「食中酒を超えた食中酒へ」こだわり抜かれた原料という強固な土台の上に、成り立つ酒。-宮城県 金の井酒造-
酒造・メーカー紹介
金の井酒造の歴史
「金の井酒造」は1915年、当時材木商であった三浦順吉により、「自分で飲む酒は自分で楽しく醸す」というモットーの元、「綿屋酒造店」としてスタートいたしました。
時は流れ、1996年より4代目蔵元である三浦幹典が、現在のメインブランド「綿屋」を立ち上げ、昨年で無事25周年を迎えました。
社名である「金の井酒造」は、創業当時の地名が「金田村」であったこと、そして金田村の水が素晴らしかったことから名付けられました。
尽きない銘水を得て「綿屋」は磨かれる
「綿屋」の特徴は、食事の邪魔をしないという点にとどまらず、料理と寄り添い、更に仲睦まじく、お互いを引き立てあう「食仲酒」を目指すという点に集約されています。
その酒質を造りだす1つの鍵となっているのが、蔵に供給される潤沢な「水」です。
「小僧山水」は蔵から近い深山より湧き出る銘水であり、冬は禊の神事が執り行われる霊験あらたかな水脈です。
とても幸運なことに、蔵が位置する町内は水道水としてこの湧水が利用されており、些細な水仕事に始まり、原料処理、仕込みなどのすべての工程で、この銘水をふんだんに利用しています。
水質としては、癖がなく非常に透き通っておりながらも、わずかにミネラル分を含んだ「中程度の軟水」に位置しており、真冬の厳冬期にも、寒さに負けない力強い発酵力の源となっています。
ほかでもない「綿屋」のための米を求めて
また、理想の酒質を追究してゆくうえで、米へのこだわりも、今の「綿屋」を形造る非常に重要な要素の一つであります。
「金の井酒造」は本気で純米酒に取り組むために、契約農家さんと二人三脚で米造りに励んできました。
県内外関係なく、時には現地に通い詰めて農業を手伝うことで米について学び、その分、志を同じくしてくださる農家さんとは、酒造りにふさわしい米がどのようなものであるのか、議論したうえで、厳しい条件下での栽培にも妥協せず挑んでいただいております。
そのお米を全身全霊の技術で磨き上げ、多彩な日本酒に結晶させることは我々の喜びです。
酒質を求めるために、難しい菌、厳しい道程を選ぶ
酒づくりは「一麹・二酛・三造り」と言われています。この言によれば、酒の質に一番重要とされる工程が麹づくりです。
蒸米に麹菌を繁殖させるこの工程の目的は、麹菌の持つ酵素の働きにより米を糖化することで、酵母のエネルギー源となるグルコースをつくりだすこと。
薬剤師という異色の経歴を持つ四代目、三浦幹典の指揮のもと、食仲酒として「綿屋」の酒質にベストであると判断した麹を、さらに通常よりも温度を高く上げて培養するという特徴的な製麹法に辿り着きました。
早めに麹の培養温度を最高温度まで上げ、以降その温度を保ち続けることで、タンパク質を分解し、アミノ酸を作り出す酵素の分泌を抑えることができます。
そうすることで、より澄み渡った、雑味の少ない酒を造りだすことにつながるのです。
麹菌は夜中に最高の温度帯を迎えます。温度を管理するための設備もありますが、そこは生き物相手。繊細だからこそ、万全の管理が必要であるため、蔵に泊まり込み昔ながらの変わらぬ重労働をおこないます。
ここで手をかけずにそこで醸ってしまっては「綿屋」のキレイな酸が出てこないのです。
納得のゆく酒を造るためには手を抜くことは許されない、重要で難しい工程です。
このように、幸いにも潤沢な自然の恵みを享受し、日本酒としての美味しさはもちろんですが、「食仲酒」の楽しさや感動を、現代の発酵技術により表現して伝えていくことを目標に日々励んでおります。
文:金の井酒造
協力:日本酒鑑定士協会 瀧村健治
編集:LIQLOG