焼酎ってどんな酒? Vol.05 「麹について ~焼酎の頻出キーワードとともに~」
焼酎の知識
前回の予告通り、今回は「麹〔こうじ〕」を扱います。焼酎や日本酒に使われる麹は、黒・白・黄という3種類に大別されるんです。この3つさえ覚えてしまえば、酒選びにまたひとつ指標が加わって、酒瓶を眺めたりメニューを選ぶのがぐっと楽しくなると思いますよ?
後半では、“原酒” “熟成”といった、焼酎の商品名に登場しやすいキーワードも併せて解説します!
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黒・白麹が主流。近年は黄麹にも熱視線
まず、麹と酵母がそもそも何なのかよくわからん、という方もけっこういらっしゃると思います。
焼酎における麹と酵母は、日本酒と通じる部分が非常に大きいので、ぜひ、下記の記事のラスト付近を先にご覧いただいてから、読み進めていただければ幸いです。
そんなわけで本題!3種類の麹の特徴を、それぞれ下記にまとめました。酵母は、焼酎においては商品名やラベルに表記されることがさほど多くないので、今回は割愛します。
黒麹(菌)~どっしりと力強い味わいに~
泡盛に用いられる麹が発祥で、泡盛は焼酎の元祖。つまり、焼酎の歴史は黒麹とともに始まったと言ってよいでしょう。生育しやすく、副産物としてクエン酸を多く生み出すので、ほかの雑菌の繁殖を防いでくれる効果もあるんですよ。
しっかり濃厚で、芳醇な香りに仕上げるのに向いています。いっぽうで辛口な印象や後味のキレも併せ持っているのは、先述のクエン酸の酸味によるものだと言われています。
泡盛だけでなく、さつまいもの重厚感とマッチするので芋焼酎にも多く採用されます。
白麹(菌)~すっきりとマイルドに~
黒麹から、突然変異で生まれたのが白麹。もともとは、偶然の産物だったんですね。黒麹と同じく、クエン酸を多く生成するなど、扱いやすい麹のひとつです。焼酎の大半には、白か黒いずれかの麹が用いられます。
黒麹よりも、マイルドな味わいが特徴。口当たりも穏やかで、すっきりとした仕上がりになることが多いので、初心者が芋焼酎を選ぶ際には、“白麹が使われているもの”という基準でセレクトしてみるのも良いでしょう。
黄麹(菌)~フルーツを思わせる華やかさ~
上記二つと違って、クエン酸を生成しないのが大きな特徴。雑菌が繁殖しやすいため、温度・衛生管理の手間が必要です。古くから日本酒や醤油などに幅広く用いられてきましたが、焼酎において利便性が高い黒麹が発見されてからは影を潜めていました。
しかし、焼酎の多様化が進む近年では、あえて黄麹を用いて差異化を図る動きも。日本酒の吟醸香に似た、華のあるフルーティーな香りが演出できると注目されています。
焼酎の頻出キーワード集!
さて、ここからはラベルやメニュー表に登場しやすいキーワードを簡単に解説します。下記に挙げたのは全て製造工程にかかわるものなので、より詳しく知りたいという方はぜひ過去記事をご覧ください。
熟成 ~角が取れた酒質に~
熟成の目的は、「酒質を落ち着かせる」こと。刺激臭を感じさせる揮発成分を飛ばしたり、原料由来の油分を、浮かせてすくい取ったりすることで、角が取れた味わいになるんですね。水分とアルコールがしっかりと融和し、コクが増すなどの効果もあります。
一般的な熟成期間は1~3ヵ月ほど。3年以上のものは「長期熟成」と定義され、かなり深い香味のものが多いので、チャンスがあれば試してみてくださいね。
無濾過〔むろか〕・原酒 ~力強い個性~
まず、蒸留の後の不純物を取り除く工程である“濾過”をあえて行なわないのが「無濾過」。複雑味のある、ワイルドな味わいのものが多いんです。
そして「原酒」は、瓶詰め前の“割り水”によるアルコール度数調整を行なわないものを指します。
そのため度数は40度前後と高く、パンチの強い香りや凝縮感のある旨みが感じられるんですよ。ストレートやロックでちびちびと嗜む焼酎なんです。
常圧・減圧蒸留 ~複雑味 or クリア~
蒸留方法によっても、味わいの特徴が異なります。「蒸留釜内部の気圧を下げるかどうか」によって、二つに大別されます。
- 常圧蒸留
- 気圧を下げずに蒸留を行なう、伝統的な方法。アルコールとともに、原料由来の香味成分を多く抽出することができます。
そのため、複雑味のあるしっかりとした味わいに仕上がるんですよ。大半の芋焼酎をはじめ、ウイスキーにも用いられることが多い手法です。
- 減圧蒸留
- こちらはその名の通り、蒸留釜内の気圧を下げて蒸留を行ないます。気圧を下げることで、沸点が下がります。標高の高い山では水が早く沸騰するのと同じ。
つまり、温度を上げすぎなくてすむので効率よく蒸留ができるんですね。いっぽう、香味成分の抽出は控えめに。
効率化だけでなく、すっきりとクリアな味わいを求めてこの手法が採られることも多いんですよ。
初垂れ〔はなたれ〕・本垂れ〔ほんだれ〕・末垂れ〔すえだれ〕
これも蒸留にかかわる表記。蒸留の、序盤・中盤・終盤と3つの段階に分けて、それぞれを集中して採取し瓶詰めするという製法なんですね。
「初垂れ(初留取り)」は、全体の数パーセントしか取れない稀少な一品。総じて度数が高くトロリとした飲み口、華やかな香りが印象的です。
中盤にあたる「本垂れ(中垂れ)」は最もバランスの取れた味わい。「末垂れ」は、濃密な香りを感じることができるんですよ。
次回は「飲み方・割り方」講座!
本連載をここまで続けて読んでいただければ、今回まででラベルやメニュー表に書かれている内容がかなり分かるようになると思います。
次回は、焼酎をより自由に選んで楽しんでもらえるように、「飲み方・割り方」についてて解説。具体的にどのような変化を起こすのかに特にフォーカスしてお届けしますよー!
焼酎ってどんな酒?
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