「信頼して飲んでいただきたい酒」自然と一体となり、脈々と受け継いできた酒造り。-広島県 三輪酒造-
酒造・メーカー紹介
三輪酒造「神雷」
清酒「神雷」三輪酒造株式会社は江戸時代中期の享保元年(1716年)より広島県神石郡油木にて酒造りをしてきました。
私自身は2005年より酒蔵に帰り14代目蔵元・杜氏であった父の元、酒造技術や経営について学び2015年より杜氏、2016年より代表取締役となりました。
酒蔵・清酒はつねに時代と共にあり、またその時代を反映するものだと思います。
私が酒蔵に帰った当時は未納税酒(大手酒蔵向けの受注生産)が弊社の製造量の多くを占めていました。しかし時代は刻々と変化するのもので、蔵に帰り三年後にその取引は終了しました。
経営的には厳しい局面を迎えましたが、逆に「神雷」というお酒を今一度見直しアピールしてゆくチャンスとも思いました。何が正解なのか…すぐに答えの出る事ではありませが、現在もより美味しい「神雷」をお届けしたいと日々の仕事に向き合う中で模索を続けています。
そんな模索の日々の中で思い至った事は「先人が築きあげてくれたお陰で現在私たちが酒造りをさせて頂いている」と言う事です。酒蔵の建物…酒造の道具や技術や心得…「神雷」を応援して下さるお客様や取引先の方々…多くの有形無形の貴重な財産を残して下さいました。
また日々お酒造りをする中で「日本酒は私たちを取りまく自然環境の恵みが与えてくれるもの」と気付かされました。私自身、何か見えざる力により存在させて頂いている…ならば神雷酒蔵がある「広島」や「神石」という土地の恵みに感謝し表現するお酒を醸したいと思い
- 酒造米は広島県産にこだわる
- 広島県に伝わる軟水醸造法を基礎にした酒造り
- この神石の寒冷な気候と共に醪を醸す
- 蔵にある硬度の違う2本の井戸水を生かした仕込み
を軸に酒造りに取り組む事にしました。
江戸時代に確立された製法「生もと仕込み」
2015年からは地元の農家さんにお米作りを委託して育ててもらった酒米での仕込みにも取り組んでいます。
また2018年からは江戸時代に確立された製法「生もと仕込み」を復活させました。広島県の先輩の杜氏に教えを請い取り組んだ生もと仕込みは酒蔵に棲みつく乳酸菌や酵母が自然にタンクに入りお酒を醸してくれる神秘的な仕込み方法です。
まさにこの酒蔵の環境がダイレクトに表現できるお酒であり、神雷のお酒造りにおいてひとつの指針を与えてくれる酒造りとなっています。
酒銘「神雷」の由来
その昔酒造蔵に雷が落ちたが大過なかった事、また神の宿る国『神石』により命名されました。神雷して飲んで頂きたいとの思いも込められています。
標高500mに位置し、広島県で一番高いところで醸しています。ゆえに年間平均気温は東北地方北部と同等であり、その寒冷な気候と広島県に伝わる軟水醸造法より「米味豊かで清涼感のある味わい」を求めて酒を醸しています。
また「日本酒は日本の自然環境が与えてくれた最高の贈り物Gift」と思っていますので、地の実りに感謝し、広島のお米だけを使ってお酒を醸しています。
近年は酒蔵に棲みつく乳酸菌や蔵付き酵母で酒を醸す生酛仕込みにも力を入れていて、生酛造りを通じて「神石」で醸されるお酒とは?と考えながら酒造りに取り組んでいます。
令和3酒造年度より「西條鶴酒造」さんより譲り受けた木桶でも酒を仕込みました。
悠久の自然よりさづかった木桶に蔵に棲みつく天然菌を生かした生酛仕込みのお酒を仕込むことにより、原点に立ち戻りお酒を醸せることに感謝すると同時に改めて酒を醸す事の意義を自分自身にも問いかけています。
文:三輪酒造株式会社 代表取締役/15代目蔵元杜氏 三輪 裕治
協力:日本酒鑑定士協会 瀧村健治
編集:LIQLOG