ビールってどんな酒? Vol.8 「”その他”のビアスタイル」

お酒の基礎知識

Vol.8 「”その他”のビアスタイル」

今回は、たんなる上面発酵ビール(エール系)にも下面発酵ビール(ラガー系)にも属さないスタイルを、「その他のビアスタイル」として取り上げます。ビアスタイル編は、今回でラストです!

エール系とラガー系に関しては、下記にまとめておりますので未読の方はぜひ目を通してみてくださいね。

 

ビールってどんな酒? Vol.4 「ラガー系は世界で最も飲まれている!」

ビールってどんな酒? vol.5 「エール系 その① ~奥深き世界~」

自然発酵ビールとは?

自然発酵ビールとは?

野生の酵母で発酵

エール酵母やラガー酵母など、通常のビール酵母は、人工的に培養し管理されます。しかし、そうした技術がなかった時代は、大気中に自生する酵母菌の力を借りて、ビールを発酵させていたのです。つまり自然発酵ビールとは、そうした製法を引き継いだ、野生酵母を使ったビールのことを指します。

そもそも発酵とは?

ここで、vol.1で取り上げた「発酵」の話を簡単にまとめておきます。

発酵とは、微生物が働くこと。酵母はカビの仲間の菌類なのですが、じゃあ、カビが食べ物を腐らせるのとは何が違うのか? 実はこれ、微生物が人間にとって有益な働きをする場合は発酵、害をおよぼす場合は腐敗、と呼び分けているだけなんです。だから同じカビでも、ブルーチーズについて起こるのは発酵で、パンにつくのは腐敗、ということになります。

下記の記事で、そもそも酵母って何? というところからまとめているので、読んでないor忘れたという方は、よかったらチェックしてみてください。

 

ビールってどんな酒? vol.1 「麦芽とホップと水と。」

誕生は紀元前3000年より前!

この「自然発酵」こそがビールの祖先です。最古の記録では、なんと紀元前3000年ごろの粘土板に、ビール作りの様子が刻まれています。麦の粉から作った「パッピル」という当時のパンに似た食べ物が、雨か何かによって水浸しになり、それが偶然発酵につながったというのが、ビール誕生のきっかけとされているんですよ。

代表的な自然発酵ビール

ランビック※写真はランビック

 

では、代表的なスタイルをご紹介しましょう。通常のものと比べてさらに酵母の管理が難しく、生産されている地域が限られているため、日本では目にする機会は少ないかもしれません。でもネット取り寄せなどは可能なので、気になった方はぜひともトライを!

※記事中の<スタイルDATA>は、『ビールは楽しい!(ギレック・オベール著/河 清美訳/株式会社パイ インターナショナル発行)』を主に参照しています。

 


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グーズ

大麦麦芽と発芽していない小麦をブレンドし、抽出した麦汁(ウォート)を自然発酵。大気中にいる野生の微生物にふれさせながら、オーク樽の中で時間をかけて発酵させます。また、収穫してから一年以上寝かせたホップを使うのも特徴。苦みはごくわずかで、独特の酸味とチーズのような香気を感じることができますよ。オーク樽で6~18ヵ月ほど熟成させたものを「ランビック」、熟成年月の違うランビックを混ぜ合わせたものを「グーズ」と呼んでいます。

<スタイルDATA>発泡性:弱/苦味:微/甘味:弱/アルコール度数:5.0~8.0%/長期熟成:10年まで可能

フルーツ・ランビック

ランビックをオーク樽で発酵させる際に、桃、さくらんぼ、フランボワーズといった果実を漬け込む。ランビックに限らす、製造の過程(煮沸、一次発酵、二次発酵時など)にフルーツを漬け込んだりエキスを用いたりするスタイルを「フルーツビール」と呼びます。まるでカクテルのようでビールが苦手な人でも飲みやすいので、日本のクラフトビールにも増えてきているんですよ。

<スタイルDATA>発泡性:弱/苦味:微/甘味:弱/アルコール度数:5.0~7.0%

ルージュ・デ・フランドル(レッドビール)

ステンレスタンクでの一次発酵のあと、オーク樽に移し18ヵ月熟成。樽材のなかにいる微生物が二次発酵を行ないます。ベリー系の果実を思わせる酸味や、タンニンの渋みを感じる、まるで赤ワインのような複雑な味わいが楽しめます。

<スタイルDATA>発泡性:弱/苦味:弱/甘味:弱/アルコール度数:4.5~6.5%

そのほかユニークなスタイル

そのほかユニークなスタイル

 

これまで解説してきたどれにも属さない、独自の製法を用いたスタイルがこちら。ビールがほとんど「なんでもあり」なんだということを、一層感じていただけることでしょう。

ゴーゼ

ドイツ・ライプツィヒの伝統的なスタイル。小麦の使用量が多く、塩とコリアンダーシードを添加し、乳酸菌で発酵させます。塩味が新鮮で、爽快感のある味わいです。

<スタイルDATA>発泡性:強/苦味:微/甘味:微/アルコール度数:4.0~5.0%

ラオホビア(燻製麦芽ビール)

主にブナの木を用いて燻製した麦芽を採用する。麦芽がスモーキーに際立つ味わいは、燻製度合いによって調整されます。あらゆるビアスタイルに応用することができ、多彩なバリエーションが存在。

<スタイルDATA>発泡性:中/苦味:中/甘味:中/アルコール度数:多様

ロッゲンビア(ライ麦ビール)

ライ麦麦芽を50%以上使用した上面発酵ビール。エール酵母のフルーティーなフレーバーに、ライ麦特有の力強いスパイシーさが重なります。

<スタイルDATA>発泡性:強/苦味:多様/甘味:強/アルコール度数:多様

次回は、初心者がぶつかるあの疑問

ビールって“苦い”のに、なんで“美味しい”の?

 

いかがでしたか? 結果的に、ビアスタイルの紹介にかなりの回数を費やすことになってしまいました。でも、知識が頭の片隅にあるぶんだけ、好みのスタイル・味に出会えるチャンスが増えると思います。ビールスタンドやショップを訪れた際、何を飲もうか迷ったときに、参照していただければ幸いです。

さて、次回は何をお話しするのか。ここで、お酒初心者やまだほとんど飲んだことがないという人が一度は行き当たる疑問に、真っ向からぶつかりたいと思います。

次回はずばり、「ビールって“苦い”のに、なんで“美味しい”の?」です! 苦みを美味しいと感じるメカニズムをはじめ、ビールの何が美味しいのか、初心者の方にもわかりやすく解説します。ぜひご期待ください!

ビールってどんな酒? Vol.8 「”その他”のビアスタイル」

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