脇役に徹する!自然体で寄り添う食中酒 ~静岡県 森本酒造~

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脇役に徹する!自然体で寄り添う食中酒 ~静岡県 森本酒造~

静岡県内の中でも個性際立つ酒蔵として挙げられるのが菊川市にある森本酒造。純米蔵であり、自醸蔵でもあるため、造り手の思いがストレートに感じられる酒蔵です。親子二人だけで醸す酒の味わいには、魅了された根強いファンが多くいらっしゃいます。

森本圭祐さん (左) と森本圴さん (右)

森本圭祐さん (左) と森本圴さん (右)

長年、森本酒造を支えてきたお父上の森本均さんと10年ほど前から本格的に酒造りを担っている御子息の森本圭祐さんにお話を伺ってきました。

静岡県菊川市での酒物語

静岡県菊川市での酒物語

大百姓として田んぼを管理していたご先祖様が菊川市の神尾という土地で年貢米を集めたり、米の仲買人をしたりと仕事を広げていった一つに酒造りがあったとのこと。それが明治40年代の頃で、実際はもっと前から始めていたのではと云われています。

圭祐さん

大正13年頃に現在(堀之内)の土地に移り、15年くらい前に市の区画整理によって新しい建物ができました。以前の場所では米はあるけれど、井戸水の量があまり豊富ではなかったのです。

米と水に恵まれた土地で酒を造る

米と水に恵まれた土地で酒を造る
ところが、移転先として様々な好条件が重なります。蒸気機関車や製茶用のボイラーに使えるような恵まれた水質の水が、現在の菊川駅前一帯に豊富にあったのです。当時、東海道線(蒸気機関車)開通の際、金谷駅や掛川駅でもなくこの菊川に蒸気機関車の給水場があったことや茶産業の集積所として製茶工場が集結していたことも大きなポイントでした。

圭祐さん

酒造りに適した鉄分の少ない豊富な地下水があったんです。しかも質の良い水。酒造りに使うのも鉄分が少ない水ですけど、ボイラーに使うのもミネラル分が少ない水なんです。そうでないとボイラー自体が壊れてしまいます。たまたま建物を残して辞められる製茶業者があって、そこで神尾から移ってきました。

自ら杜氏を務める自醸蔵が目指す味わい

自ら杜氏を務める自醸蔵が目指す味わい

森本酒造を代表する酒に小夜衣があります。新古今和歌集から音の良さで選んだ言葉とのこと。他にもネーミングが面白い限定流通品の森本シリーズや圭祐さんのオリジナルラベルも楽しませてくれています。どのような味わいを目指されているのでしょうか。

圭祐さん

基本的には食中酒。流行りの傾向があるカプロン系の甘くて香りの強いものは、基本的に食べ物に合わないと考えているので、しっかりと酸もあって味わいもあるようなお酒を目指しています。あくまでも料理と一緒に飲むもの。料理を主役にして、お酒を脇役にしてということは考えています。

時代の変化と杜氏の仕事

時代の変化と杜氏の仕事

元々は能登の杜氏さんが来ていましたが引退されてから、完全に二人だけで行っているとのこと。10年くらい前に御子息の圭祐さんが戻られてから人は頼まず、お二人で地道に作業されています。どのようなタイミングで自ら造られるようになったのでしょうか。

均さん

能登の杜氏さんが来られていて、ちょうど年齢的に引退されるという時。杜氏一人と蔵人とセットで来てくれるので杜氏さん辞められちゃうとそのグループは来なくなっちゃう。ちょうど蔵の建て替えの頃で、その後他の人にもやってもらったが、思うような酒にはならなかった。それなら自分でやる!ということに。

良い酒を造るための二人のバランス

良い酒を造るための二人のバランス

自分の思う味わいや酒造りを目指すため、試行錯誤しながらこつこつと取り組まれてきた森本さん。その中で、大切にされている工程を伺いました。

圭祐さん

今は以前より洗米の水をかなり増やしています。洗った米に糠が残らないよう濯ぎの水をかなり増やしています。さらに丁寧な製麹を目指し、麹箱での麹造りを増やしたり、自然な対流で十分な攪拌・発酵が進むという考えのもと、醪の櫂入れを極力減らしたりしています。実際にやってみて更に改善できるように毎年工夫しています。

酒とつまみと晩酌と

酒とつまみと晩酌と

ずばり晩酌されますか?の質問にお二人は素敵な答えをくださいました。

均さん

晩酌はあまりしないな。昔の人は農業関係の仕事が多かった。帰ってきて夕飯まで間があると酒が好きな人は飲む。酒のつまみというけどそんな上等なもんじゃないら。畑から帰ってきて、菜葉取ってきて刻んだり、たくあんの漬物かじったり、魚取ってきたら煮付けにしたり、焼き物にしたり。気取って飲むものじゃない。

 

圭祐さん

普段は特につまみを用意しないですね。出てくる晩ごはんに合わせて飲んでいます。あくまでも普段の生活の中で飲めるようなお酒が良いと思っています。

例えば麻婆豆富がこのお酒に合いますという時に中華街の専門店のものとレトルトのものと近所の飲食店のものと一緒に括って良いのかどうか。味覚ってそもそも違う。飲んだ人が一番美味しいと思う組み合わせで飲んでくれれば一番良いと思っています。

職人としての感性で生み出す古酒

職人としての感性で生み出す古酒

筆者の個人的な興味により、商品ラインアップの一つ「常温長期熟成酒 古酒浪漫 2003」についてお話を伺ってみました。

均さん

古酒浪漫は2003年から約20年、常温で保管。2001年と2003年があり、2001年はダメもとで平成25年度の名古屋国税局の鑑評会に出したら賞を獲った。残った酒を瓶に詰めて寝かせるのは経験しているので、大体このくらい置けば良くなるというのが分かる。

2001年のものは自分で古酒にした。自分がまだ若くて尖っていた頃の話。その時、古酒に向く酒質だなと味を見て閃いた。これは10年おけば良くなると。それが見事にはまったで。どれでも良くなるわけでもないし、放っておけば良いわけでもないし。今は無理だな。年と共に衰える。入れ歯になると酒が分からんくなるって昔の人は言っていたな。実際はそう。歯は大事にしなよ!

守りたいもの、チャレンジしたいこと

守りたいもの、チャレンジしたいこと

圭祐さん

普段の生活の一部になるような食中酒。あくまでも料理が主役になるようなお酒というのをこれからも造っていきたいと思っています。変えたくないし、変える気もない。

違うものはやりたい。流行りのカプロン酸系の酵母とはまた違った今まで使ったことのない酵母で特性の違うものを造ったり、計画的に熟成酒というか古酒というものを造ってみたりしても面白いだろうし。もうちょっと白ワインに近いような酸をしっかり出すタイプを造ってみても面白いかなと思うし、特殊な造り方をするようなものに挑戦しても良いだろうし。

年に1本とか小さいタンクでいたずらでやってみるのも良いし。主流のやり方、主流のお酒じゃない変わったお酒なんかもバリエーションの一つとしてやりたい。

 

均さん今、世界中の食べ物の中で日本に居て食べられないものはないら。そんな中でいろんな酒があっても必然かな。ある程度時流に乗ってかにゃならんのはあるけど、そういうのは大きいところに任せて、小さいのは小さいなりに伝統を守るしかないな。

伝統であり、未来でもあるブランド小夜衣

伝統であり、未来でもあるブランド小夜衣

そこでご紹介。圭祐さんがデザインしたオリジナルラベルが美しい小夜衣純米吟醸。新ブランド酒米である令和誉富士で醸した一本です。ぜひ普段の食事と一緒にお楽しみください。

脇役に徹する!自然体で寄り添う食中酒 ~静岡県 森本酒造~

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