ビールってどんな酒? vol.01 「麦芽とホップと水と。」

ビールの知識

ビールってどんな酒? vol.01 「麦芽とホップと水と。」

「とりあえず生!」なんて言うけれど、じゃあそもそもビールって何なんですか? と聞かれて、うまく答えられない人は多いのではないでしょうか。

お酒といえばまずビール、ビール飲んでこそいっちょまえのお酒デビュー。

そんなわけで、「どんな酒?」シリーズと題して、ビール、ワイン、焼酎、ウイスキーなど、主要なお酒の分類とその定義について、イチから丁寧に解説していく本コラム。

第一弾は「ビール」です!

 

原材料は、麦芽(モルト)、ホップ、水。以上。

まずは「何から出来てるの?」というところから。見出しにもある通り、原材料は、「麦芽(モルトとも言う)」・「ホップ」・「水」。

麦芽(モルト)を粉砕して水と混ぜ、そこにホップを入れて煮沸〔しゃふつ〕(沸騰させる)、酵母〔こうぼ〕を添加して発酵。こうして製造されるのが、ビールなわけです。

で、ここですでに馴染みのない単語がふたつ現れてますね・・・。「麦芽(モルト)」と、「ホップ」。商品名にも使われていることがありますが、これが何なのかもうわからん。

大丈夫、安心してください。以下でわかりやすく説明していきますよ!

①麦芽(モルト)が土台

麦芽(モルト)が土台

 

麦芽とは、「発芽させた麦」のこと。ビールの主原料であり、香りや味の土台になります。

扱いやすさやコストの関係から、ビールには大麦麦芽が使われることが多いです。発芽してない麦じゃダメなの? と思う人もいるかもしれませんが、ただの大麦のままでは、酵母がうまく活動しアルコールと炭酸ガスを生成してくれません。そのため「モルティング」と呼ばれる、製麦を経る必要があるのです。

また大麦以外にも、小麦、ライ麦、トウモロコシ、米(!)など、ほかの穀物が使われることもあるのですが、その解説はまた別の機会に。

②ホップが味の決め手

ホップが味の決め手

 

はい、麦芽よりこっちのほうが難題ですね。小さい松ぼっくりというか、なんだかそんな形をしています。

ホップはアサ科で、つまりヘンプ(大麻・・・)と同じ科に属する植物です。蔓〔つる〕性なのですが、ビールにはその雌花だけが使われ、球状をしているため「毬花〔きゅうか〕」と呼ばれています。そのまんまですね。

植物そのものについての解説はこのへんにして、じゃあ、どんな仕事をするのか。

 

実は、ビールの代名詞でもある、独特の苦みと清涼感のある風味は、ホップによるものが大きいです。使用される量は麦芽よりもはるかに少ないので、つまりアクセントになるわけですね。たとえば、出汁〔だし〕をイメージしてください。水に加える塩が麦芽だとすると、昆布やかつおがホップ、といったところ。

ホップはさらに、ビールの濁りを少なくして泡立ちを良くするほか、雑菌の繁殖を抑えて腐敗を防ぐ役割も果たしているんですよ。

③酵母が、アルコールと泡を生み出している!

酵母はカビや、キノコの仲間

酵母はカビや、キノコの仲間

おっと。先に挙げていませんでしたが、発酵に欠かせない「酵母」も、実は何なのかよくわかってない、という方は多いんじゃないでしょうか。僕もそうでした。ここも少しだけ長いですが、あとちょっとで終わり。頑張って!

酵母は、5~10マイクロメートルほどのごく小さな微生物。真菌といってカビや、実はキノコとも同じ仲間なんです。とりあえず、酵母もれっきとした生き物なんだ、というところだけおさえてください。

で、その酵母が働くことを、「発酵」と呼びます。そもそも発酵とは、簡単に言えば「微生物が人間にとって有益な働きをすること」なんです。そして、人間にとって害となる働きをすることを、腐敗と言います。

菌も生き物ですから、さまざまな活動をするわけです。それを人間側の都合で、良い・悪いの判断をしているだけ。それが、発酵と腐敗の違いなんですね。だから同じカビでも、ブルーチーズに青カビを生やすのは発酵ですが、パンにカビが生えるのは腐敗。

ほかの発酵菌としては、乳酸菌や、納豆菌などが有名です。

ビール酵母は麦芽の糖がお好き

ビールにおいて酵母は、麦汁(麦芽とホップが水に混ざったもの)に投入することで、麦芽由来の糖を食べて、代わりにアルコールと炭酸ガスを吐き出してくれます。草木が光合成のために、日光と二酸化炭素を吸収し、ほかの生物に酸素をもたらすのに似ていますね。

これが、ビールがただの麦&ホップジュースではなく、お酒になる仕組みというわけ。

次回は「製造工程」をさらに詳しく

次回は「製造工程」

 

ここまでお付き合いいただきありがとうございました。おつかれさまでした。それこそビールでも飲んでひと息入れたい気分になっている人もいるかも・・・。

でもこれで、「ビールは何から、どういうふうに出来ているのか」ということが大まかにわかっていただけたかと思います。

 

次回は、冒頭で少し触れたビールの製造工程を、もう少し詳しく、わかりやすく解説。さらに第三回でビールの種類を紹介することで、理解がぐっと深まるはずです。

ぜひ、次回もお付き合いくださいませ!
 

ビールってどんな酒?

ビールってどんな酒? vol.01 「麦芽とホップと水と。」

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