「そこに音楽が響き続けるように…」雄町の未来は「御前酒」が醸す。-岡山県 辻本店-

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「そこに音楽が響き続けるように…」雄町の未来は「御前酒」が醸す。-岡山県 辻本店-

辻本店について

音楽と酒

「音楽と酒」、私はいつも両者の共通性を考えずにはいられませんと七代目蔵元「辻総一郎氏」は語ります。

耳にすれば、口にすれば理解する。ほんとうに良いものであれば、国も文化も関係なく楽しむことができる。人と酒を音楽が繋ぎ、人と音楽もまた酒が繋ぐのかもしれません。どこの誰が云ったのか、「音楽と酒はなくならない」というのは、ひとつの確かな真理なのではないかと感じます。

 

「音楽と酒」

 

とはいえ時代が変われば、世の人たちとの関わりも変わってきます。少し前の時代、ひとりで楽しむとき、友と楽しむとき、あるいは見知らぬ人と肩を組んで楽しむとき、酒があるだけで豊かな時間を提供することができたのかもしれません。過言かもしれませんが、それだけで世の中がうまく回っていたのではないでしょうか。

しかしちょうど私が蔵に帰ってきた頃は、最も酒の需要が低迷していた頃、出口の見えないトンネルをただ進んでいるようでした。人の志向は多様化し、楽しむだけなら酒などいらない、日本酒離れといわれるような惨憺たる状況でした。守るだけの伝統や文化という言葉に甘んじ、同じところでずるずると繰り返すだけでは見向きもされないと痛感しました。

 

「音楽と酒」

 

いまの世代、これからの世代に向けて、どうすればもう一度、酒のある魅力的で豊かな時間を演出できるのか。先達が培ってきたものに敬意を払いながらも、そこに新しいエッセンスを蓄積させるアクションが必要なのではないか。このような今だからこそ、改めて自分たちのスタンスを明らかにしなければならないと思うのです。

 

七代目蔵元「辻総一郎氏」

最高の原料米「雄町」

多くの音楽家がそうであるように、我々も醸造家としてのバックボーンを持ちます。それが常に当蔵に寄り添ってきた最高の原料である酒米「雄町」です。雄町は変容の時代のなかでも一切の品種改良を行わず、160年もの長きにわたって原生種を守り続けてきました。

大地深く根を張り、悠然とそびえ立ちながらも深々と頭を垂れる稲穂。凛然として白く伸びる芒(のぎ)と、美しく精悍な佇まい。野性味溢れるこの酒米から生まれた酒は、我々が想像していない変貌を遂げる時もあります。

 

最高の原料米「雄町」

 

それがこの酒米の魅力であり、当蔵が新しい挑戦をするどの時代の転換期においても、いつも雄町を扱うことが不可欠でした。だからこそ我々は覚悟を持って、雄町で醸すのです。

かつてその希少性ゆえ「幻の酒米」と呼ばれていた雄町は、山田錦、五百万石、美山錦に次ぎ、酒造好適米の銘柄別では全国4番目の生産量となりました。篤農家の方々の努力により、雄町は着実に全国へと普及し、確固たる地位を築いています。

 

最高の原料米「雄町」

 

単なる売り文句のためだけに、雄町を幻のままにしておくことはとてももったいないように思います。信念と熱意によって向上を続けてきた篤農家のプライドに対し、我々醸造家もプライドを持って応えなければなりません。酒米はそのままでは寡黙なひとつの原料ですが、醸すことで具現化できます。

雄町をバックボーンに持つ当蔵だからこそ、やらなければならない。岡山の山間部のちっぽけな蔵にできることに限りはありますが、だからこそひとつを突き詰めて探求し、深化させても良いのではないか。雄町という素晴らしい酒米のポテンシャルをいかに引き出し、多様性のある表現をするか。それが我々の果たすべき役割であり、宿命であると考えます。

 

最高の原料米「雄町」

 

我々は雄町を扱うことで、変容の時代に対し、適応し、挑み、もがきながらも、不変のものに支えられていることを感じます。だからこそこの素晴らしい酒米と誠実に向き合い、醸す酒で豊かな時間を演出したいのです。

この先、一歩先を見据えて、雄町と共に、まだまだ示せることがあるような気がしてなりません。雄町の未来は「御前酒」が醸す。世の中は移り変われど、そこに音楽が響き続けるように、酒を醸し続けたいと考えています。

 

雄町の未来は「御前酒」が醸す。

登録有形文化財に指定

二万三千石の城下町勝山の旧出雲街道沿いに建つ当御前酒蔵元辻本店は、1804年(江戸時代後期文化元年)の創業の造り酒屋で、旧美作藩主 三浦家に献上したことから「御前酒」の銘があります。

 

登録有形文化財に指定

 

登録有形文化財に指定された建物などは、通りを挟んで東側に主屋・店舗などがあり西側は土蔵であるレストラン西蔵を配置します。いずれも江戸後期・幕末から明治期の建物です。

店舗兼主屋は大型の町家形式で、赤色瓦やなまこ壁が当地方の住宅の特徴で主屋の南に事務所、北に衣裳蔵が連なり、街路の景観を引き締める。衣裳蔵西面の扉は、土戸の内面を竜虎の鏝絵(こてえ)を描き、庇(ひさし)持送りの彫刻も繊細です。

 

登録有形文化財に指定された建物

 

ほかに奥座敷・社舎・倉庫など、老舗蔵元の生業や生活の有り様を伝える一連の施設がまとまって保存され今も活用されている事と、近代和風建築の特徴が表れ、歴史的景観に寄与している点を評価され2013年11月「登録有形文化財」に登録されました。

 

文:日本酒鑑定士協会 瀧村健治
編集:LIQLOG

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