京都 伏見の女酒の魅力に迫る|“京の女性”を体現した柔らかな甘さを堪能…
酒造・メーカー紹介
京都は、日本酒の歴史において重要な地です。これは梅宮神社と松尾神社といった、2つの日本三大酒神社が存在しているためです。現在においても日本酒の生産量は、全国で2位。数多くの著名な蔵元が存在しています。
また京都にはたくさんの名水があり、これも日本酒の生産を支えている要因です。京料理と相性が良いだけでなく、他には味わえない滑らかな味わいを感じられます。本記事では「伏見の女酒」について解説したうえで、おすすめの銘柄を5つ紹介します。
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伏見の日本酒の特長
女酒とは、日本酒の味わいを表現する言葉の一つです。主に軟水から作られている日本酒を指して「女酒」と表現します。この種の酒は水の硬度が低いため、ゆっくりと穏やかに発酵が進み、滑らかな口当たりに仕上がります。
そして女酒の代表として知られるのが、京都府・伏見で醸造される日本酒です。本章では、伏見の女酒について味わいの特徴や、対比として用いられる「灘の男酒」との違いを解説します。
味わいの特徴
京都の「伏見」という場所は、名水の源として広く知られています。伏見の水は、硬度が低い(ミネラル分が少ない)ため、それを使用して作られる日本酒は、甘口で口当たりが柔らかなものに仕上がります。伏見の水を用いた日本酒が「女酒」と表現されるのも、甘さや柔らかさを表現してのことです。
灘の男酒との違い
兵庫県・灘もまた名水地として知られています。灘で作られる日本酒にも、伏見と同様に名水が使われています。しかしその性質は真逆といえるでしょう。そしてこの水が用いられた日本酒を「灘の男酒」と呼んでいます。
伏見の水とは反対に、灘の水はミネラルを豊富に含んでいます。マグネシウムやカリウムなど、酵母のエサとなる成分も豊富です。発酵の進みがよいため、酸の多いキレのあるお酒に仕上がります。風味全体も辛口となっており、すっきりとした味わいになっていることが特徴です。
伏見の女酒おすすめ5選!
前述したように、伏見は数多くの酒蔵が並ぶ地域です。もちろん作られる銘柄も多種多様。本章では、伏見の女酒の中でも、筆者がおすすめしたい以下5つの銘柄を紹介します。
同じく「伏見の女酒」であっても、それぞれ異なる特性をもちます。バラエティ豊かなラインナップであるため、ぜひコンプリートを目指してください。
花洛 純米吟醸|招徳酒造
こちらは招徳酒造で造られている「花洛(からく)」の純米大吟醸です。伏見の名水を使っており、酒米には100パーセント、京都府で生産された山田錦が使われています。
どこか品格のある酸味と、豊かな風味をご堪能いただける1杯です。蔵元によると、天ぷらや揚げ出し豆腐との相性が抜群なお酒だそう。飲み方は、冷酒または常温が適しているため、すっきりと味わえるでしょう。日本酒としては珍しい、ブルーのボトルも特徴的なお酒です。
蔵乃 京寿楽 純米吟醸|佐々木酒造
「金明水」や「銀明水」という仕込み水を使用した「蔵乃 京寿楽(くらのきょうじゅらく)」の純米吟醸です。ある伝説によるとこの水は、千利休も茶道に使用したと伝えられています。
それだけでなく幻の京都産酒米「祝」と、京都吟醸酵母「京の琴」も使用されています。つまり京都で作られた、原材料にこだわって醸造されたのが、こちらのお酒なのです。その穏やかで上品な味わいを、存分に堪能できる仕上がりでしょう。
高級感あふれるラベルには、ワク科の落葉低木である楮(こうぞ)から作られた「純楮紙」が使われています。細部まで「京都産」にこだわったお酒なので、風味と見た目、どちらからも京都を感じるにもうってつけです。
玉乃光 酒楽|玉乃光酒造
仕込みの工程から手作業で製造された、玉乃光の純米吟醸酒「酒楽(しゅらく)」です。精米から始まる、全ての工程において「丁寧さ」を大切にしています。風味の特徴は、何をおいてもキリリとした辛口であること。柔らかな甘口といった、伏見の女酒のイメージを覆す味わいです。またコスパも抜群であり、普段の晩酌にもうってつけでしょう。
銘柄の名前である「玉乃光」は、六左衛門が紀州熊野の速玉神社(はやたまじんじゃ)に由来しています。同神社で祀られているのは「イザナギノミコト」。イザナミノミコトの神霊が輝くといった意味を込めて「玉乃光」と名付けられたそうです。
神蔵(かぐら)純米大吟醸|松井酒造
京ブランドとして認定された「神蔵(かぐら)」は、松井酒造から誕生した純米大吟醸酒です。京都産の酒造りには欠かせない「祝」という酒造好適米を100%使用しています。濾過を一切おこなわない「無濾過」であるだけでなく、フレッシュな生酒です。かすかに黄金色に輝いており、口に含むと甘さや酸味、辛さ、苦味が複雑に調和します。香り豊かで、柔らかな味わいも特徴的。
「神蔵」を醸す松井酒造は、長い伝統をもつ酒蔵です。京都市内で「もっとも古い蔵」として知られています。しかし伝統を重んじるだけでなく、最新の設備を駆使して、最高品質の酒を生み出す酒蔵。創業からほぼ300年の歴史を持つ同酒蔵が、酒造りにおいて大切にしていることは、できあがった酒をそのまま楽しんでもらうことです。酒蔵では、比叡山から湧き出る地下水を使用しており、非常に柔らかな口当たり。風味にクセがなく、飲みやすい1杯が楽しめるでしょう。
澤屋まつもと Kokon|松本酒造
「澤屋まつもと Kokon」はアルコール度数が13%と、非常に飲みやすいお酒です。京都の名水と、兵庫県東条地域の山田錦を使用して醸造された純米大吟醸酒。飲む前から爽やかな香りが広がり、良質なお米の旨みが心地よく漂います。
可愛らしい松の木が描かれたラベルも特徴です。松の木には古今の色が宿っており、すべて同じ緑色に見えるかもしれませんが、実際には古い葉と新しい葉が共存しています。日本酒も同様に、さまざまなタイプや味わいの銘柄が共存していることの象徴なのだとか。ラベルを注意深く見てみると、松の葉の一部が黄色に変わっていることに気付くでしょう。一部だけ色が異なるのは、蔵元による「新しい日本酒を作りたい!」という、信念を表しているそうです。