナの発症と会社設立が同時期だったため、牧之原頑張れのエールに読み替えてくださる方が多くて、牧之原頑張れの意味で取っていただけてもいいよねと。牧之原の名前がビールと一緒に広がっていってくれたらと思って造っています。

角打ちと合わせて楽しみたい週一の飲み放題

店内スペース

 

藤枝市や遠くは愛知県から足を運んでくださるお客様も多い池田屋麦酒。酒店の角打ちはもちろんのこと、毎週水曜日は2時間2000円で飲み放題も楽しめます。おつまみには、常設のポップコーンマシーンやたまに登場するお母様のおでんも楽しみの一つです。

 

月居代表

ふらりと立ち寄ってビール一杯飲んで帰るというスタイルを作りたい。どっか行く前に飲むような、ハイテーブルで立ち飲みとか。若い子でも立ち寄れるようにしたいなぁと思っている。やりたいことはたくさんあるので、少しずつやっていければ良いかなぁと思っています。

醸造長が伝えるペアリングフード

醸造長が伝えるペアリングフード

 

月居代表

川根本町ゆずビールは唐揚げと焼き鳥!時々造るHazyは、マンゴーや杏とかのドライフルーツと合うんです。ペールエールはオールマイティ。それと、この時期はおでん。食事と一緒がスタンスなので。個性的すぎないビールだから一緒に飲めるんです。

おすすめは、北海道の白糠酪恵舎のチーズです。熟成していてもフレッシュなミルク感がある。タイミングが合えば食べられますよ。

守りたいもの、チャレンジしたいこと

看板

 

月居代表

家族で頑張る!頑張れる限り頑張る。この場所で造ることを頑張りたいし、丁寧に造りたい。これは絶対譲らない。

チャレンジは、タップルームを作りたいですね!小さくていいので、カウンター3人くらいしか入れないような一人で回せるぐらいのスペース。近々の目標は、色んなイベントに出ることかな。細々といきたいなぁと思います。

池田屋麦酒王道のラインアップ4種

牧之原エール団

 

4種類ある牧之原えーるは、牧之原エール団と呼ばれる秘密結社がモチーフのラベル。ツッキー(月居代表)総帥が部下4人を引き連れて、昼夜問わず日々ひっそりと牧之原とビールを広める活動をしているという楽しい設定。自分だけのお好みが見つかるかも知れませんよ。

サラリーマンと醸造家を両立!家族と看板を未来に繋ぐ。 ~静岡県 池田屋麦酒~

Tags

シェアする
前の記事

オーダーメイド酒造りやグローバル★酒蔵当主の想いがほとばしる!「SAKEから観光立国」

”来て、見て、呑んで、巡る” 吉乃川「蔵開き 2024」2024年4月20日(土) 開催!

次の記事