日本ワインはどんなブドウから造られている? ~ワインの味の違いのもと、ブドウの話③~
ワインの知識
ワインの味の違いは何でしょうか?大きな違いは、まず、造られるブドウによって変わります。では、日本ワインはどのようなブドウから造られているのでしょうか?
3回目の今回は、「ワインを造るブドウ」という意味の「ヴィティス・ヴィニフェラ」欧・中東系品種の黒ブドウ編です。
今回紹介するブドウ品種も、世界中で造られている品種なので、覚えておくとワイン選びに役に立ちます。
欧・中東系品種(ヴィティス・ヴィニフェラ)黒ブドウ
基本、黒ブドウからは赤ワインが造られます。
メルロ
フランスのボルドー地方が原産です。ボルドー地方だと後にも書くカベルネ・ソーヴィニヨンのワインというイメージがあるかもしれませんが、栽培面積はその2倍以上です。
早期に成熟してなめらかな果実味が出ることから人気があります。多産で病気にも強いので、世界中で栽培されています。
ボルドー地方でも特にサンテミリオンやポムロールでは世界的なワインが生み出されています。その代表格が「ル・パン」や「ペトリュス」です。
カベルネ・フランとマドレーヌ・ノワール・デ・シャラントの自然交配で生まれた品種といわれています。
メルロの香り・味わい
カシスやブルーベリーといった黒系の果実。チョコレートやバニラ。タバコやちょっと獣的な香りを感じることもあります。
優しい酸味と柔らかなタンニンで渋みは穏やかです。口当たりはなめらかで濃厚な印象です。
- 日本ではどこで造られる?
- 日本では明治初期に苗木が伝えられましたが、1980年以降から本格的に栽培されています。
全国で広く栽培されていて、生産量は全体の6.5%ですが、赤用品種では第3位です。長野県が最多で、山形県、山梨県と続きます。
長野県の塩尻市で特に秀逸なワインが生み出されています。その中でも桔梗ヶ原ではメルロの産地として有名となっています。
カベルネ・ソーヴィニヨン
こちらもフランスのボルドー地方が原産です。
晩熟の品種のため、ブドウがしっかり成熟するためには、水はけがよく日当たりのよいエリアが最適です。ワイン用ブドウとしてはいいワインができるポテンシャルが高く、世界各国で栽培されています。果肉に対する果皮・趣旨の比率が高いので、色が濃く、豊かな香りと渋みを持ったワインができます。
また、カベルネ・フランとソーヴィニヨン・ブランの自然交配で生まれたといわれています。
やはりボルドー地方で素晴らしいワインが生れていて、「5大シャトー」といわれる有名ワインもあります。
ボルドー地方の場合には、強すぎる味わいのバランスをとるために、メルロやカベルネ・フランを混ぜることが多いです。
チリやアメリカ・カリフォルニア州、ナパバレーでも素晴らしいワインが生れています。こちらではカベルネ・ソーヴィニヨン100%の単一で造られることが多いです。
カベルネ・ソーヴィニヨンの香り・味わい
カシスやブラックベリーといった黒い果実の香りと共に、ミントや丁子などのスパイスのアロマが特徴です。
酸味と渋みがはっきりしていて、口の中に果実味が広がります。スパイシーさも感じられ、心地よい苦味もあります。
- 日本ではどこで造られる?
- 日本では1930年代に山梨県で本格的な栽培が始まりました。生産量は全体の2.0%で、赤ワイン用品種で第5位。
主な生産地は「1位 長野県」「2位 山形県」「3位 山梨県」です。
ピノ・ノワール
フランスのブルゴーニュ地方が原産です。
果皮が薄いので、病気に弱く、早熟品種です。暑いエリアでは、特徴である華やかで繊細な香りが失いやすいです。
そのいい香りのため、虫や鳥に襲われやすいこともあり、栽培にとても注意が必要な品種です。だからこそ、出来上がるワインは素晴らしく、ワイン好きからも人気があります。
世界で最も有名はワインの一つ「ロマネ・コンティ」も、このピノ・ノワールからブルゴーニュで造られています。
フランス・ブルゴーニュ以外では、ニュージーランド、アメリカ・オレゴン州で素晴らしいワインが造られています。最近ではアメリカ・カリフォルニア州のソノマでも評価を上げています。
最高級のスパークリングワイン、シャンパーニュにも使われる品種です。
また、突然変異しやすいブドウで、果皮の色が白く変異した「ピノ・ブラン」やピンクに変異した「ピノ・グリ」もワイン用の国際品種になっています。
ピノ・ノワールの香り・味わい
イチゴやチェリー、ラズベリーの赤い果実の香りと共に、花畑のような華やかな香り。コルクをあけた瞬間から心地よく広がります。
エレガントな酸味がしっかりとしていて、渋みは少ないです。上品で繊細な味わいです。
- 日本ではどこで造られる?
- 1881年にドイツからシュペートブルグンダー(ピノ・ノワールのドイツ語)の苗木が入りましたが、その後は行方不明となっていました。その後1970年代から本格的な栽培が開始されます。
全国の生産量は1.3%で、赤ワイン用品種では11位。主に北海道、長野県で生産されています。最近は特に北海道の余市で素晴らしいワインが造られています。
シラー(シラーズ)
フランスのローヌ地方北部が原産といわれています。
小粒で果皮が厚く、病害に強く適応能力が高いので世界中で栽培されています。オーストラリアではシラーズと呼ばれ、人気が高いです。
原産地のフランス・ローヌ地方ではスパイスの香りが強く、エレガントな味わいです。一方、オーストラリアでは濃厚な果実味となめらかな、タンニンの力強い印象のワインとなります。
最近ではニューワールドで人気の品種でフランス、オーストラリアに次いで、スペイン、アルゼンチン、南アフリカなどで栽培されています。
シラーの香り・味わい
ワインの外観は濃く黒い色合いですが、サクランボの赤い果実やプラムの、やや甘い香りがします。加えて、黒コショウなどのスパイスの香りやユーカリのようなスッとした感じも特徴です。
味わいはジャムやドライフルーツのような果実味と強く豊かなタンニンが感じられます。
- 日本ではどこで造られる?
- 日本ではまだまだ統計には上がってきません。しかし、ワインナリー巡りをしていると、シラーを造っているところが増えてきているように感じます。
実際、長野や山梨でも「日本には合っているかも」という造り手さんの声も聞こえます。これから期待できる品種です。
いかがでしたでしょうか?気になったブドウ品種はありましたか?
色々と試してみて、世界品種で造られた日本ワインとその他の国との違いも楽しんでみてください。
次回はヨーロッパを離れ、アメリカ系品種のブドウ、ヴィティス・ラブラスカを見ていきます。