夫婦で紡ぐやさしい日本酒の詩 〜静岡県 萩錦酒造〜

酒造・メーカー紹介

夫婦で紡ぐやさしい日本酒の詩 〜静岡県 萩錦酒造〜

安倍川の伏流水が潤沢に湧き出るエリア・中島自噴帯で、土地の恵みを受けながら酒造りをする明治9年創業の萩錦酒造。若きご夫婦の手によって生み出される日本酒たちはどこか温かで優しさを秘める仕上がりです。

7年前にご夫婦揃って他業種から酒造りの道へと足を踏み入れたとのこと。静かな情熱や挑戦を落ち着いた口調で話してくれた萩錦酒造:取締役兼杜氏の萩原綾乃さんにお話を伺ってきました。

 

取締役兼杜氏:萩原綾乃さん(左)、代表取締役社長:萩原知令さん(右)

取締役兼杜氏:萩原綾乃さん(左)、代表取締役社長:萩原知令さん(右)

 

豊富に湧き出る安倍川の伏流水がはじまり

豊富に湧き出る安倍川の伏流水がはじまり

 

萩原杜氏

今年で147年目のこの土地で初代より変わらずお酒造りをしています。安倍川の伏流水、地下水脈から湧いてくる水が豊富だったことから酒造りが始まりました。暖かい地域なので難しい面もありますが、豊富な湧水がいちばんのポイントですね。

飲むと柔らかい口当たりで、中程度の軟水。軟水寄りの静岡の酒造りに向いたバランスの良いお水です。仕込み以外にも洗米や布物の洗いなど、同じお水を使えるのも湧水が豊富だからできること。酒造り以外にも静岡で有名なお茶の味わいも豊かにしてくれます。

夫婦二人で営む小規模な酒造り

夫婦二人で営む小規模な酒造り

 

先代の手により小規模な造りに転換。静岡吟醸の造りや高級酒ラインに力を入れるため、少量で丁寧な造りを目指そうとシフトチェンジを図ります。仕事や夫婦としてのバランス、関係性をお伺いしてもよろしいでしょうか。

 

萩原杜氏

会社に入った7年前から夫婦二人で小規模な仕込みを行い、自分達の色を出しながら製造を広げていくような形を目指しています。結婚を機に会社に入りましたが、知らないところから知識を得ていくというスタートが二人とも同時だったんです。

先代から引き継いだ時、どちらが社長や杜氏になってもどちらも責任が取れるように考えました。二人ともリーダーシップを持って動けるような形ですね。もちろん夫婦なので喧嘩もするし、バタバタもするんですけど笑

お水を活かした「萩錦」らしい味わい

お水を活かした「萩錦」らしい味わい

 

社長は一級建築士、杜氏は美術大学講師という経歴を持つお二人ですが、ご夫婦共に酒蔵で育ったというルーツが今に繋がります。二人が目指す萩錦らしいお酒や味わいをお伺いしました。

 

萩原杜氏

先代の南部杜氏からお酒造りを学んだのですが、その時からお水を生かしたお酒造りを一番にしています。味わいとしてはお料理に寄り添うような穏やかな香り、柔らかな口当たりのお酒。お酒単体で主張するのではなくて、お料理に合わせやすいような食中酒ですね。

ずっと飲み続けられるお酒のために力を注ぐ工程

ずっと飲み続けられるお酒のために力を注ぐ工程

 

静岡酵母を使ったお酒を飲むのが好きなお二人。ずっと飲み続けられるお酒造りを目指すうえで大切にされている工程はありますか。

 

萩原杜氏

製造上は麹の造りに一番神経を使っています。先代の杜氏さんから教わった麹づくりから入る静岡吟醸の造りというのを忠実に製造に取り入れている。米を溶かしすぎないようにすっきりした味わいにするのが静岡らしい造り方です。

日々の作業に取り組む萩原杜氏の姿勢

日々の作業に取り組む萩原杜氏の姿勢

 

学びや知識を吸収しながら自分達で解釈したものを表現できるようになりたいと話される萩原杜氏。萩錦のお酒である意味を考えながら造る日々の中、どのような思いで作業にあたられているのでしょうか。

 

萩原杜氏

先代の杜氏さんの話から「いつまでも自分が造っている実感を持てないものだよ。」という話の通り、造っているというよりも見守っているなと。微生物の働きをサポートするところが多いですね。

戒めも含め、大切にしていることは、一つひとつ手を抜かないということ。丁寧に当たり前にやることってなかなか難しくて。それを常に持続させて続けるのも難しいことだからこそ、気を抜かずにやり続けなければいけないなと。何年目かにして思うところです。

地域や環境に合わせた酒造りの夢

地域や環境に合わせた酒造りの夢

 

静岡の温暖な気候に苦慮しながらも、環境を変えるよりも環境に合ったお酒の提案を目指したいとのこと。酸の少なめな静岡タイプの酒質を、生酛や熟成に耐える新しいタイプに変容させていくことも考えていらっしゃいます。

 

萩原杜氏

例えば、お水が豊富なので、冷水による冷却の切り替えとかで美味しくお酒が造れたら良いなと。お酒の方も少しずつ変容させて、飲む人と一緒に培っていけるようになれば地元のお酒としてお互いに良いんじゃないかなぁと。

飲んでみて好きな人と会話を深めていけるような形になれば良いかなと思っています。

食中酒としての萩錦の魅力

食中酒としての萩錦の魅力

 

萩錦には気張らずに飲めるお酒が多いのも魅力の一つ。「毎日飲めるお酒が少し豊かなものであれば良いな」という酒造りを心掛けているそうです。

実際にご自身たちの舌で確かめられた相性の良いお料理を教えてもらいました。

 

萩原杜氏

県産米である誉富士を使用した純米酒の駿河酔には、旨味や魚の風味が強い黒はんぺんのフライが合います。3年目に新商品として造った土地の詩は、お寿司との相性が良かったです。新酒、夏、秋と季節ごとに出しているシリーズなのでそれぞれの楽しみ方があります。

 

 

萩原杜氏

萩錦の顔ともいえる登呂の里特別純米酒にはフライドポテトや肉じゃがなど特にじゃがいも料理が合いますね。晩酌に向いているので定番の家庭料理が良いんです。

美味しい純米酒ラインの強化を目指しているので、駿河湾の釜揚げしらすや近海で穫れた魚介類との相性ももちろん良いんですよ。

守りたいもの、そしてチャレンジしたいこと

守りたいもの、そしてチャレンジしたいこと

 

萩原杜氏

今この場所にある湧水、お水を守りたいです。例えば別の事業形態の製造場が出来たり、飲食のイベントが出来るようなコミュニティが生まれたりとお水を活用してこの場所に集うような。お水を中心にお酒も含めて楽しめるような地域にできたら良いなと。土地の水を守ることが、お水で続いているこの蔵を守る意味でもあります。

マイクロブルワリーのような小規模の製造に特化した蔵にしていきたいなと夫婦二人で話し合っています。蔵周辺のスペースをテストキッチンに活用したり、飲食店さんや料理人を呼んで小さい規模でも試飲やイベントをしたりとか。

テストタンクのように県産米で何キロみたいに対応できる蔵の方が楽しんじゃないかと思っていて。これが会社としてチャレンジしたいことです。もちろん芯はお酒造りですが!

 

真っ直ぐな思いを形にしようと飯米であり、無農薬米である県産米のきぬむすめを使った酒造りにも挑戦している萩錦酒造。

これからのチャレンジに乞うご期待です。

レトロな雰囲気が堪らないお燗ビンセット

レトロな雰囲気が堪らないお燗ビンセット

 

最後にご紹介!萩錦の定番商品・登呂の里が入ったガラス製のレトロな1合徳利と昔から受け継ぐロゴ入りコップのセット。

飲食店向けに出されていた徳利をアレンジし、ご自宅でもお店の気分が味わえるようにと新たに試みた商品。お土産やちょっとした贈り物にお一つ選んでみませんか。

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