土地の情景が浮かび、行ってみたくなる「背景が見えるワイン造り」を目指して。-山形県 蔵王ウッディファーム-
酒造・メーカー紹介
ワイナリー取り組みについて
2013年から欧州系ブドウ100%のドメーヌワイナリーとしてスタートし、私達のワイン造りも10年目を迎えます。
オーナーの木村は果樹農園を長年経営してきた果樹栽培のプロです。先代は地元上山へ欧州系ブドウを植えた第一人者で、当時実績のなかった寒い地域でのメルロ栽培に着手しました。(ちなみに90歳をゆうに超えて現役で畑に居りますが、2020年で引退しました)
受け継いだノウハウは地域の集積知として、今も協同組合として組織されております(南果連協同組合)。現状では品質の高い上山産の欧州系ブドウは大手ワイナリーを中心に県外へ出荷される量の方が多いです。
オーナーの木村は以前から出荷用のブドウ栽培を疑問視しており、同郷の「タケダワイナリー」の先代会長である武田重信さんの影響もあり、いつかは自社栽培のブドウでワインを造りたいという夢がありました。
時代が変わり、規制緩和もあって漸く夢が実現したのが2013年です。
かみのやま市では現在、私達も含め3社ワイナリーがあります。立ち上げ準備中の生産者も含めれば5社以上にはなるでしょう。
山形県内でも比較的、雪の量が少なく、日中の寒暖差に恵まれ、台風や浸水などの被害が少ない環境は、果樹栽培全般に恵まれた条件です。
そんな中でさえ、栽培家が高齢化し閉園や耕作放棄地となる現状です。
私達地域の取り組みは地域の農業としてのワインを、しっかりと基幹産業として後世に続けることも大事な事だと感じます。
一人のやる気のある代だけで、その後はまた耕作放棄地になるような一過性ではなく、しっかりと産業として認識されるような品質を目指しています。
まだまだ取り組みは甘いのですが、環境負荷を減らすことは大前提として、働き手の負荷をいかに減らし、いい意味で省略化できる事も今後の課題です。
それには、耐病性があり、笠掛などの作業が不要で、気象条件の影響はあれど、酸度、糖度共にしっかりと基準値をこえてくる、収量にもブレがない品種、栽培方法の確立を重視しています。
それらが合わさって、ようやく味わいも値段も海外のワインに引けを取らない産業としてのワインになると思います。
取り組み一例
- 欧州系ブドウ100%の自社栽培で一文字短小仕立てまたはスマートマイヨルガー仕立て 現在7.2㏊(今期造成分をいれると8.0㏊)
- 山形県特別栽培農作物の認証を受けた畑のみからワイン造り(除草剤、化学肥料無し、有機質肥料を使用、農薬の使用量は慣行農法の基準の半分)
- 洋梨(ラフランスなど)、サクランボ、の果樹と並行して栽培管理
現在まで白、黒ブドウあわせて8種類程度を定植しています。
土地に合う合わないや、栽培管理の手間、品質の良さを、毎年シビアに確認し、私達の方向性として白ブドウは、アルバリーニョ(2.2㏊)、プティマンサン(0.7㏊)。黒ブドウはカベルネソーヴィニヨン(1.5㏊)をメインに栽培していく方針です。
醸造面では品種の個性や風土の個性が感じられるように、手を掛けすぎず、掛けなさすぎずを意識しています。
品質の安定性や安全面を意識して工業的になる事も、人為的介入を極端に減らして野性的な味わいへ向くことも、どちらも本来の姿から離れてしまうと考えています。
哲学的な解釈ではなく、すべて自分たちの現場で実用的に判断していきます。
私達の目的は亜硫酸無添加でも野生酵母使用でも無濾過でもないからです。
私達の意思は山形県かみのやま市のブドウにしかない味わいを表現する事です。飲めば、その土地の情景が浮かび、行ってみたくなる背景が見えるワイン造りを目指しています。
その為に、今日も畑からワイン造りを行っています。どこかで、お会いできる事を楽しみにしています。
※蔵王ウッディファーム&ワイナリー「金原 勇人」氏
文:山形蔵王山麓 かみのやま WOODY FARM & WINERY 金原勇人
協力:日本酒鑑定士協会 瀧村健治
編集:LIQLOG