ビールってどんな酒? vol.05 「エール系 その① ~奥深き世界~」
ビールの知識
前回に引き続き、「ビアスタイル(ビールの種類)」について解説。
今回からは、3回にわたって「エール系」をご紹介していきます!
ビールってどんな酒? Vol.04 「ラガー系は世界で最も飲まれている!」
コンテンツ
「エール系」=「上面発酵ビール」
毎回読んでくださっている方にとってはくどいかもしれませんが、ビールは発酵の方式によって、大きく二つに分類することができます(例外を「その他」に分類)。そのうち、発酵の際に浮き上がってくる酵母を用いるものを、「上面発酵ビール」と呼んでおり、これが「エール系」です。
この、「発酵の方式で分類する」ということを覚えてもらいたいので、あえて何度も説明しています。ビールにおいては、パッと見でわかる色味で分類しても、味わいやルーツが違いすぎて役に立たないことが多いのです。
1500年以上の歴史をもつ
エールの発祥は当時ブリタニアと呼ばれ、古代ローマの統治下に置かれていたイギリス。
「エール」という名前は、「植物の搾り汁」を意味するアングロ・サクソン語「ealu(アルーまたはエウルと発音)」が由来で、5世紀に入ってゲルマン系アングロ・サクソン人がこの地を支配するようになってから、ようやく今に通じる名称が定着しました。
ビールの歴史については、またじっくりと解説したいと思います。
エール系は、ワインのように味わう(?)
エール系の特徴は、なんと言っても「深い味わいと豊かな香り」。ラガー系がスカッと爽快感を感じる、いわゆる「喉で味わう」イメージが強いのに対し、じっくりと口のなかで堪能し、飲み下したあとも長い余韻が残るものが多いんですよ。
「エステル香」と呼ばれる、果実が甘く熟したような香りもエール酵母特有のもので、この酵母はワインに使われることもあるんです。それもあって、エールビールはどちらかというと、ワインに近い味わい方をする酒と言われることもあります。
キンキンに冷やすのではなく、13℃ほどのぬるめの温度が適温とされるスタイルが多いのも特徴的です。
まずは4つのスタイルから
少し長くなってしまいましたが、これで「エール系」が、日本人にとって親しみ深いラガー系とは全然違うビールなんだということが、なんとなくわかっていただけたかと思います。
ではいよいよ各スタイルの解説を。ここから、より一層ビールのディープな魅力に迫っていくことになりそうです・・・。でもだからこそ、ここで迷い道に入って脱落してしまうことがないよう、それぞれのスタイルをできるだけわかりやすく区分けしながら、似たものは極力まとめたり、省いたりしながら紹介していこうと思います!
※記事中の<スタイルDATA>は、『ビールは楽しい!(ギレック・オベール著/河 清美訳/株式会社パイ インターナショナル発行)』を主に参照しています。
ビター(オーディナリー)
単に「エール」と称されるのもこのスタイル。苦味はしっかりありますが、麦芽のまろやかな風味とよく調和し、口当たりよく仕上げられています。低アルコールで、爽快感も感じられる味わい。
<スタイルDATA>発泡性:弱/苦味:中~強/甘味:低/アルコール度数:3.0~5.0%
ペールエール
大きなパイントグラスに注いでちびちびと飲みたい、エール系を代表するスタイル。上述の「ビター」よりもむしろ、こちらのほうがエール系の総称として用いられる(作り手がとりあえずの分類として用いる)ことが多い。エール酵母由来の、りんごや洋ナシ、柑橘などを思わせるフルーティーな香り(エステル香)やアロマホップのフレッシュな風味が、苦みとハーモニーを奏でます。
<スタイルDATA>発泡性:強/苦味:中~強/甘味:中/アルコール度数:4.5~6.0%
バーレイワイン
樽の中で長期発酵・熟成させるのが一番の特徴。「大麦ワイン」と言うべきスタイルで、ボディ感のある味わいとアロマが、熟成期間とともに変化します。木樽の香りを感じるのもワインそのもので、ビールの中では最もアルコール度数の高い部類に入ります。
<スタイルDATA>発泡性:弱/苦味:中/甘味:中/アルコール度数:8.5~12.0%/熟成:10年まで可能
スコッチエール
ほかのエール系と比べて低温で発酵させる。そうすることでエステル香(熟した果実のような香り)が抑えられ、麦芽の風味が豊かになり、さらにスモーキーなニュアンスが混ざります。ベルギーでは、「スコッチ」と言えばウィスキーではなくこのビールを指すのだとか。
<スタイルDATA>発泡性:中/苦味:微~弱/甘味:中~強/アルコール度数:6.0~8.5%
次回はIPA!
今回はこんなもんにしておきましょう。一度にあまり情報を詰め込みすぎるのはよくありませんからね。
ただ次回は、本連載ビール編のひとつ目の山場だと思っています。なにせIPA(インディア・ペールエール)こそが、今や巷に溢れる「クラフトビール」という言葉を世に広めたと言っても過言ではないのですから!
ペールエールを超える個性を持つ、IPAとはいかに・・・。
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