ビールの「OEM」って知ってますか? ~上方ビールのオーダーメイドについて~
ビールの知識
今回は、ビールのちょっと変わった楽しみ方をひとつご紹介。「OEM」という方法。つまり、自分だけのオリジナルビールをオーダーメイドできるサービスです。全国的にも珍しい、15ℓの極小ロットから個人注文も受け付けている、上方ビールの志方昂司さんにお話しをうかがいました。
上方ビールのメーカー紹介をまだご覧いただいていない方は、こちらもぜひ目を通してみてくださいね。
パーティーや贈り物に、マイビール
まず、OEMとは「Original Equipment Manufacturing(オリジナル・イクイップメント・マニュファクチャリング)」の略。相手先ブランド製造、などと日本語訳されるのですが、まあ要は、「お客様自身の名義・ブランド名を冠した商品を造ります」というサービスのことなんですね。
で、ビールのOEMについては、どういった需要があるのか? まずは飲食店などが自店で提供する。ホテルやビアバー、居酒屋といった、さまざまな店舗から発注があるようです。
そのほか、イベント限定銘柄、会社の記念日などに配る贈答用というニーズもあります。そして、これは店舗や団体に限ったことではないんですね。
つまり、個人でも発注ができるということ!今回、一例としてご紹介する上方ビールでは、15ℓ(約40~45本)¥35000から注文を受け付けています。
個人や仲間内で楽しむのはもちろん、たとえば結婚式やパーティーで振る舞ったり、ギフト用など、いろんなアイデアで利用する方がいるんですよ。しかも、醸造過程を間近でチェックできる見学や、麦芽やホップ投入など一部の工程では実際に醸造を体験することもできるんです。
世界にひとつだけのビールが造れるというだけでなく、製造工程にも参加できるのは、忘れられない思い出になるのではないでしょうか。
ゼロから出発する、自分だけのレシピ
ここからは、上方ビールの特色をさらに掘り下げていきます。
極小ロット、醸造見学・体験に加えて、こちらのブルワリーの特徴は、「同じレシピで二度と造らない」というところ。
発注の要望がたとえ「美味しいIPA!」などざっくりとしたものでも、既存のレシピに手を加えるのではなく、“毎回イチからレシピを起こしてくれる”んです。
いろんな料理とのペアリングも拡がる
常に新しい可能性を探求し続けるこだわりに加えて、上方ビールが得意とするのは、“料理とのペアリング”を考えたスタイルなのだとか。
今後は、海外の方の需要も見越して、日本酒の酵母や日本茶を使ったレシピにも、積極的に取り組んでいきたいとのことです。
初心者は「ジャケ買い」から始めてみて
最後に、初心者がクラフトビールに入門するためのコツを、志方さんにうかがいました。
志方さん
はじめは、スーパーやコンビニで“ジャケ買い”がいいと思いますよ。見た目でピンときたものを、気軽に飲んでみればいいんです。最近のビールのラベルは、女性でも手に取りたくなるようなポップで可愛らしいものも増えました。
欧米チックでちょいワルなものや、上方ビールのような、日本的で硬派なデザインもいろいろあるんですよ。
コロナ禍の家飲み需要で、スーパーやコンビニでもクラフトビールを見る機会は、確実に増えたと筆者も感じています。
特に、高級スーパーや百貨店のお酒売り場は、酒販店かそれ以上にクラフトビールの品揃えが充実していることもあります。まずはラベルの見た目から入る。それで、裏に書かれてあるビアスタイルやその特徴を少しずつ覚えていって、好みの味を見つける。
いきなりビアバーに飛び込むのはちょっと勇気がいる、という方も、まずは一本買ってみるところからなら、気軽に第一歩を踏み出せますよね。
好みを自由に突き詰めて、ゆくゆくは自分だけの最高のビールをOEMしてみる・・・そんなクラフトビールの楽しみ方の選択肢もあるんです。
志方さん
今、日本で流行っているIPA(インディア・ペールエール)は、基本的に料理とのペアリングが難しい。おもにビール単体で楽しむものだと思っています。
力を入れていきたいのは、どちらかというと料理とのペアリングの可能性が拡がるようなスタイルなんですね。たとえば、主原料に大麦ではなく小麦を多く混ぜたウィートエール。これは、ビールとのペアリングが特に困難と言われている生魚とも合わせやすいと感じています。
また、小麦が多いとすっきりとした味わいに仕上がるので、フルーツやスパイス、ハーブにお茶など、様々な副原料とマッチさせやすいのも利点です。