普段使いの日本酒に価値を見出す「正雪」 ~静岡県 神沢川酒造場~

酒造・メーカー紹介

普段使いの日本酒に価値を見出す「正雪」 ~静岡県 神沢川酒造場~

風情ある街並みや新鮮な桜海老を楽しめる由比宿。山と海に囲まれた穏やかな景色は、ゆったりとした心地良さや穏やかな時間の流れを感じさせます。旧東海道を見守るように佇むのが大正元年創業の酒蔵「神沢川酒造場」。

 

神沢川酒造場 代表取締役:望月正隆さん

神沢川酒造場 代表取締役:望月正隆さん

 

由比駅より蒲原方面に向けて歩みを進めると、縦長の煙突が一際目を引く建物が現れます。「正雪」ブランドで有名な株式会社神沢川酒造場・代表取締役望月正隆さんにお話を伺いました。

 

お酒が大好きだったご先祖様が創業

お酒が大好きだったご先祖様が創業

 

養蚕業と林業を営んでいたお酒好きのご先祖様が始めた酒造りへの思いと共に、蔵と歴史が受け継がれ、現在は5代目。どのような理由でこの土地を選ばれたのでしょうか。

 

望月代表

とにかく水が良かったんです。目の前の道が由比の本陣まで続く旧東海道のため、大きな川ではないのですが、当時参勤交代の人たちも飲んだ水。神沢川は中程度の軟水タイプでもあります。

由比の町は東京寄りのちょうど真ん中の位置。海も山もあり、食材が何でもある。この環境で育ったことにより、平均的な嗜好を持ち合わせています。大多数の人に訴えられるような味覚で酒造りができる。中程度の軟水も土地や環境の良さがあるのかなと。

相性の良い水を活かした酒造り

相性の良い水を活かした酒造り

 

中程度の軟水は酒造りにどのような影響があるのでしょうか。

 

望月代表

静岡のお酒は比較的軽い感じのお酒が多い。酸の少ないタイプが多いため、中程度の軟水はその酒質に向いています。軽くて、綺麗で、丸い。自分も飲酒量が多いので、飲み飽きしないタイプが良いなぁと笑。

何杯も進むようなお酒がこのお水で生まれるのです。

由比が誇る「正雪」というブランド名

由比が誇る「正雪」というブランド名

 

ブランドである「正雪」という名前はどこから命名されたのでしょうか。

 

望月代表

この町で生まれた由比正雪の名前を頂いています。徳川幕府にとっては謀反人かもしれませんが、政治のあり方を変えてほしい!と人のためを思って活動をされた方です。その熱意や志に曽祖父が感銘を受けて、その名前をいただきました。

実は色んな方が正雪のことを小説に書いてくれています。山本一力さんが描く清水の次郎長の小説にも登場しているんですよ。その中で次郎長が飲んでいる。実際はその当時、うちのお酒はないのですけれども笑。

静岡らしい味わいの日本酒を全国へ

静岡らしい味わいの日本酒を全国へ

 

当時からコンテストには積極的に参加。お酒造りの腕が素晴らしい山影杜氏の元、5年の間に続けて金賞を獲得する名誉もありました。

さらに人との繋がりや紹介により、東京や大阪でも広く評価をしてもらえるようになります。

 

望月代表

平成になって、本気で日本酒に特化した地酒問屋さんとのお付き合いが始まります。お陰で有力な蔵元さんと情報交換や交流ができ、新しい商品開発に繋がったり、また全国に広がったりと変化が起きていきました。そこに行かなきゃ買えないという特別感もありましたね。

買い求めやすく、飲み飽きしないお酒

買い求めやすく、飲み飽きしないお酒

 

客層や取引先が代替わりしてもなお、次世代に引き継がれている正雪の魅力。誰もが知っていながら、買い求めやすい日本酒の存在を大切にしていきたいという代表の想いがあります。

普段使いや日常の食卓で楽しめるお酒の価値を探し続ける望月代表の言葉に、飲み手を思いやる気持ちが強く感じられます。

 

望月代表

消費税が上がっているのに、30年間、本体価格は上げなかった2000円の商品もありました。昨年、さすがに値上げさせてもらいましたが。2000円の一升瓶を1日2合で400円の計算。休肝日を2日取ると、5日間飲んでもその値段で済むから十分、満足度が高いんじゃないのかなぁと。

良い酒造りで日本の食卓を潤すこだわり

良い酒造りで日本の食卓を潤すこだわり

 

消費者の目線に立って、価格を考えられている正雪の味わいは心に響く飲み口。造りや手間を惜しまず、良いものを造っていこうという気持ちを大切にされています。

次の世代に繋ぐことを考えながら、普段使いしてもらえるような酒造りを目指しているとのこと。

 

望月代表

日常で飲まれるお酒として目指す味わいは、軽くて、綺麗で、丸い、これに尽きます。静岡のお酒が、全国の鑑評会で入賞しても金賞が取れない時期が続いていたこともあるのですが、それでも静岡のお酒自体は売れていました。

東京や色んな地域で、綺麗で丸くて飲み飽きがしないというタイプのお酒が評価されているんだと思う。それは静岡が持っている強み。これからもっと特徴を活かした酒造りをしていけば、まだまだ伸びていく伸び代があるのではないかなと感じています。

一つひとつの工程を大切にする意味

一つひとつの工程を大切にする意味

 

軽くて、綺麗で、丸く、飲み飽きしない。その味わいを造るための大切にされている工程を教えていただけますか。

 

望月代表

麹づくりです。全部そこに繋がっている。いい麹を造るには、良い蒸米を作らなければならない。良い蒸米を造るには良い洗米と的確な吸水をさせなければいけない。それができると良い蒸米ができる。良い蒸米は、手間を掛けて良い麹にしていくのです。

美味しく飲んでもらうための丁寧な取り組み

美味しく飲んでもらうための丁寧な取り組み

 

甘・辛・渋・苦・酸の五味のバランスを大切にし、苦・渋が絶妙なキレを生み出すと話される望月代表。

美味しい日本酒を届けるために、瓶詰めしてから火入れされている工程に掛ける思いをお聞きしました。

 

望月代表

全部ではなく、純米吟醸や純米大吟醸、愛山などは生詰めの瓶燗をしています。一概には言えませんが、他の方法と比べた時にその方が良いものが出来やすいということが分かったんです。そこから始まりました。

要はずっと瓶の中に入っているので、そこから逃げていくものがほぼないのです。酒質の変化を軽減させて、ストレスも軽減できる。ですが、もしかしたら他の方法を取るかも知れません。現在、研究中のため今後にご期待ください!

守りたいもの、そしてチャレンジしたいこと

守りたいもの、そしてチャレンジしたいこと

 

望月代表

守りたいものは綺麗で丸くて飲み飽きしないお酒、本当にこれに尽きます。うちのブランドの一番大切な価値ですね。

チャレンジとしては、これからのお酒造りは企画力であるということ。たとえば、飲み手に対してどのようにアピールするのか。もしかしたら違うものを造らなくていけないのかも知れないし、良さを活かしたまま全く違うジャンルのものを造るのかも知れないし、色々考えていきます。提案していくことが、これから求められていくことだと思います。

王道の軽くて、綺麗で、丸い日本酒

飲むほどに「あぁ、美味いなぁ」とじんわりと心に沁みる正雪。望月代表の実直な思いが伝わるような味わいです。

今回は正雪ブランドの王道であるこちらの一本をご紹介。小説に登場する主人公になったつもりで、秋の夜長を楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

王道の軽くて、綺麗で、丸い日本酒

普段使いの日本酒に価値を見出す「正雪」 ~静岡県 神沢川酒造場~

Tags

シェアする
前の記事

【累計支援額が3,400万円を突破!】半日で樽熟成酒ができる「酒ハック」のクラウドファンディングが、想定以上の支援を集めています!

11/14は県民の日!”大分県”の日本酒4選+αを紹介!

次の記事