米・水・人にこだわり、「ローテクとハイテクの相乗効果」で旨酒を醸す。-山口県 酒井酒造-
酒造・メーカー紹介
酒井酒造について
「酒井酒造」は明治4年(1871年)、錦川の伏流軟水に恵まれたこの地に蔵を構えました。
代表銘柄の「五橋」の名が錦川にかかる五連の反り橋「錦帯橋」に由来するということはいうまでもありません。錦帯橋の優美さを願い心と心の掛け橋にとの思いを込めて命名されました。
五橋の名が全国的に広まったのは、昭和22年春のことです。
硬水仕込みが全盛の当時にあって軟水仕込みによる『全国新酒鑑評会第1位』の獲得以来、杜氏の研ぎ澄まされた感覚とたゆまぬ努力、技術の研鑚により山口県の代表酒として全国のファンより支持されています。
「当たり前のことを当たり前にやる」
蔵元の信念は簡単なようで実は簡単ではありません。
本来の日本酒の姿とはどうあるべきか。よい米、よい水、よい技術(人)これらが三位一体となったとき、えもいわれぬ美酒が醸されます。
「当たり前のことを当たり前にやる」そうすればおのずとよい酒が醸されると私たちは信じています。
米へのこだわり
「酒屋はもっと米を知れ」五橋蔵元の口ぐせです。大陸から水稲農耕が渡来して以来、日本人の根幹にあった大切な米で醸す日本酒ですから、当然の主張です。
しかし、その米を重要な要素として捉えていない蔵元が少なくないのも事実です。五橋は平成8年から山田錦の契約栽培を始め、契約栽培地に自家精米所を移設しました。
また、蔵元は「酒屋は1.5次産業」と主張します。ただの工業製品を作る二次産業ではない、農業との深いかかわりを持ちながら酒を醸す。酒造業と農業との深い関わりを考えればこれも当然の主張です。
そして、蔵元は「酒造りは米作りから」とも言います。平成27年には農業法人「五橋農纏株式会社」立ち上げ、具現化しました。
良い酒を皆様にお届けするために、「五橋」は米にこだわります。
水へのこだわり
地酒であるためには水にさえ、こだわりを持たなければならないと私たちは考えます。日本酒の約80%は水です。水は米と共にきわめて重要な主原料であり、古くから「銘酒は良い水から生まれる」と言われる所以です。
五橋の仕込み水は山口県最大の清流「錦川」の伏流軟水。「超軟水」と表現されたその硬度は1,5。製造場内にある深さ10m、30m、40mのそれぞれ三本の井戸より汲み上げられます。五橋の特徴である香り高くきめ細かな酒質は錦川の恵み。名水による恵みなのです。
人へのこだわり
五橋の杜氏は大津杜氏(山口県大津郡)です。そして蔵人も山口県出身者。工業製品としてのアルコール飲料を作るだけなら機械で十分ですが、酒は気候風土の産物です。
山口県の地酒であるためには山口県の風土が育んだ米と水、人を三位一体にしなければなりません。米と水に新しく酒としての命を吹き込むのは蔵人の仕事です。地の米、地の水を操ることができるのはやはり地の人だけなのです。
良い酒を皆様にお届けするために、「五橋」は人にこだわります。
合理化・近代化・純粋化してきた酒造りへの疑問
「酵母が純粋培養され、たしかに酒は旨くなり安定した。しかし、何か見失ったものがあるんじゃないか…。「温故知新」という言葉も頭の中でグルグル回っている。
近代的な酒造りにモヤモヤを抱きながら、木桶仕込みでのチャレンジを始めたのは平成17BY。小さな木桶(6石)を用いての木桶仕込みから始めて、19BYに新桶(20石)を新調。今では5本の木桶を使って木桶仕込みの商品を醸しています。
目指しているのはローテク(伝統の酒造技術)とハイテク(最新の機械設備)の相乗効果。仲間杜氏を筆頭とした伝統の酒造技術を、コンピュータや機械設備による最新の醸造技術がより良い形で補い酒質を高めていきます。
旨酒を醸すことのみを追及する彼らの戦いは、昼夜を問わず行われています。
文:日本酒鑑定士協会 瀧村健治
編集:LIQLOG