こんな酵母があるの…?ユニークな酵母を使った日本酒5選!
酒造・メーカー紹介
日本酒を造るうえでは、欠かせない酵母。日本酒の裏ラベルに「協会◯号」などと書かれているのを、目にしたこともあるでしょう。酵母は日本酒に香りを与えるだけでなく、アルコールの素にもなります。
さまざまな種類が存在する酵母、なかには他の銘柄ではなかなか見かけない、珍しい種類もあるのです。
本記事では、普段はあまり出会えない、ユニークな酵母が使われている日本酒を紹介します。
コンテンツ
日本酒における酵母とは?
清酒などに使われる酵母は、親細胞から娘細胞が芽を出して増える微生物で、大きさは5~10ミクロン(1ミクロンは1mmの1/1000)ほどの球形や楕円形をしています。
この酵母は食材を発酵させる機能を持ち、自然界に広く分布しており、私たちの食事にも欠かせません。
例えばワインやビール、パン、しょうゆ、味噌など、多くの発酵食品に酵母が使われています。日本酒をはじめとした酒類もその1つ。
発酵における微生物には、酵母以外にもカビや細菌が存在しますが、それぞれが異なる役割を担っています。
日本酒に香りを与える
酵母は、日本酒ならではの豊かな香りの要素としても、重要な役割を果たしています。
糖分を消化してアルコールを生成する際に、単にアルコールだけでなく炭酸ガスも放出。酵母から放出されるアルコールと炭酸ガスには「カプロン酸エチル」や「酢酸イソアミル」といった化合物が含まれています。
これらの成分は、リンゴやメロン、バナナなど一般的に「フルーティー」と表現される香りの基です。
日本酒は米と米麹で造られており、そのために果物のようなフルーティーな香りが漂うのは、上記のような成分の存在が大きく影響を及ぼしているためです。
アルコールの源
酵母は、お酒を造る上で不可欠な存在です。原料に決められた条件の下で、酵母を加えることによって、原料の糖分がアルコールと炭酸ガスに変わる役割を果たします。この酵母の働きによる過程を「アルコール発酵」と呼びます。
アルコール発酵に必要な酵母や特定の条件は、目的とするお酒によって異なります。例えば、日本酒を造る際に使用される清酒酵母は、低温下で発酵するという特性を持っており、17~18%といった高い度数までアルコールを生成します。
清酒酵母によるアルコール発酵によって、美味しい日本酒が完成するのです。
ユニークな酵母の日本酒5選!
他ではあまり見かけない、ユニークな酵母を使った日本酒はいくつかあります。本章ではいよいよ、少し変わった酵母を使った日本酒を5つご紹介。
はちみつやりんご、オリーブなど、一見日本酒とはあまり関係のないものでも、酵母に使用されていることがあります。どのような香りになるのかは飲んでみてのお楽しみなので、ぜひ試してみてください。
上善如水 純米 はちみつ酵母|白瀧酒造(新潟)
白瀧酒造は、日本酒の新たな美味しさを見つけるために、自然界から採取した酵母を使って日本酒を醸造する取り組みを継続しています。この取り組みの中で、地元越後湯沢産の「はちみつ」から作られた酵母で日本酒を醸造することに成功しました。
その結果生まれたお酒は、はちみつを連想させる優しい香りと、口当たりの良いテクスチャーを持っています。ほどよい甘みが心地よく広がります。
またボトルやパッケージも年々進化し、2023年のデザインははちみつ壺を抱えるクマが目を引くポップなものとなっています。
天吹 りんご酵母 純米大吟醸|天吹酒造(佐賀)
非常に香り高い「天吹 りんご酵母」。醗酵中の醪から広がる青リンゴのような香りに、感嘆の声をあげる人も少なくないのだそうです。何とも言えない風味に、特別な銘柄のイメージが浮かび上がる、非凡な逸品。
こちらのお酒は、佐賀県産の米をりんごの花酵母で丹念に醸造した純米大吟醸です。コクと酸味が特徴のジューシーでフルーティーなお酒に仕上がっています。
和食だけでなく、イタリアンやフレンチ料理とも相性抜群。食事をしながら心地よく楽しめるでしょう。
鳳凰美田 2022 WineCell|小林酒造(栃木)
こちらはシリーズの中でも、非常に人気の高いお酒です。ワイナリーからの贈り物である「ワイン酵母」を使って、特別に仕込まれました。兵庫県西脇地区、美しい風景が広がるこの土地で収穫された山田錦を使用しています。
心地よい洋梨や木苺のような香りが感じられ、豊かな味わいと滑らかな旨み。そして爽やかな甘みと酸味、全てが調和した1本です。
ワイン酵母で仕込んだことで、果実のような酸味が特徴的です。爽やかな酸味と豊かなボディの旨みが、絶妙なバランスを成しています。
ぜひ鳳凰美田×ワイン酵母が創りだす、新しい日本酒の世界をお楽しみください。
天吹 バナナ酵母 純米大吟醸|天吹酒造(佐賀)
飲む前から鼻に届く完熟バナナのような香りに、試飲した人たちから「素晴らしい」といった感想が絶えない逸品。名前やラベルのイメージ通り、バナナの香りをしっかりと感じられる純米大吟醸酒です。
しっかり冷やして飲むことで、フレッシュさや香り高い味わいが、いっそう際立ちます。
日本酒ファンはもちろんのこと、あまり飲み慣れていない方でも楽しめるお酒に仕上がっています。
KAWATSURU Olive|川鶴酒造(香川)
川鶴酒造は、地域に根ざした日本酒を製造する酒蔵です。代表的な銘柄として「川鶴」を提供しています。
特に人気なのは、小豆島のオリーブから採った、さぬきオリーブ酵母を使用した日本酒です。筆者はまだ飲めていないのですが、この酒は風味や特徴から、パスタやピザといったイタリアンにも合うと言われています。
メロンの爽やかな香りが特徴の「KAWATSURU Olive」シリーズの中でも、毎年人気のある商品だそうです。
花酵母で作られた日本酒について
通常、酒造りにおいて広く利用されている酵母は、酒の原料から取り出されています。近年では、これらの酵母を人工的に変異させて特定の醸造能力を高めた酵母も増えています。
東京農業大学短期大学部醸造学科酒類学研究室では、自然界に存在する無限の可能性に目を向け、個性豊かな酵母を見つけ出す試みがおこなわれました。そして誕生したのが、花々が自然界に提供する香味を醸し出す、花酵母です。
まさに、花々からの贈り物とも言える天然の酵母です。
花酵母の日本酒については、こちらの記事も参考にしてください。
花酵母が織りなす美酒3選|心踊る華やかな日本酒を紹介!