二百年の伝統と共に理想の酒を追う
遠州灘に程近い掛川市の横須賀地区。徳川家康が築いた横須賀城の城下町として城主20代・約300年続き、今なお古い商家や街並みが残る旧街道に遠州山中酒造の酒蔵が建つ。
その歴史を遡ると、近江商人であった山中家が文政年間に現・富士宮市で酒造業を始めたことに行き着く。富士周辺に四蔵構え、その後、水量豊富な良水を求めここ横須賀に一蔵構えた。
昭和初期、分家した現在の遠州山中酒造が独立、この横須賀の蔵で理想の酒造りに邁進することとなる。建物は安政七年のもの。江戸末期の柱や梁を残した木造蔵でありながら、三層の作業場を持つ。
一階には醸造タンクが並び、その周りに作業用の足場が中二階のように設置され、三階に相当する階には麹室、放冷場、酒母室など。酒造りの工程順に作業のしやすさを考慮した構造となっている。これほど天井の高い木造蔵は他には見られない。