スパークリングワイン、どれを飲む? 前編:~製造方法の違い~
ワインの知識
乾杯には何を飲みますか?
とりあえず、ビール?普段の日はそれでもいいけど。お祝いの日には、ちょっとおしゃれに泡のあるワインがいいですね!
発泡性のワインをスパークリングワインといいますね。
そのスパークリングワインにも色々種類があります。
一体どれを選べばいいのか?スパークリングワインの選び方の前編。まずは、その種類との製造方法の違いを見ていきましょう。
製造方法の違い
スパークリングワインには定義があり、20℃で3気圧以上のガス圧を持つものをいいます。
それより小さい、微炭酸のものは「ペティアン」と呼ばれています。
スパークリングワインには、主に「トラディショナル方式」「シャルマ方式」の2つの製造方法があります。
トラディショナル方式
瓶内で二次発酵を起こさせる方式で、シャンパーニュ方式とも呼ばれています。
途中まではワインの造り方と一緒で、瓶詰めからの作業方法が変わってきます。
- トラディショナル方式
-
瓶詰 → 瓶内二次発酵/瓶内熟成 → 動瓶 → 澱抜き → リキュール添加 → 打栓
瓶内二次発酵/瓶内熟成
発酵が終了したスティルワインを瓶に詰め、糖分と酵母を加えて封をします。そして瓶内で発酵を起こさせて炭酸ガスを得ます。
スティルワインを造る時の発酵を一次発酵と呼ぶのに対して、こちらの発酵は二回目なので、瓶内二次発酵と呼びます。
瓶内でのゆっくりとした発酵と、その後の瓶内での熟成できめ細かい泡が造られます。
動瓶
瓶内熟成時には「動瓶」といって、瓶を回しながら瓶口を下にしていく作業があります。
これは役目を終えた酵母が澱となって沈殿するので、下に溜まった澱を瓶口の栓の近くに集める作業です。この澱が残っていると、ワインが濁ってしまいます。
穴の開いた板に逆さにした状態のボトルを45度の角度で差し、水平から最終的に倒立させるようにします。
毎日手作業で少しずつ回し、どのくらい回したか分からなくなるので、開始場所に印をつけます。その印が瓶底にその後が残っていることも。
澱抜き・リキュール添加・打栓
では、瓶口に集まった澱をどのように取り除くのでしょうか?
瓶口をマイナス27度の液体窒素で凍らせて抜栓すると、ガス圧によって澱が飛び出します。
澱を取り除く際に、少し内容量が減ってしまいますので、これにリキュールを加えて打栓します。
この時に加えるリキュールを「門出のリキュール」と呼びます。リキュールは糖分を含んでいるので、それによってスパークリングワインの甘辛度が決まります。
また、このことを「ドサージュ」とも呼びます。フランス語では「投与量」を表す言葉です。
ドサージュについては各ワイナリーが独自のリキュールを加えるのですが、その内容を明かさないことが多いです。
最近では健康志向から、糖分を含むリキュールを加えるドサージュを嫌う消費者もいます。そのため、「ノン・ドサージュ」という甘辛度もあり、直訳すれば「ドサージュ無し」ですね。ドサージュを嫌う消費者に、「ノン・ドサージュ」であることを宣伝しているところもあります。
ただし、「ノン・ドサージュ」も実際には3g/l以下までは糖分を含んでいいことになっています。ですから「無糖」とは違います。
甘辛度についてはまた次回の後編で詳しく書きます。
いずれにしろ、澱抜きの時に少し内容量が減っているので、リキュールまたはワインを足しています。
ちなみにスパークリングワインのキャップシールが長いのも、瓶ごとに内容量の多少をごまかすためという説もあります。
同じような製法はイタリアのフランチャコルタ、スペインのカヴァです。
イタリアでは「Metod Classico」などと書かれています。日本でも「瓶内二次発酵」とか「Bottle Fermented」と書かれています。
シャルマ方式
「シャルマ方式」は、瓶内ではなくタンク内で二次発酵する方式です。
大きなタンクに密閉し、糖分と酵母を加えて第二次発酵を起こさせる方式です。
シャルマさんが考えたのでその名がついていますが、製法のまま「タンク内発酵」とも呼ばれます。
軽いタイプのスパークリングワインで、イタリアのアスティ・スプマンテが有名です。
こちらはブドウそのままの香りを残し、フレッシュでフルーティーな仕上がりになるのが特徴です。
その他の製造方法
トランスファー方式
いったん瓶内二次発酵させたワインを加圧化のタンクに入れて、冷却・濾過して新しいボトルに詰めます。フランスやアメリカで行われています。
トラディショナル方式の動瓶と澱抜きを簡略化したものですね。
メソード・アンセストラル(田舎製法)
主発酵の時点でワインを瓶詰めして打栓し、残りの発酵を瓶内で行います。
炭酸ガス注入方式
加圧化のタンクにワインを入れ、炭酸ガスを吹き込む方法です。
これも簡単なようですが、実際には加圧化のタンクを用意する方が大変なそうです。
製造方法は分かったでしょうか?
ただし、ワインはブドウによって大きく味が異なります。それはスパークリングワインも同じです。
後編では、スパークリングワインを構成するブドウや果汁についてのお話です。