秋田の「山本」がカフェ&マイクロ日本酒ブリュワリーを展開! “ユーザーフレンドリー”を目指す「LABO and CAFE YAMAMOTO」
店舗紹介
秋田県の北西部に位置する山本郡八峰町。五能線・東八森駅から徒歩3分ほどの場所に「山本」ブランドで有名な山本酒造店があります。
この「山本」が、蔵と隣接した敷地内に今春カフェをオープン。大きな話題となっています。
その名も「LABO and CAFE YAMAMOTO」
「LABO」の名のとおり、カフェには実験的に日本酒のマイクロブリュワリーが併設され、一般客が酒造りを体験することも可能だといいます。
今回は、酒蔵が展開する新たな形態を打ち出した、この「LABO and CAFE YAMAMOTO」にお伺いし、代表取締役社長の山本友文さんのナビゲートで、カフェとストーリーを堪能してまいりました!
コンテンツ
カフェコンセプトはまさかの代官山?
外観やエントランスは、和洋どちらの要素も感じられ、清潔感があふれています。
あいにくの曇り空ではあったものの、屋内に入るとガラス張りからの採光がとても明るく、ゆとりと開放感のある空間が飛び込みます。
そもそも、このカフェの構想が具現化したきっかけは、5年ほど前の同級生との飲み会に遡るそう。そこに同席していた元クラスメイトにたまたま「今何やってるの?」と聞いた際に、その方が偶然にも建築士だったことで協力をお願いをする流れになったそうです。
その後、その同級生が建築事務所を持つ先輩を山本さんに紹介。なんと先輩も同校出身で、同窓生が集まるジョイントベンチャーの形で取り組まれることになりました。
建築が好きな山本さん。施設自体は、山本さんが「酒蔵の雰囲気には一切寄せないでほしい」とリクエストしたと言います。東京の代官山や自由が丘のカフェに週末出向くようなイメージを求めたそう。確かに、リラックス感のある都会のカフェといった趣。
ところが、この「東京風」カフェは驚くべき秘密が。
内装面も同級生が手掛けたということで、カフェのテーブルや椅子もすべてオリジナルなのですが…よく見ると、木桶風のモチーフになっているのです!
一見北欧風なテキスタイルも実はオリジナルで、デザイナーが秋田の白神山地をモチーフにデザインしたそうです。
そのほかにもカウンターやワゴンは麹蓋がモチーフとなっていたりして、東京風に見えて、実は地元・秋田や酒蔵ならではのディテールが隠れているという、胸躍る仕掛けに気づきます。
使用されているのも秋田杉や十和田石といった、地元の素材。
「パッと見東京・実は秋田のクラフトマンシップ」という山本さんたちの遊び心です。
「山本」ユーザーにフレンドリーな場所を
カフェの構想は以前から?とうかがったところ、「実はカフェがメインというわけでなく、ブリュワリーありきなんですよ」と山本さん。
店内には仕込み蔵、というよりも実験室と言ったほうが似つかわしいガラス張りのマイクロブリュワリーが併設されています。
こういった山本さんの思いが「ラボ&カフェ」という形態を生み出しました。
ブリュワリーに関しては、今後HP上で製造スケジュールを告知することで「この日に〇〇の作業があるんだな」とお客さんが確認できるような形にするとのこと。
作業がある日に来店したお客さんは、ガラス越しに仕込みの様子も見学できるようになっています。
筆者がお伺いした当日は、作業はありませんでしたが、ラボに設置された木桶に仕込んでいる醪が入っているのを確認することができました。
サーバーから日本酒が??
ブリュワリーで造られた日本酒はカフェで飲み比べできるのですが、なんとカウンターでサーバーからビールのように注がれます!
種類は都度入れ替わるので、タイミングによって飲めるお酒も違ってきます。
単品100mlから飲めますが、今回は100ml×3種のテイスティングセットをチョイス。この日は特別に、山本さんが自ら注いでくださいました。
ご自身は「白ワインが好き」という山本さん。そのためか「山本」の日本酒は、酸が効果的に効き、フレッシュ感あふれるものが多い印象。
実は山本酒造店のお酒は、グルコースを通常の日本酒の1/3以下に抑えているそうです。
さらに、サーバーで注ぐとビールと同じようにガスで押し出す形になるので、よりガス感が増しピチピチとした感覚が味わえるそう。これは目から鱗です。
日本酒提供用のシリコングラスは「持ちやすく扱いやすい」と山本さんが惚れ込んだもの。そこに「LABO and CAFE」のイラストがプリントされています。
テイスティングセットを注文した場合は、このグラスを洗って持ち帰ることもできるそうです。
また、サーバーの日本酒は、別売りのペットボトル(無料)またはグラウラー様のステンレスボトルを購入して、量り売りでテイクアウトすることもできます。
自宅でもフレッシュな山本のお酒が味わえるので、車で来たお客さんも店内でちょっぴり我慢すれば、帰宅後にご褒美が待っています。
充実のカフェメニューは運転手やノンアル派も満足!
実は、自家用車で来た人や日本酒が飲めない人でも楽しめるカフェメニューが充実。
ノンアルコールも豊富で、コーヒー豆は自社で買いつけ。焙煎は同じ秋田県・男鹿の珈音(かのん)焙煎所にお願いしているとのこと。
自社の蔵付き酵母「セクスィー山本酵母」と「ゴージャス山本酵母」をイメージした2種類のブレンドを日替わりで提供しているそうです。
フードは、ランチとしても十分なボリュームの3種セットを用意。キッシュやテリーヌのワンプレートで「スペインのサン・セバスティアンのバルのようなイメージです」と山本さん談。
とても丁寧に作られていて、野菜もふんだんに使用。ビジュアルもこだわっていて目にも嬉しい。白ワインっぽさのある「山本」の日本酒とも好相性です。
またカフェのアイコン的名物が、あの世界的パティスリー「ピエール・エルメ」のオリジナルマカロン「シラカミ」です。
山本酒造店も参加する秋田の蔵元ユニット「NEXT5」のプロジェクトで、2020年に「ピエール・エルメ」とコラボレーションした縁で、山本酒造店の酒粕を使用したオリジナルマカロンが実現しました。
ふんわりと香る酒粕の香りとエルメらしい繊細な甘みがとても上品です。ここでしか購入できない貴重なフレーバーを、ぜひ皆さんにも味わっていただきたいです。
ユーザーフレンドリーな心遣いは細部に
メインのカフェスペース以外の場所も、山本さんに特別にご案内していただきましたが、フレンドリーな配慮があちこちに。
奥にはキッズスペース。いかにもキッズスペース、という作りではなく大人も落ち着ける座敷状。枡がオブジェのように積まれ、おままごとセットなどナチュラルな素材のおもちゃが置かれています。
カフェスペースから離れているため多少子どもが騒いでも問題ないそう。「小さな子どもがいる間は遊びに行ける場所が限られてしまうので、そういう人にも気兼ねなく来てほしいな」と山本さん。
子どもを連れてお酒を楽しむのはなかなか難しいものですが、こちらならそれも叶います。
また、2Fにはちょっとしたイベントなどで使用できるカウンターキッチンも。こちらはカフェのファブリックと生地の裏表が逆になっていて、夜のイメージでシックなカラーリングになっています。
実は、このスペースはWEBではおそらく本邦初公開!
そして店内は絶えずお客さんが訪れ、山本さんは地元住民のお客さんに挨拶されていたり、遠方から来たとみられるお客さんに自ら話しかけていたり。
山本さん自身が非常にお話も面白く気さくな人柄で、老若男女さまざまな立場の人に喜ばれるこの施設は、山本さんらしさの賜物であるとも感じます。
山本酒造店の新たな歩みをぜひ体感してみては?
酒蔵としての高品質な酒造りとユーザーへの思いやりを両立させるべく生まれた新形態「LABO and CAFE YAMAMOTO」
記事にしきれないほど多くのお話をしてくださった山本さんご本人のような、明るく楽しい空間でした。
酒蔵の新しい試み、秋田県の新名所として、今後も歩みを止めない山本酒造店に期待が止まりません。秋田を訪れる機会には、ぜひ立ち寄ってみてください。
店舗情報
- 施設名:LABO and CAFE YAMAMOTO
- 住所:〒018-2678 秋田県山本郡八峰町八森13-1
- 電話番号:070-1146-9430
- 営業時間:10:00~16:00(火・水定休)
山本さん
衛生面など酒のことを考えたうえで、今、酒蔵本体のほうでは一般のお客さんの見学を一切受けていません。
酒販店さんなどの業界関係者に限ってご案内していて、その人たちからお客さんにしっかりと『山本』について伝えてもらいたいと思っています。
でも、それだけじゃユーザーフレンドリーじゃないな、と。
だからいつか一般の人にも酒造りの体験をしてもらえるような実験室的な施設をつくりたい、という思いがずっとあったんです。