ビールってどんな酒? Vol.12「“日本のクラフトビール”について。ビアスタンドのマスターに訊いてきました!」
ビールの知識
今回でビールってどんな酒? 第一部は最終回。これまでお付き合いただいた方、本当にありがとうございます!
ラストのテーマは、日本のクラフトビールの特長と、初心者が入門するコツについて。国産のクラフトビールを目にする機会は増えたけれど、海外のものと比べてどんな特色があるのか。また、初心者が楽しむにはどのようなことを意識すればいいのか?
神戸三宮のビアスタンド「ハレとケ」のマスター・秋田壮馬さんに伺ってきました!
コンテンツ
日本のクラフトビールは、やはり海外を手本にしている?
大手ラガービールとの棲み分けは?
秋田さん
別物と考えたほうがいいでしょうね。日本の大手企業が製造しているラガービールは、やっぱりすごいんですよ。
海外のビールと比較しても、めちゃくちゃクオリティーの高いものを、しかも低価格で出している。だから日本の小規模のブルワリーって、ラガー、特にピルスナーをあんまり作りたがらないところが多いんですよね。ほかのスタイルよりも製造日数がかかるのもありますけど。
いつも飲んでるのってあれラガーって言うの? という方は、こちらに概要をまとめておりますのでよろしければどうぞ!
ウイスキーやワインのように味わって
秋田さん
日本ではやっぱり、まだまだビールは喉で味わうもの! というイメージが強いです。
だから仕事のあとの一杯がウマい、と言われるように喉を潤すために飲んだり、あくまで料理を引き立てる食中酒としてたしなんでいる方が多いんじゃないでしょうか。
そういう楽しみ方ももちろんあっていいんです。でも別のアプローチとして、たとえばウイスキーのオンザロックのように、何かをつまみながらちびちびと味わうのが似合うクラフトビールも多いんです。エール系のビールは特にそうですね。
秋田さん
酒がメインで、料理はそのアテ。クラフトビールは高い! という声もときどき聞こえてきますが、ウイスキーなんてバーに行けば1杯1000円じゃすまないことも多々ありますし、グラスワインも900円台とかざらにありますよね。
クラフトビールは、それに負けないくらい味わい深いんです。しかも度数がワインよりもまだ低いので、一軒目に飲みに行く前に軽く一杯、いわゆるゼロ軒目で楽しむなど、気軽さも兼ね備えているんですよ。
現在の日本のクラフトビールの特長は?
秋田さん
これは人によって印象がいろいろとあるかもしれませんが、僕が思うのは「日本酒のエッセンスを取り入れているもの」はやっぱり日本じゃないとできないですよね。
日本酒で使う良質な水の活用のほか、伝統的な酒造りをビールに応用していたりします。
たとえば発酵に欠かせない酵母を、ビール酵母ではなく日本酒や清酒に用いる酵母にしたり、原材料に米をブレンドするライスエールというスタイルを日本人が作れば、かなり日本的な味わいになることが多いですね。
日本酒の蔵元がクラフトビールに取り組んでいるという例も、実はたくさんあるんです。
“地産地消”にも注目
秋田さん
そのほか、自家農園で育てた大麦やホップだけで作る銘柄があったり、地元で採れたフルーツの魅力を最大限に活かしたビール、なんていうのもあります。地場の素材を使うとその土地ならではのオリジナリティが出てくるのは、ビールも同じなのかなと思います。
“地産地消”の取り組みは、日本にしかないクラフトビールを生み出す活路になるのではないかと期待していますね。
お酒初心者の方が入門するコツは?
秋田さん
“苦み”を初めから敬遠しないことじゃないでしょうか。ビールは苦いから飲めない、という方がけっこういるんですが、日本で浸透しているラガーって、実は苦みがかなり際立ったスタイルなんです。
クラフトビールにはまた全然違った、いろんな苦さのバリエーションがあるんですよ。たとえば、僕自身はスコットランドのブルワリーの「ブリュードッグ パンクIPA」という一杯に衝撃を受けて、ビールにのめり込みました。
IPAは、フルーティーな香りと甘みのあとから、ぐんと突き上げてくる苦みが持ち味のビアスタイルです。
また、「ラガーの先入観から離れる」のも大切です。苦みが少ないだけでなく、ほとんど発泡もしないスタイルもありますし、ラガーにはあまりない、酸味や甘みが強く感じられる銘柄もあるんですよ。
苦いから飲みたくない、じゃなくて、「こんな苦みもあるんだ!」という一杯に出会えれば、親近感がぐっと増すと思います。だからまずは、あんまりクラフトビール知らないんですけどおすすめを! と、店員に委ねてもらうのがいいんじゃないですかね。
お話を伺ったのはこの方!
「ハレとケ」:マスター 秋田壮馬さん
IPAでビールの魅力に目覚め、主にベルギーで研鑽を積む。2015年11月に、神戸三宮にビアバー「Laugh‘in」を開店。
日本のクラフトビールを肩肘張らずに楽しめる店として、地元の方を中心に親しまれてきた。「県外や、海外から来た人にもメイドインジャパンのクラフトビールを知ってほしい」と、近隣に二号店となるビアスタンド「ハレとケ」を2022年6月にオープンさせた。
ビアスタンド「ハレとケ」についてはこちらから!
ビールってどんな酒?
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秋田さん
そうですね。日本のクラフトビールは、まだ発展途上と言っていいと思います。
“地ビール”が流行ったころは、ベルギーやドイツなど、ヨーロッパのビールをお手本にしているところがありました。日本で最も飲まれているビアスタイルのピルスナーは、チェコの発祥ですしね。
でも2010年前後から、“クラフトビール”としてブームが再燃してからは、特にアメリカのスタイルに強く影響受けていると感じます。
実際に日本のブルワリーでも、実はアメリカやオーストラリアから来たブルワーが作っているビールがたくさんあるんですよ。