「リンゴ酵母が時代を席巻!」小さなこだわりの一つ一つが旨い酒を造る。-広島県 中尾醸造-
酒造・メーカー紹介
中尾醸造について
創業は1871年(明治4年)廣島屋の屋号で創業、現代表の「中尾 強志氏」で6代目となります。2021年に150周年を迎えられ、代表銘柄は「まぼろし」と「誠鏡」です。
「中尾醸造」と言えばリンゴ酵母と高温糖化酒母法が有名です。リンゴ酵母で醸された「大吟醸 まぼろし」は昭和23年に全国品評会で第一位を受賞され、現在でも愛されている商品です。
2001年には吟醸酒として限定品「まぼろし 黒箱」を発売、以後幾度も全米日本酒歓評会でゴールドメダルを受賞、また世界最大の品評会「IWC」にて金メダルを受賞、ANA欧米線のファーストクラスで採用されています。
もう一つの銘柄「誠鏡」の由来は「杯に注いだ酒の表情を鏡にたとえ、酒造りに精進する蔵人の誠の心を酒の出来栄えに映し出してほしい」という初代当主の願いを込めた銘酒「誠鏡」が誕生。地元契約農家で栽培された雄町米、そのお米で醸された「誠鏡」も蔵を代表するお酒です。
八百屋に並べられていた真っ赤なリンゴ
1940年(昭和15年)、当蔵4代目の「中尾 清磨氏」は、日本酒の発酵に必要な3つの能力(発酵、香り、酸味)について優れている酵母を探していて、たまたま八百屋に並べられていた真っ赤なリンゴが目に止まり、買い求めリンゴ酵母を発見することができました。
しかもその酵母はアルコール発酵力が強く、爽やかな酸を生成するという3拍子が完全に揃った奇跡とも言える酵母との出会いでした。
当時吟醸系の協会酵母が存在しない時代、まさに先駆けの吟醸酵母として今日まで受け継がれています。
純粋な酒母を生み出すための高温糖化酒母法
従来の酒造りの方法では、リンゴ酵母を添加しても発酵の途中で、蔵に元々住み着いている力の強い酵母に取って代わられ、お酒を搾る頃にはリンゴ酵母は消えてなくなってしまうことが起こりました。
そこで開発されたのが高温糖化酒母法です。この方法は、蒸米・麹・水を混ぜ合わせる最初の工程で温度を55℃で8時間保ち高温環境下で酒母全体を無菌状態にします。
完全に酒蔵付酵母が居ない状態を作り出してから、リンゴ酵母を添加しリンゴ酵母 100%の純粋な酒母を完成させます。
この製法はリンゴ酵母発見から7年後の1947年(昭和22年)に確立し、翌年 日本醸友会より第1回技術功労賞を受賞されました。
高温糖化酒母は、現在も全国で半分近くの蔵が、品評会出品酒の仕込みに使用されてます。
80年以上前に発見されたリンゴ酵母、歴史を感じながら「大吟醸 まぼろし」を一献、如何ですか!
文:日本酒鑑定士協会 瀧村健治
編集:LIQLOG