澄み渡るような美しい環境が生み出す”クラフトウイスキー” ~静岡県 ガイアフロー静岡蒸溜所~

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澄み渡るような美しい環境が生み出す”クラフトウイスキー” ~静岡県 ガイアフロー静岡蒸溜所~

静岡市の中心地からおよそ40分ほど車を走らせると、広い敷地に丸太が積み上げられ、モクモクと煙が上る開けた空間が現れます。カワセミブルーのカラーリングが一際目を引く暖簾が印象的。静岡県静岡市の山間に蒸留所を構えるガイアフローディスティリング株式会社を訪ねました。

一般向けに随時見学ツアーが行われており、ウイスキー好きの好奇心を満たしてくれる素敵な場所でもあります。今では当たり前のように耳にする「クラフトウイスキー」の言葉を生み出した代表取締役:中村大航さんにお話を伺いました。

 

ガイアフロー株式会社/ガイアフローディスティリング株式会社 代表取締役:中村大航さん

ガイアフロー株式会社/ガイアフローディスティリング株式会社 代表取締役:中村大航さん

ウイスキーの聖地で見た造りの原点

ウイスキーの聖地で見た造りの原点

 

中村代表

お酒の中でも特にウイスキーが好きで、2012年6月にウイスキーの聖地と云われているスコットランドのアイラ島に行きました。何ヶ所もウイスキー蒸留所を見て回った中、最後に見たのがキルホーマン蒸留所だったんです。

スコットランドの田舎で、本当に少人数でウイスキーを手造りしている。それでいて世界中で飲まれているということに非常に感銘を受けました。理屈というか知識としては知っていたんですが、実際に目の当たりにしてみるとすごく衝撃でした。

クラフトウイスキーを造る人になる!

「カワセミブルー」の暖簾

「カワセミブルー」の暖簾

 

精密部品を作る会社を経営していた中村代表の心の中には、自社で作ったものでお客様と直接繋がれるような仕事がしたいという気持ちがあったとのこと。ウイスキーを自ら造り、世界中で販売するという思いがそこにピタリと重なりました。

 

中村代表

ウイスキー造りの勉強はしつつ、造るだけでなく販売しなくちゃならないので販路を開拓するため、輸入販売の免許をまず先に取って、一番難しいと思われた場所探しを並行してスタートさせています。

人との繋がりが生んだ追い風と絶妙なタイミング

静岡蒸溜所

静岡蒸溜所

 

静岡市清水区生まれの中村代表がこの場所に辿り着いたのも不思議な縁がありました。全国各地に目を向けて場所探しを行う中、条件が揃った土地を地元の不動産会社から提案されます。

 

中村代表

市の担当者がウイスキーマニアだったんですよね。そこから話が一気に進み、地元の後押しもあって。すごく有難いですよね。後は人の縁。この業界は個人と個人の繋がりで成り立っているので、会社の信頼も個人の信頼関係なんです。それが段々と繋がっていってという感じですね。

静岡らしいウイスキーを目指す

試飲カウンター

試飲カウンター

 

地域で盛んな林業をウイスキー造りに活かしたいと考えた中村代表。建物の内外装はもちろんのこと、地元の木で発酵槽を造ったり、地元の山の間伐材を原料にウイスキーを蒸溜したりなど、世界的にも例がないようなことを試みています。さらに目指すのは静岡らしいウイスキーとのこと。

 

中村代表

水や空気が綺麗で、とてもウイスキー造りに向いている静かな場所。静岡の良さ、地域の特色というものを造りの中に取り込んで、それによって表現される味わいというのが静岡らしいウイスキーと言えるのではないかと。

静岡県民的な素直な気質を持ったウイスキーにしたいなと思ったんですね。1杯目はなんか物足りないかなと思っても、飲み進めていくうちにしみじみ美味いなぁと思える味わいのお酒。酒飲みの人がゆったり、のんびり、なんかずうっと飲み続けられるお酒になったら良いなぁと思っています。

食中酒として楽しめるウイスキー

食中酒として楽しめるウイスキー

 

これまでロッテやチョコレート工房のコンチェ、老舗豆菓子屋の豆豊などとコラボし、様々な商品が提供されています。ガイアフローの味わいと好相性の食材を伺ってみました。

 

中村代表

ウイスキー1にお水3とか4とかお好みで割って和食と合わせる。具体的にやったのはお蕎麦なんですけれど、和食にも合わせやすいと思います。炭酸じゃなくても水で割っていただければ、それで十分ウイスキーの味わいを感じていただけると思います。

駆け抜けた10年。先人達へのリスペクトが鍵

発酵槽

発酵槽

 

ウイスキーの軽いスモーキーさを香りと香りで馴染ませるように、いぶりがっこチーズや燻製にしたもの、沼津の干物などもおすすめとのこと。ジャパニーズウイスキーが誕生して100年を迎える本年。ウイスキー業界に対する思いを伺いました。

 

中村代表

新しいものをゼロから立ち上げた偉大な先人達が、日本でウイスキーを造るということを根気強く続け、クオリティを高めるという努力をされてきたことが根底にある。

そのため、ウイスキーの世界ではリスペクトがとてもキーになっています。弊社も先人達の努力というものに敬意を表しながら、とにかくより良いクオリティのお酒を造るということをまず第一にしているつもりです。

世界初の試みを楽しむガイアフローの存在

ポットスチル

世界で唯一の薪による直火蒸溜方式ポットスチル

 

今改めて良さが認められ、注目されて、全世界で飲まれるようになっているウイスキー。静岡らしいウイスキー造りを掲げるガイアフロー静岡蒸溜所ならではの新たな挑戦も非常に興味が湧きます。

 

中村代表

100%地元の大麦を使用したウイスキーというものを提唱したんですね。日本でウイスキーを造り始めた100年前は、そういうことをやっていたんですけど。戦後、海外からの輸入により、基本100%外国産の安い大麦麦芽を使ったウイスキーが造られるようになった。そういう意味では新しいコンセプトです。

地元産の原料が生みだした繊細な味わい

地元産の原料が生みだした繊細な味わい

 

外国産と比べると日本人らしい繊細さがある味わいが生まれるとのこと。お米の違いや酵母の違い、産地の違いを楽しむ日本酒の世界を、ウイスキーにも置き換えられるのではないかと感じたと仰います。

 

中村代表

実験をしてみたいな、自分で飲んでみたいなと思って(笑)。やってみると確かに違いがあるんですよね。ある意味マニアの実験でやっているんですけど、その研究発表を皆さんとシェアするみたいな感じですかね。

まだ若い蒸溜所なので、クオリティも少しずつ少しずつ上がっていくような感じ。ウイスキーをゼロから造ってそれが段々熟成、成長していく過程を楽しめるような、そんな方に飲んでいただけたら良いかなと。経過を見ながら、味わいながら気長に付き合っていただけたらと思います。

守りたいもの、チャレンジしたいこと

熟成倉庫

熟成倉庫

 

中村代表

やはり小規模な製造を維持する。限られた量をしっかりと造っていくということをまず第一にしたい。クオリティをいかに高めるか、量よりも質を大事にすることを守りたいと思いますね。

基本的には熟成年数を長くしたウイスキーを順々に出荷したいと思っています。今はそもそもの原酒が持っている香りや味わいというものを素直に表現しようとやっていますが、将来的には複雑さ、芳醇さを持つようなリッチな味わいのウイスキーも造っていけたら良いなと。何せ時間が掛かりますので(笑)。ここから何年もかけて造っていく話だと思います。

オール静岡を目指す最初の一歩

オール静岡を目指す最初の一歩

 

取材日(2023/11/24)がちょうど熟成5年の日。静岡産の大麦100%、静岡県が開発した酵母を使用してボトリングされた静岡らしさの詰まったウイスキーです。

世界で唯一の薪を熱源にした直火加熱を行い蒸溜するため、重みと深みが増した味わいを感じられます。また、雑味のないところだけを抽出するミドルカットに注力されているとのこと。

丁寧な造りの味わいを是非ご堪能ください。

 

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