「個々の力を引き出して良い酒を造る」幸せや癒やしを感じてもらうための酒造りを目指して。-青森県 桃川-
酒造・メーカー紹介
酒造りで大事なことは米、水、手を抜かない蔵人の情熱
南部杜氏 小泉義雄 一級酒造技能士
日本酒造りは、有史以来、日本で育まれてきた伝統文化です。少なくとも稲作が伝わった頃には造られていたとされ、2000年という時の中で改良されながら現在まで継承されてきました。
南部藩の清酒造りの起源は、徳川家康が江戸幕府を開いた3年後の1606年にまで遡ります。その後に形成された八戸藩においては、17世紀後半に酒造りが始まっていたとされています。
「桃川」は明治時代真っ只中の1889年に創業し、日本酒という伝統文化を紡いできました。
時代ごとに様々な日本酒が造られたように、「桃川」もまた、技術を向上させそれを継承しながら日本酒を造ってきました。1966年に入社し、1994年から杜氏として長きに亘り活躍しているのは、小泉義雄杜氏です。
杜氏とは、日本酒醸造を行う職人たちの先頭に立ち管理・監督を行う最高責任者のことです。小泉杜氏は、早くより国家資格・一級酒蔵技能士の資格を有し、日本酒造りに貢献してきました。
「あおもりマイスター」認定(2002年)や「青森県卓越技能者」の表彰(2003年)を受け、青森県ナンバーワンの酒蔵会社の杜氏として伝統を守りながら、時代に調和する日本酒造りに魂を注いでいます。
2019年には功労者に贈られる県最高表彰である青森県褒賞を受賞しました。
伝統文化の継承という側面と日本酒造りのエキスパートという側面とは、表裏一体なのです。どちらが表でどちらが裏ということはなく、小泉杜氏を筆頭とした蔵人たちは、継承と創造の中で日本酒造りを行っているのです。
桃川に在籍の蔵人の多くは、一級酒蔵技能士の資格を取得しています。全国新酒鑑評会において幾度も金賞を受賞してきた「桃川」の日本酒は、より高度な知識と技術を持つ蔵人たちの仕事の賜物です。
それ故に、ぶれることなく安定した品質の日本酒を造り続けることができるのです。
酒造りに情熱を傾ける万全な陣容
小泉杜氏が酒造りにおいて大切にしていることは、「人」だと言います。「酒造りは一人ではできません。酒造りのプロフェッショナルが揃っているのですから、個々の力を引き出して良い酒を造ることが私の役目です」。
小泉杜氏がそう語るように、日本酒造りをオーケストラに例えるならば、杜氏は指揮者の役割を担っています。指揮者は、バイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、フルート、クラリネット、ティンパニーなど様々な楽器の知識を持ち、それを演奏する音楽家たちの特徴も理解した上で、静寂を表現したり、盛大に盛り上げたりします。
また、音響は気温や湿度に左右されると言いますから、それらを加味した上で楽曲をコントロールすることもあるでしょう。杜氏も同様に、米、水、麹菌、酵母菌に関する幅広い知識と経験をもとに、毎日変化する気温や湿度を考慮しながら日本酒造りの先頭に立ちます。
「桃川」の蔵人たちは自分の担当する工程に責任を持ち真摯に酒造りと向き合っていますが、小泉杜氏が工程ごとのバランスを取ることで、全体が一つとなり調和が取れるのです。
米洗いにかける時間、どの程度麹菌を繁殖させるべきか、もろみを発酵させる時間などそれぞれの工程で必要な仕事の管理・監督が小泉杜氏の役割だと言います。
入社以来、日本酒造り一筋で生きてきた小泉杜氏。「これほどやりがいのある仕事はない」との言葉には、日本酒造りへの愛情と情熱が宿っています。また、小泉杜氏は、酒は人と人との会話を盛り上げるコミュニケーションツールであるから、幸せや癒やしを感じてもらうための酒造りを目指したいとも話しています。
「桃川」の酒が日本国内のみならず海外でも好評を得ている最大の理由は、小泉杜氏をはじめとする蔵人たちの熱い情熱にあります。 “passion”は世界共通のスパイスであると言えます。伝統文化の継承とうまい酒づくりへの情熱。それが小泉杜氏の哲学です。
文:桃川 株式会社
協力:日本酒鑑定士協会 瀧村健治
編集:LIQLOG