気仙沼の地酒の「造り手」として、「飲み手」を感じて造る「繋がりの酒」-宮城県 男山本店-
酒造・メーカー紹介
男山本店について
「男山本店」は1912年(大正元年)創業。港町である気仙沼の地で酒造りを始め、今年(2022年)で110年を迎えます。
気仙沼は昔から農業よりも漁業が盛んな街であり、漁師さんや漁業関係者の方々などたくさんの「お酒の飲み手たち」がいました。そんな人々に、地元で造った日本酒を届けるべく酒造りを始めたのが「男山本店」です。
社名の由来は京都の国宝「石清水八幡宮」にあります。創業者が酒造免許取得という大願成就を果たした際、お礼参りのため石清水八幡宮(当時は男山八幡宮と呼ばれていました)を訪れました。そこで当時の宮司様より名前を賜ったという経緯がありました。
現在は代表銘柄「蒼天伝」を中心に「気仙沼男山」「美禄」の3種類の銘柄をそれぞれ異なるコンセプトのもと製造しています。
蔵のこだわり
「男山本店」の代表銘柄「蒼天伝」は、次のような思いを込めて醸されています。それは名前の如く蒼い空(字面にはないが蒼い海も含む)のような澄んだ味わいであること、そして気仙沼で獲れる魚介と合わせて美味しいお酒であること。
このようなお酒を実現するためにこだわっているのが、宮城県の固有酒米「蔵の華」の使用です。
「蒼天伝」は一部の例外を除き多くのお酒に蔵の華を使用していますが、蔵の華はタンパク質の含有量が少なく、そこから生まれるアミノ酸=旨味が少ないのが特徴の酒米です。
旨味が少ないことでお酒はシャープでキレのある味わいになっていきます。この部分が脂の乗った魚介と合わせて飲むために重要な要素となります。
造り自体も、代々受け継いできた南部杜氏の技を用い、雑味の無い綺麗な酒質の酒造りを信条としています。
東日本大震災
2011年の東日本大震災は「男山本店」にも大きな影響をもたらしました。
かろうじて酒蔵そのものは残りましたが、本社屋、資材倉庫は全壊。また販売先である市内外の取引先も大きく損害を受けました。
当時「男山本店」にはタンク2本のもろみがあり、電気・ガス・水道などライフラインも止まってしまっている中、震災の翌日からできる限りの管理を再開しました。
そして、いざお酒をしぼらなければならないという時に、気仙沼の方々が自身も大変な状況の中発電機や燃料を貸してくださるなど、手を差し伸べてくださったのです。
このようにその後も気仙沼内外の方から様々な形のご支援をいただき、今も酒造りを続けることができています。
文:日本酒鑑定士協会 瀧村健治
編集:LIQLOG